OIE(国際獣疫事務局)による獣医組織能力(PVS)評価で実験動物福祉についても勧告!

OIE(国際獣疫事務局)は、世界的なアニマルヘルスの向上を目指すための国際組織であり、日本政府も加盟しています。そのミッションには、食品衛生はもちろん、アニマルウェルフェア(動物福祉)も掲げられています。

PVS評価とは?

OIEが、動物衛生・獣医公衆衛生・アニマルウェルフェアの推進のため、官民両方の獣医組織体制全体の能力を高めることが重要だとの認識のもと、2006年から、加盟国の獣医組織力(PVS:Performance of Veterinary Services)評価を実施しています。

日本も、この評価を受けるため、2016年10月にOIEの評価者3名の訪問を受け入れました。当時、加盟国180か国のうち、既に129か国が受けていました。

日本の実験動物の福祉をめぐる制度について勧告や指摘!

評価結果は、各国内の体制強化・改善のためだけでなく、畜産物の輸入を考えている場合に相手国がどの程度の獣疫体制をとっているのか参考にするためにも使われるため、やはり畜産について手厚く評価されている印象はありますが、OIEは実験動物福祉についても規約の中に章を設けているため、このPVS評価の報告書のアニマルウェルフェアの部分に実験動物についての記述もありました。

しかし、読むと権威側の言い分をそのままうのみにしているような内容で、非常に幻滅させられました。特に、機関内で審査する仕組みになっていたからといってウェルフェアを担保する実態はないにもかかわらず、長所と挙げていることは遺憾に思います。だいたいどのように関係者が説明したのか、察せられます。

しかし、OIEの加盟国というのは世界180か国ありますから、その中には研究活動についてもいろいろなレベルの国があります。決して欧米諸国に比べての長所ではないでしょう。

そういう意味では、全体の中で日本の動物福祉のレベルは3と言われていることは肝に銘じるべきです。

また、農水省は、重要な勧告として輸送とと殺しか例示されていない部分があるため、それしかやるつもりがないようなことを去年言っていましたが、実際には勧告されたリストの中には実験動物に関するものも挙げられています。所見を記した部分でも、特に民間企業等でのセクターについて基準がないこと、調査や監視がないことが挙げられていました。(農水省の指針が民間企業を対象としないため、この部分が強調された可能性があります)

特に、報告書の最後の章である「結論」に挙げられた短所指摘の中では以下のように書かれています。

「動物福祉のガイドライン及び/もしくは必要な法令はほとんどの分野で確立されているが、家畜の輸送や屠殺、実験における動物の使用などの特定の重要な分野では、強固な法令順守プログラムが欠けている」

報告書の4章まで135ページ分を、たった2ページにまとめた中で、実験における動物の利用について指摘しているのです。

せっかく動物愛護法改正の好機であるのに、この評価結果が、動物実験関連当局によって取り組まれているようには感じられません。

畜産動物を輸出したいからというメリットのあるところは取り組んで、面倒なところは無視するということがあってよいものでしょうか? これが日本政府の現実です。

※アニマルウェルフェアの部分は、陸生動物衛生規約の第7章をもとに評価されている。
※OIEの基準類とは、規約(コード)及びマニュアルを指すとのこと。


実験動物について関係ある部分のみ訳出しました。〔〕内は訳注です。

(翻訳:tuar ceathaさん)

第三章 評価結果と全般的な勧告
Ⅱ-13 動物福祉

到達水準
陸生規約で示されているOIEの動物福祉に関する基準類を遂行するための獣医サービスの権限と能力について:
レベル3 動物福祉がOIEの基準類に準拠して実施されている部門もある(例:輸出部門) 

所見(抜粋)

動物衛生研究所、動物医薬品検査所、国立感染症研究所、動物検疫所の各研究所といった、研究や分析をおこなう研究所では、さまざまな実験動物が使用されている。研究における動物の生体利用に対する倫理的承認は、動物の倫理的利用に責任を負う委員会による、各施設の組織内で管理されている。宣言されている目的は、研究における動物の利用を最小限にすることである。同様に、獣医学校では、授業で動物の生体を使用しており、学生による外科手術も含まれる―― 動物福祉は、学内で監視され、動物の扱いと苦痛は管理されている。大きな手術の後は、動物は安楽死させられる。環境省は、動物の愛護及び管理に関する法律に従って、実験動物のための文書(全体向けの一般的な基準)を定めている。さらに各省庁は、利害関係者用に、それぞれ独立したガイドラインを有している。

動物は、民営の製薬会社で、製品研究と開発のために使用されている。これらの企業は、動物の生体の利用を監視し、不要な利用を避け、動物福祉が確実に維持されるよう、動物使用審査委員会〔動物実験委員会〕を有している。当然のことながら、このセクターに用いられる国の基準はなく、政府やその他の外部団体による調査や監視もなかった。

製薬会社と大学に対し責任を所管する省として、農林水産省、厚生労働省、文部科学省は、実験動物に関する福祉を確実にするためのガイドラインを有している。さらに日本学術会議では、「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」を2006年に作成した。これらのガイドラインには、努力目標の一つとして、外部団体による調査が含まれており、また、これは、実行され始めていると報告されている。しかしこれについては、現地訪問任務の間に〔実際にどのようなものかを見て〕確かめることはできなかった。

長所(抜粋)
研究所や大学における動物の利用は、機関内の倫理評価の過程を通じて管理されている。

短所(抜粋)
動物福祉に関し、環境省と農水省の間で、役割と調整の透明性をより向上させることができるだろう。

勧告(抜粋)

  • 必要に応じ、研究と教育での動物使用における、OIEの基準類に関する検討と、法律、基準、外部監査プログラムの改定。
第五章 結論

(略)優秀なレベルが達成されているにもかかわらず、いくつかの弱点、つまりさらなる強化をすべき点が特定された。以下の分野が特に挙げられる。(抜粋)

  • 動物福祉のガイドライン及び/もしくは必要な法令はほとんどの分野で確立されているが、家畜の輸送や屠殺、実験における動物の使用などの特定の重要な分野では、強固な法令順守プログラムが欠けている

出典:
PVS Evaluation Report JAPAN

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