2023年2月、猿回しの興行先での練習中に調教師がサルの肩を強くつかんだり、手で引っ叩いたり、両手で頭をグリグリしたりする様子を撮った動画がSNSに投稿され、炎上しました。
猿回しの練習中に、女性芸人がサルの肩を強くつかんだり、両手で頭をグリグリしたりする様子を撮った動画がツイッターに投稿され…
「日光さる軍団」の公演を巡り、「猿への虐待では」と指摘される動画が交流サイト(SNS)で拡散され、さる軍団の公演などを行…
炎上した動画と同じ日に投稿されている別角度動画
調教師の所属する日光さる軍団(おさるらんど)は謝罪文を公表しましたが、「指導している内容とは大きくかけ離れた行動」と言われても、本当にそうかなど誰にもわかりません。そもそも、昭和30年代には消えていた猿回しの芸を再度興した本人(日光さる軍団を率いる村崎太郎氏の父親)が著書で、折檻しなければサルに芸は教えられないことを詳細に記述しています。
下記の当会の投稿を見て、この本を読んだ方からも、気分が悪くなったと感想をいただきました。
猿回しを復活させた本人が、徹底的にゲジ(折檻)をしないとサルは人間のいうことを聞かないと書かれていますから…。主従関係を確立する儀式があるのは東南アジアのゾウと同じではないでしょうか。若かりし太郎氏がジローを押さえつける写真も載っています。
村崎義正「猿まわし復活 その調教と芸」 https://t.co/guxAir6Edq pic.twitter.com/abppDW8uWh
— PEACE 命の搾取ではなく尊厳を (@animalsPEACEnet) February 6, 2023
引退するまで芸の強制から逃れられないこの猿のことを思うと胸がつぶれる思いですが、猿回しに対する疑問を世の中に拡散させた意味では、本当に撮影してくれたことに感謝です。
フジテレビ「ザ・ノンフィクション」で日光さる軍団について2回の放送
~調教師のアパートは特定動物の飼養・保管許可は得ていない
その後、2023年7月に2回もフジテレビ系列のテレビ番組「ザ・ノンフィクション」が日光さる軍団を取り上げました。
驚いたことに、大宮でのサルへの暴行が炎上したときに、フジテレビのテレビカメラが密着取材していたのです。世間の批判が厳しいことに衝撃を受けている様子もありましたが、結局はがんばっていこうといった感じで終わってしまいました。
2023年7月16日(日)放送 「就職先はさる軍団2 ~汗と涙の新入社員物語~ 後編」
PEACEでは、1回目の放送後に、本来自然に生きるべき野生動物に芸を仕込み、見世物にするような調教師集団を取り上げることはやめていただきたいとフジテレビあてに要望をメールしました。ニホンザルを小さな檻で飼育したり直立歩行させたりする不適切な動物の扱いを、正しいことだと視聴者が信じてしまいます。
また、番組を見て日光さる軍団は違法行為を行っているのではないかと感じました。
N村という調教師がアパートにニホンザルを連れ帰っていましたが、彼のみならず、どの調教師も自宅で特定動物の飼養・保管許可を県から得ていません。もし「お猿オッケーの部屋に引っ越し、相方に決まったキャサリンとの生活が始まりました。」というナレーションが正しく、毎日アパートで暮らしているのであれば違法飼育ですが、堂々と放映していました。
栃木県に確認したところ「猿は、常にアパートで飼養されているわけではなく、あらかじめ届出た日数及び時間のみ連れ帰っています。一緒にアパートで暮らすというような誤解を生じるナレーションがあり、この点については注意をしました。」との回答が来ました。つまり撮影のあるときは届け出て、そのときだけ自宅に連れ帰っているのを、番組では毎日連れ帰っているかのように視聴者に印象付けることがされていたわけです。
番組前篇を撮影した共同テレビの永山真治カメラマンの取材記事でも「サルと24時間365日家族同然に過ごし、師匠から弟子へと厳しい指導で受け継がれてきた伝統のスタイル」と書いていることは疑問です。フジテレビは番組制作陣はアパートでのニホンザルの飼養の実態はないと知っていて村崎太郎氏の「猿も人間も一緒に生活して暮らして」などという発言を放映したのでしょうか。であればそれはヤラセではないでしょうか。それとも取材陣も騙されていたのでしょうか。
もしかしたら調教師はふだんアパートには帰っておらず、飼育の許可を受けている施設のある事業所に365日ほとんど泊まり込んでいる可能性もあるので何とも言えませんが、もしそうだとすれば、労働者を自宅に帰さないような企業の追跡ドキュメンタリーなど放映するべきではないでしょう。
特定動物であるサルの飼育を許すアパートがあるとも思えないので、違法飼育ではなくヤラセだった可能性のほうが高いとは思いますが、未だにこうしたテレビ番組の作り方がされていることは驚きです。
また、1回目の放送では、群馬県・草津温泉の日光さる軍団の施設「おさるの湯もみ処(おさ湯)」も紹介されており、調教師の寮から「おさ湯」まで猿を歩かせているシーンがありました。それを見て、てっきり毎日歩かせているのかと思ってしまいましたが、これも群馬県に確認したところ、道路を歩かせてよいのは時間外の届を出したときだけで、普段は移動檻で移動させるようにとしているとのことでした。ここでも視聴者をミスリードするヤラセのような手法が使われました。
ちなみに、特定動物は規制上、檻から出せるのは1時間までです。ショーや撮影などは例外の届を出して行うことはできますが、特定動物を使う猿回しが動物福祉と両立しえないことは、この規制をもってしても明らかです。
