〔写真はNBRPにニホンザルを提供した札幌市立円山動物園のニホンザル〕
動物実験用にニホンザルを繁殖し、研究機関に子ザルを供給するナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)「ニホンザル」では、分担機関である生理学研究所から、民間企業である株式会社奄美野生動物研究所にサルたちの飼育が委託されています。(文部科学省事業としては再委託に当たります)
NBRPは文部科学省が出すお金で運営されている事業ですが ※、ニホンザルの事業に出されている金額のうち、どれくらいが奄美野生動物研究所に支払われているのか、情報公開請求をしても墨塗りで公表されません。
※2015年4月~2021年3月末までは日本医療研究開発機構(AMED)に事業が移管されていました。
しかし、生理学研究所から奄美野生動物研究所へのニホンザルの飼育委託については随意契約となっており、以前は生理学研究所の上部組織である大学共同利用機関法人自然科学研究機構のサイトで金額が公表されていました。
随意契約とは?
国や自治体などの公共機関が事業を委託して行う場合、原資は税金ですから、もし利害関係のある相手を選り好んで契約するようなことをしたら、公正ではない利益誘導に税金が使われることになってしまいます。ですので、基本的に契約相手は入札で公平・透明性をもって決めなければなりませんが、「この業務を頼める先は国内にここしかない」といった特殊な業務が発生することもあります。また、緊急に行わなければならない事業なども存在します。そういった場合には、入札による一般競争契約ではなく、相手を選んで契約することもできるようになっており、そうした契約を随意契約と呼びます。
随意契約は、不公正な資金供与が行われていないか疑われかねない契約とも言え、透明性を高めるために、契約相手や、随意契約にした理由などを公表することが行われています。
過去に公表されていた奄美野生動物研究所との随意契約の金額
年度 | 奄美野生動物研究所への 再委託費 | 参考 | ||
生理研への 交付金額 | 京都大学への 交付金額 | NBRP全体への 交付額(2機関計) | ||
平成27(2015) | 76,982,400円 | 99,718,000円 | 87,822,000円 | 187,540,000円 |
平成28(2016) | 78,386,400円 | 87,564,880円 | 90,377,000円 | 177,941,880円 |
平成29(2017) | 77,465,509円 | 91,244,320円 | 91,638,737円 | 182,883,057円 |
平成30(2018) | 77,283,126円 | 100,286,000円 | 118,006,185円 | 218,292,185円 |
・奄美野生動物研究所への再委託費は各年度の「随意契約の相手方及び理由等(物品製造関係)」より ※原本はページ下部に掲載
・生理研・京大への公布金額はAMEDに情報公開請求して開示された各年度の実績報告書より
これを見ると、毎年8千万円近い金額がNBRP「ニホンザル」から奄美野生動物研究所に支払われていることがわかります。NBRP「ニホンザル」全体に公布されている金額のおよそ4割であり、生理学研究所に配分されている分のほとんどを占めます。
かなりの金額であるのに、生理研の母体である自然科学研究機構は、現在、この金額を公開していません。サイトで公表している随意契約のリストにも載っていませんし、開示請求で得たリストにも載っていませんでした。
以前は公開されていたのに、おかしいのではないか?と思い、自然科学研究機構に問い合わせたところ、以下のような回答がありました。(赤字はPEACEによる)
当機構Webサイトからお問い合わせいただきましたことについて、
以下の通りご回答申し上げます。お問い合わせをいただいた契約情報につきましては、
当該契約情報の公開により、契約の相手方の権利、業務の遂行その他正当な利益を
害される恐れがあることから、大学共同利用機関法人自然科学研究機構における
随意契約情報の公表に関する取扱いについて(平成18年12月26日機構長決定)
(5)内容を公表しない随意契約に規定する「本機構の行為を秘密にする必要があるもの」
に該当すると判断し、公開していません。どうぞよろしくお願いいたします。
驚きました。なぜ秘密にする必要があるのでしょうか。
生理学研究所がニホンザルの飼育を民間施設に委託していることは周知の事実であり、NBRP「ニホンザル」自ら、様々なところでその事実を明かしています。委託先の名称についても、国会質疑で文科省が奄美野生動物研究所であることを認めていますし、NBRP立ち上げ当初のシンポジウムでは、奄美野生動物研究所の前身の会社の社長が講演したこともあったのです。
国内にほかにニホンザルの飼育ができる施設がないからこそ随意契約なのだと思いますし、 そもそも奄美大島で倒産した企業の代わりに新しく設立された民間企業(奄美野生動物研究所のこと)はナショナルバイオリソースプロジェクトのニホンザルを専業で飼育してもらうために立ち上げてもらった企業だと設立当時、生理学研究所の研究者がシンポジウムで説明しています。
多額の税金が毎年投下されながら、その金額を明かさないのは問題です。奄美大島の施設ではサルの頭数は年々減少していますが(特に2022年に50頭も減りました)、それに見合った減額はされているのか等を誰も外部からチェックできないことになってしまいます。
PEACEでは改めて自然科学研究機構に対し、生理学研究所のニホンザル飼育に関する随意契約情報を公表するよう要望中です。
問い合わせ先
大学共同利用機関法人自然科学研究機構
総務課企画評価係メール:nins-kikakuhyoka”a”nins.jp ”a” は @ に置き換えて下さい
参考情報
自然科学研究機構が過去に公表していた文書
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