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ナショナルバイオリソースプロジェクト「ニホンザル」:2022年、京都大学の施設にニホンザル50頭が導入された

どこに聞いても不明だった50頭の由来ですが、愛知県への開示請求により奄美野生動物研究所と確定しました。詳しくはこちらをご覧ください。
以下の記事は、公開時点のままの内容で残します。

ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)「ニホンザル」:京都大学の施設に新たに50頭も追加!

今年2月、京都大学ヒト行動進化研究センター(愛知県犬山市)の初めての年報(2022年度版)が公表されました。同センターは、京都大学霊長類研究所が松沢哲郎元所長らの研究費不正事件により解体されたのち、主に動物実験関係を引き継いだ後継の研究所です。

その初の年報のサル類動態表は、以下のようになっていました。なんと、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)「ニホンザル」に50頭が新たに追加されています。

NBRP「ニホンザル」とは、動物実験のためにニホンザルを繁殖・供給するプロジェクトで、文部科学省が予算を出しています。PEACEでは、動物実験の廃止を求める会(JAVA)と合同で、このプロジェクトの廃止を求める署名を実施中です。

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ナショナルバイオリソースプロジェクト「ニホンザル」による 動物実験のためのサルの繁殖・供給の廃止を求めます

京都大学ヒト行動進化研究センター年報より 猿の動態

質問書で50頭の由来を問うも、回答せず!

NBRP「ニホンザル」では、京大以外にもう1か所、愛知県にある生理学研究所が事業を分担していますが、そこから奄美大島の民間企業にサルの飼育を委託しています。この民間企業(株式会社奄美野生動物研究所)の施設では、既にニホンザルの繁殖と子ザルの実験への供給は廃止されており、繁殖母群のサルをどうするかが懸案の課題となっているため、京都大学が新たに50頭もニホンザルを導入していたことは大変驚きました。

奄美大島で飼育されるサルたちが殺処分される恐れがあったため、PEACEでは、これまで何度かこの問題について取り上げてきましたが、この問題が浮上した当初、奄美大島の施設のニホンザルはBウイルスの感染率が高いなどの問題から京都大学の施設へ移すことはできないと聞いていました。ですが、移動させたのでしょうか?

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また私たちPEACEは、JAVAと連名で、文部科学省や、このプロジェクトの中核機関である京都大学、分担機関の生理学研究所の3か所に対し、奄美大島のサルをどうするのか繰り返し質問してきましたが、ずっと検討中であるとの回答が続いていました。

ニホンザルを移動させたのであれば、結論が出たのでしょうか? もしほかにも移動したサルがいるのであれば、奄美大島で飼育が終わっている可能性もあると考えました。

そこで、奄美大島のNBRPのニホンザルをどうする(どうした?)のかについて、再度、まず文部科学省に問い合わせたのですが、確認してから回答するとのことで、ずっと返事をもらえないまま時間が過ぎ、最終的に回答できないということになってしまいました。

ですので、今年5月、再度JAVAとともに京都大学と生理学研究所に質問書を送ったのですが、なんと50頭の由来については公開していないという驚きの回答が返ってきました。

奄美大島のサルをどうするのかについては「現在、生理学研究所において、科学的観点及び動物福祉を含む社会的観点等から、慎重に検討しているところでございます。」と、また同様の回答です。

NBRP「ニホンザル」は、野生由来のニホンザルの動物実験利用が法的に非常にグレーであり、サルの供給に透明性を持たせたいということが発端で始まったプロジェクトです。にもかかわらず、このプロジェクトに関わる人々は、ずっと情報を隠し続けています。分担機関から委託されている先の民間企業がどこかということも、その企業に税金から幾ら支払われてるかも、サルをどこから集めたのかも、全て情報公開請求をしても開示されません。(民間企業が奄美野生動物研究所であることは、国会質疑で明らかにされましたが、開示文書ではずっと墨塗りです。)

札幌市立の円山動物園からニホンザルが譲渡されたことは過去の経緯から判明しており、繁殖母群として払い下げられたこのサルたちが何頭生き残っているか、今回の質問書では聞きました。しかし、これについても回答は拒否でした。