番組によれば、現在は新人調教師には調教済みのサルを与えて仕事をさせているのだそうですが、そうした新人調教師らについて先輩調教師が、まだ本当にしんどいことは知らないというようなことを言ってのは、非常に引っ掛かりました。幼い猿の心を折り人間に従わせる「根切り」のことを言っているのではないかと、前述の本のことが頭をよぎりました。
番組はサルに引退時期があることも報道しませんでした。当時、日光さる軍団本拠地で飼われているサル80頭の半数は引退ザルでした。
「ザ・ノンフィクション」はドキュメンタリーを装っているけれども、本当のことは報道しない番組です。このような番組は今後一切やめていただきたいものです。
「とよすのマルシェ」、猿回しを中止
東京の豊洲ぐるりパーク(江東区豊洲ふ頭内公園)で開かれていた「とよすのマルシェ」では猿回しの興行が行われていましたが、2023年の虐待炎上後、抗議により中止になりました。その後も、行われていないはずです。
甲府市遊亀公園附属動物園のクリスマスイベント、猿回しは中止になりました
2023年12月23日に開催が告知されていた甲府市遊亀公園附属動物園のクリスマスイベントで行われる「アニマルマルシェ」で猿回しが告知されていたので驚愕しました。遊亀公園附属動物園は、リニューアルのため休園中ですが、この日は部分開園があり、公園内では市の主催ではなく民間人による応援団が主催する「アニマルマルシェ」の開催も告知されていました。その中にあったのが、猿回しです。
「アニマルマルシェ」も主催は民間ですが、甲府市が後援名義の許可をしていました。
動物園応援団が主催するイベントに、なんと猿回し。動物園は自然に近づける努力をするのではなかったのか? 「ファン」が動物に一体何を求め、押し付けようとしているのか、わかりやすい答えだ。
動物園は再検討してくれるそうだが、どうなるか。土地を貸す甲府市に意見を➡️https://t.co/S6dCFcNFRs https://t.co/9KtDc2ybHD— PEACE 命の搾取ではなく尊厳を (@animalsPEACEnet) December 13, 2023
このイベントの主催は動物園ではなく市民でしたが、呼ぶ予定だった猿回し師は長野の猿回し師で「食事も寝る時も24時間一緒」などという報道を信じていたようなので、本当に悲しくなってしまいました。
24時間サルと寝食を共にしているだとか、そんな耳障りのいい宣伝文句に騙されないでください。 ニホンザルは特定動物であり、檻から出せるのは1時間までです。どんな施設で許可を得ているのか個人情報なので明かされませんが、本当に24時間寝食を共にしていたら法律違反です。動物好きな人は、人と動物の絆などというファンタジーを信じやすいのかもしれませんが、現実を見てほしいです。
猿回し師が第一種動物取扱業の登録をしていた長野の飯田保健所に確認しましたが、サルは家では檻に入れられているとのこと。そのことが確認できたので、動物園にも伝えました。
「24時間ともに生活している」というと、一緒にご飯を食べたり布団で寝たりすることを連想すると思いますが、そうではないので「不適切な表現」と飯田保健所は言っていました。檻のある家で調教師も生活しているだけです。
猿回しに幻想を見るのは止めましょう。動物を自然から切り離し搾取するエンタメ利用の一形態です。
動物園が中止の判断をしてくれたことだけは救いでした。
甲府市遊亀公園附属動物園から電話があり、猿回しは実施しないことになったと連絡ありました。理由は言えないとのことですが。
猿回し師が第一種動物取扱業の登録をしている飯田保健所から一昨日電話があり、サルは家では檻に入れていることを確認したので、そのことを動物園に伝えていました。 https://t.co/mexGIggON6— PEACE 命の搾取ではなく尊厳を (@animalsPEACEnet) December 21, 2023
吉祥寺駅構内でも猿回しが行われていた
吉祥寺駅を利用される方から、何度か猿回しが来ていると写真をいただいていました。駅構内は、京王百貨店キラリナ京王吉祥寺が管理している部分とそうではない部分に分かれるのですが、猿回しが行われていたスペースは、京王百貨店が管理している場所でした。
電話・メール等で何度か意見してきたのですが、意見あったことを伝えますと言うだけではっきりせず。大宮での猿回し師によるサルへの暴行が炎上したときに、下記の呼びかけをしました。
京王百貨店キラリナ京王吉祥寺が管理している吉祥寺の駅構内通路「はなこみち」でも日光猿軍団の猿回しが行われているとの情報をいただいています。
京王グループにも貸さないようにメールをお願いできないでしょうか。ニホンザルは特定動物でもあります。https://t.co/Hsp57AMrYL pic.twitter.com/oDRk2JUJJA
— PEACE 命の搾取ではなく尊厳を (@animalsPEACEnet) February 6, 2023
その後も回答はもらえていないのでどういう決定がされたのかはわかりませんが、吉祥寺のような利用者の多い駅で野生動物がこのように利用されているところを見せるのは有害度が高いです。
※現在も行われているのをご覧になりましたら、教えてください。
吉祥寺駅の南北自由通路、愛称「はなこみち」で猿回しが行われていることがある。場所は、「はなこみち」の京王百貨店が管理している部分。意見先電話京王百貨店キラリナ京王吉祥寺 0422-29-8240メール京王グループお問い合[…]
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