先日、埼玉のペットショップでアラスカンマラミュートとポメラニアンを交配した子犬が売られているというツイートがX(旧Twitter)上で流れてきて、驚愕しました。多くの方が批判的に反応していましたが、体重差、実に13倍です。その問題について週刊女性が取り上げていました。
ジャパンケネルクラブのコメントとして、「その後の犬の成長・健康、動物の福祉において、繁殖者自身が全責任を負える覚悟がなければ意図的にミックス犬をつくり出すべきではないと考えます。命を扱うという倫理観からも、長期的な計画がなく、人為的に無理な交配をさせることは厳に慎むべきと考えます」とありました。
コロナ禍で訪れた“ペットブーム”。ところが、人間の都合による交配や飼育方法が問題視されている。埼玉県のあるペットショップ…
さすがに出産する母犬のほうを大型犬のアラスカンマラミュートにしているので、胎児が大きくなることによる帝王切開の懸念はないと思われますが、このように両親の体格差が大きい交配で、健康上に何が起きるかわからないのに手を出すとは、恐ろしい限りです。影響が未知であることも記事ではふれられていますが、わからないのは、やる人がいないからでしょう。
そもそも体格の近い犬種同士のミックスが商業ベースでたくさん売られていることも疑問ですが、さらに輪をかけておかしな事例が出てきました。あの手この手で売らんかなの繁殖業者と、売れればなんでもいいペットショップ。ほかの人が飼っていないような珍しい犬にお金を出してしまう消費者側の問題もあります。
環境省の基準を適用できないのか?
この事例では、繁殖業者は栃木県真岡市で第一種動物取扱業の登録があることがすぐわかったので、PEACEでは栃木県の動物愛護指導センターに問い合わせをしました。
動物取扱業者に遵守義務のある、犬猫の飼養管理基準(「第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令」)には「遺伝性疾患等の問題を生じさせるおそれのある組合せによって繁殖をさせないこと」とあり、こうした繁殖も違反に該当するのではないか?と考えましたが、県センターの回答では、何と該当しないとの見解でした。遺伝性疾患「等」とあるので、遺伝性疾患に限らず先天的な問題が起きないように配慮する義務があると読めると思うのですが…
数値基準も含め、かなり詳しくなった犬猫の飼養管理基準ですが、まだ対応できない問題があることに愕然としました。
ただし、指導及び注意喚起はしてもらえました。
メールでご指摘いただいた内容について次のとおり回答いたします。
異犬種間の交配についてですが、ポメラニアンとアラスカンマラミュートではご指摘のとおり体格差が大きくありますが、これらの交配が直ちに「遺伝性疾患等の問題を生じさせるおそれのある組合せ」とは言えず、交配を止めるよう指導することは難しいのが現状です。しかし、想定外の大きさに成長する可能性があることや、交配にあたって注意しなくてはいけないことがあるため、購入者に対する十分な説明などについて指導及び注意喚起を行いました。
また、出生地については、●氏が繁殖を行っている飼養施設は「真岡市」にあり、店頭で表示された「宇都宮市」は誤りでしたので、改善するよう指導を行いました。
今後とも、動物取扱業者に対して計画的に監視指導を実施し、動物の適切な取扱について普及指導に努めて参ります。
情報提供ありがとうございました。
〔ブリーダー名を伏字にしました〕
週刊女性によれば、ペットショップのほうは、今後このような犬の取扱いはしないとのこと。やはり消費者が「問題だ」と騒ぐことは、ペット業界の体質を変えるには必要なことです。
環境省の今後の検討には犬種ミックス問題は含まれるのだろうか
純血種という病 商品化される犬とペット産業の暗い歴史マイケル・ブランドー 著 マーク・ベコフ 序文夏目大 訳 白揚社 刊ISBNコード:978-4-8269-9061-5「雑種の犬のほうが病気になりにくいし、健康なのにね[…]