2017年時点で、円山動物園出身のサルがまだ生きていることは口頭で確認しています。2005年に45頭移されてから20年近くが経ちますが、サルの寿命を考えれば、まだ生きていてもおかしくないはずです。円山動物園は、今年もニホンザルが死亡すると、名前を出してサイトに訃報を載せていますが、かつて実験動物繁殖用に払い下げたサルたちの生死については、一体どう思っているのでしょうか。

サルの飼育頭数の公表もストップしている

NBRP「ニホンザル」の公式サイトでは、ずっと公表していた年度末時点の飼育頭数についても、2022年度分から公表が止まっています。

そのため、質問書では、2022年度及び2023年度の数字についても回答を求めました。2022年度以降の生理学研究所の委託先(奄美野生動物研究所)の飼育数がわからなかったので、奄美大島で飼育が終了しているかもしれないと感じたわけです。

しかし、これについては回答があり、結果として奄美大島での飼育は終了していませんでした。回答の数字を反映させたものが下記のグラフです。(過去の飼育数も含めた数字をこちらのページに掲載しています。)

委託先の奄美野生動物研究所では、2022年度以降に少なくとも71頭も数が減っており、やはり2022年度に50頭を京都大学へ移したのではないかと思わざるを得ません。もし京大が奄美野生動物研究所以外から入手したというなら、一体どこからニホンザルを手に入れたというのでしょうか。野猿公苑を含む野生由来か、動物園等の展示業者しかありえませんから、50頭も実験用繁殖に回すところがもし存在するなら、大問題です。

それに、繁殖群のサルたちは高齢化していくので死亡は増えていくと考えられますが、71頭も死ぬでしょうか? 明らかにおかしいので、生理学研究所に委託先でのサルの死亡数について再度質問したところ、以下の回答がありました。

  • 2022年度に死亡した個体数は繁殖群 11頭、 育成群 1頭
  • 2023年度に死亡した個体数は繁殖群 8頭、 育成群 1頭

生理学研究所委託先では、2021年度末には繁殖群155頭、育成群8頭だったので、もし死亡しただけなら、2022年度は繁殖群144頭、育成群7頭でなければいけないのに、実際には、繁殖群97頭、育成群4頭に減っています。同じく2023年度は、繁殖群136頭、育成群6頭でなければいけないのに、実際には、繁殖群89頭、育成群3頭です。

2022年に繁殖群47頭、育成群3頭、計50頭が京都大学に移ったのであれば、計算は合います。

生理学研究所の委託先が50頭を京都大学以外に放出し、京都大学は全く違うところから50頭を得ている可能性を完全に否定することはできませんが、京都大学が奄美大島から50頭のニホンザルを受け入れたとほぼ断定してよいのではないでしょうか。

しかし、なぜそのことを認めないのでしょうか。本当に不信感しか感じません。

NBRP第3期以降のニホンザル飼育数推移 提供数

このグラフを見ても、このプロジェクトが縮小傾向にあることがおわかりいただけると思います。

ちなみに、このプロジェクトを終了させるつもりがあるかという質問には、「今後のあり方については、常に関係各所のご指導・ご意見を伺いながら考えていきたいと思います。」との回答がありました。

PEACEではJAVAさんと合同で廃止署名を実施中です。ぜひ、ご協力ください。

署名のお願い

2024年1月22日、2万名を達成しました!☛こちら引き続き、署名&拡散をよろしくお願いいたします!動物実験のためにニホンザルを多数飼育して繁殖し、大学などの研究機関に供給しているナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)「ニ[…]

ナショナルバイオリソースプロジェクト「ニホンザル」による 動物実験のためのサルの繁殖・供給の廃止を求めます

※今年の質問書の内容と回答の全文はこちらに掲載しました。

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ナショナルバイオリソースプロジェクト「ニホンザル」による 動物実験のためのサルの繁殖・供給の廃止を求めます

※過去の飼育数や供給数についてはこちらのページをご覧ください。

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ナショナルバイオリソースプロジェクト「ニホンザル」による 動物実験のためのサルの繁殖・供給の廃止を求めます

その後の報告

どこから来たかわからなかった京大の50頭ですが、奄美大島の民間企業から移されたことが確定しました。詳しくは別記事を参照ください。

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円山動物園 札幌市 日本猿 snow monkey Macaca fuscata

その他の活動報告

5月の国際マカクザル週間のアクションに参加しました。

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