去年6月1日に神戸須磨シーワールドは開業しました。その直後にオルカ・リサーチ・トラスト(Orca Research Trust)から、「神戸須磨シーワールド 2頭のフランスのシャチ、ウィキーとケイジョにとって、なぜ適切な施設ではないのか(原題:KOBE SUMA SEA WORLD, Japan.Why it is not a suitable facility for the two French orca Wikie and Keijo.)」と題する報告書が緊急で出されました。専門家が神戸須磨シーワールドを訪問しての評価報告書です。
この早さに驚きました。これは、神戸須磨シーワールドに2頭のシャチを輸出しようとしていたマリンランド・アンティーブの問題を受けて、フランス政府向けに作成された緊急評価レポートであり、衝撃的なことに、フランスの2頭のシャチは神戸須磨シーワールドに売却されたことが明らかになっていると書かれていました。その後、日本に輸出されなくなったことは本当によかったと思わされる内容です。
PEACEでは昨年の世界オルカデーに、このレポートに関する連続X投稿をしましたので、その内容を以下にまとめます。
明日7月14日は #世界シャチの日 #WorldOrcaDay#神戸須磨シーワールド がシャチにとって、いかに不適切な施設であるかを既に専門家が評価し、レポートを公表しています。明日はその内容をご紹介していきます。
囚われのシャチに芸をさせて喜ぶ社会から卒業しよう。#オルカ #シャチショー #神戸市 pic.twitter.com/OGzMeXeMUW
— PEACE 命の搾取ではなく尊厳を (@animalsPEACEnet) July 13, 2024
※注:以下、写真とキャプションはPEACEによるものです。
シャチたちの歯について
PEACEでは以前、シャチの歯についての論文を紹介しましたが、この緊急評価報告書を書いたIngrid N. Visser博士は、このオルカの歯に関する論文の著者でもあります 。
ニュージーランドのオタゴ大学歯学部などの研究グループが、飼育下のシャチ(オルカ)に関する調査結果を論文にまとめ公表しました。なんと、調査した飼育下のシャチ29頭全てに歯の損傷が見られたそうです。プールのコンクリートや金属(ゲ[…]
神戸須磨シーワールドに関する、この評価書でも、ステラの歯の多くがひどい状態で、ランの歯もステラほど摩耗はしていないが、問題があるとしています。
金属製の門、水槽のコンクリート、おもちゃなどの硬い表面をかじったり、噛んだりすることでシャチの歯は擦り減り、歯髄が露出します。 感染の可能性を減らすため、歯が削られますが、通常、鎮痛剤を使用せずに行われ、シャチの歯に永久に開いた穴が残ります。 ステラの歯には穴があります。

ステラは神戸須磨シーワールドでも施設の硬い表面をかじっています。 2 頭のシャチの歯の損傷の大部分は須磨シーワールドへの移送前に発生したものであるにもかかわらず、行動上の問題が継続しています。
この評価書は、歯のさらなる損傷と健康への継続的な懸念が残るとしています。 この行動は、この施設がシャチの飼育に適していないことも示しています。
さらに、日本でシャチを飼育している施設の状態が疑問視される点として、飼育されているシャチの歯が緑色がかっていることが記録されているのは日本だけだということがあると指摘されていました。原因はわからないそうですが、歯の内部に藻類が繁殖したのか、日本で飼育されているシャチの食事の化学的な不均衡が原因かもしれないと推測されています。
食べたものの吐き戻し行動
また、動物福祉の観点から、神戸須磨シーワールドで起きている異常行動として、慢性的な吐き戻しがあると指摘されていました。須磨シーワールドのシャチのショープールでは、魚の体の一部(鱗、骨、ひれ、肉など)が水面に浮かんでおり、下方に流れていました。水槽の底には、水の渦により吐き戻した魚が溜まっている場所がありました。
これらの魚のかけらが広範囲に見られることから、吐き戻しの程度は明らかとしています。どちらのシャチも吐き戻して再摂取していることが観察されたとのこと。
飼育下のシャチの、このような慢性的な吐き戻しと再摂取はストレスに関連しており、シャチの健康に影響を及ぼし、歯を損傷する可能性があるとされています。
体の組織の損傷
さらに、体には組織の損傷が見られます。 クジラ目の動物が体の一部を硬いものの表面に繰り返し打ち付けると、組織の損傷が発生します。さらにその組織が再び損傷を受けると、治らない状態になることがあり、痛みや痒みなどの症状が顕著になる場合もあります。
ステラは下顎の結合部に青白い部分があり、その周囲はマスタード色の変色で囲まれています。青白い部分は、他の部分とは異なる白色をしており、質感も異なります。また黒色の色素沈着のため目立ちにくいですが、吻端にも組織損傷があります。日中は別の色をしており、何かにこすったりぶつけたりしていたとみられています。
ドローン映像では、神戸須磨シーワールドの展示プールでランがアクリルの壁にわざと頭を叩きつけている様子が記録されていました。 このような頭を打ち付ける行動は、シャチを含む多くの鯨類で記録されています。シャチが窓を突き破り、重傷を負ったケースもあります。
神戸須磨シーワールドで、新しい施設に導入されて間もなく、このような行動が記録されたことは、深刻な懸念事項だと述べられており、この行動は、深刻な福祉問題を示しているとも指摘されています。
ショーの前の予期行動について
また、シャチたちには、ショーが始まる前などに、何かが起こりそうだと動物が想定したときに示される予期行動が起きていました。これは深刻なフラストレーションや、場合によっては攻撃性につながる可能性があるものです。
シャチはショーの前の方が小さい円を描て泳ぎ、速度も速くなります。また、口を開けて餌をねだる姿勢で泳いでいます。
例えば、芸をした後にもらえる餌がほしければほしいほど予期行動は起きやすくなるでしょうし、専門家の分析のほうが納得できますが、日本では事業者による擬人化が真実だと信じ込まれる傾向にあります。
攻撃性について
浮いたままぷかぷかするロギング

施設のスペックの低さ

ショーの内容も酷い

トレーナーの安全対策もとられていない
教育に力が入っていない
鴨川シーワルドのシャチについて

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