フランスからのシャチ移送反対のアクションを続けてきましたが、それでは、神戸須磨シーワールドは、どんな水族館なのでしょうか。現地レポートです。
「大きないのち」に小さなプール
イルカやシャチの展示やショーに対して、国内外からの批判がさらに高まりをみせている中で、2024年6月1日、「神戸須磨シーワールド」がオープンした。閉館した神戸市立須磨海浜水族園の跡地にできた、グランビスタ ホテル&リゾートの運営管理による娯楽要素の強い水族館だ。
西日本唯一のシャチショーが最大の目玉で、キャッチコピーは「すべてのいのちは、こんなにも大きい。」だ。しかし、新しくできた水族館のプールはサイズ、展示方法においても既存の水族館を超えるものではなかった。最新の設備には目新しさも進化も見られず、動物たちへの配慮、福祉においてはこれまでの反省の生かされない、娯楽が優先された水族館でしかなかった。
すべてのいのちは、こんなに大きい?
大きいと思っているのに、こんな小さなプールしか作らないの、何かの冗談ですか。#動物虐待 #シャチ #イルカ【音楽ナタリー】milet、新オープンの水族館「神戸須磨シーワールド」テーマソング担当(コメントあり / 動画あり) https://t.co/i3J1auAO29 pic.twitter.com/XE45e4WBgC
— PEACE 命の搾取ではなく尊厳を (@animalsPEACEnet) May 17, 2024
プールの大きさの比較写真を見ての通り、神戸須磨シーワールドのシャチプールはフランスのマリンランド・アンティーブよりも小さいのは明らかで、1970年にオープンした鴨川シーワールドより小さいのではないかと感じるくらいだ。実際には少し広いそうだが、3つのプールの組み合わせになっているため、特にメインプールの小ささから、狭さを感じる。
深さにおいても問題がある。マリンランド・アンティーブのシャチプールが深さ11メートルに対し、神戸須磨シーワールドはメインプールやサブプールとも同じ深さで6.5メートルしかない。イルカメインプールは、神戸須磨シーワールドが深さ4.5メートル、既存の水族館は3メートルから5メートルなので、深さにおいても既存よりも浅いことになる。
野生ならばハンドウイルカは最大で535メートル、シャチは最大260メートル深く潜ることができる1。マリンランド・アンティーブのプールでさえ、鯨類には狭く浅く、不適切なのだ。
「神戸須磨シーワールド 2頭のフランスのシャチ、ウィキーとケイジョにとって、なぜ適切な施設ではないのか」と題する評価書が、現地を視察したオルカ・リサーチ・トラスト のIngrid N. Visser博士によって公表されています。#シャチショーの問題を知る https://t.co/P5eJvctAcC
— PEACE 命の搾取ではなく尊厳を (@animalsPEACEnet) July 14, 2024
フランスのマリンランド・アンティーブからシャチが輸送される計画について、これまでフランスからたびたび話が伝わってきていたが、シャチの健康状態や世論による反発、保護団体からの圧力により、いよいよフランスの大臣が反対の意を表明した。もしも移動が実現したら、シャチはフランスから狭い移送箱で長距離移動を耐えた挙句、これまでの環境よりさらに狭い水槽に入れられるところだった。
「水族館の水槽はシャチやイルカには狭すぎる、閉じ込めて飼育してよい動物ではない」という国際的な流れに反し、鴨川シーワルドより後にできた名古屋港水族館にも及ばない、小さく浅い水槽が新設されたのは驚きだ。水質の維持などの問題が解決できなかったとすれば、鯨類の水槽での飼育の限界を示すものだといえる。
本来の生息環境をできる限り再現しようとする努力も見られず、より娯楽性の高いショーのためのプールとなっていた。教育よりもショーを優先させたことに、水族館の運営と設備の限界が表れている。
フランスからシャチを移動させないで!
ロロパルケにシャチを送る場合、マリンランドと神戸須磨シーワールドとの間の契約解除が必要と書かれているので、神戸須磨シーワールドと契約解除させてでもロロパルケのほうがよいとフランス政府は考えていることになります。…
— PEACE 命の搾取ではなく尊厳を (@animalsPEACEnet) November 21, 2024
このX投稿および過去記事で述べたとおり、フランス政府は神戸須磨シーワールドの施設が小さいことだけでなく、家族構成についても懸念を持っていた。
シャチは母親を中心とした母系の群れを作ることは知られている。フランスからシャチを移送すれば、親子関係にあるステラとランの中に、いわば赤の他人であるシャチを入れることになる。小さなプールではお互いの逃げ場もない。フランスの2頭のシャチも親子だが、繁殖計画のために引き裂かれることになるのではないかという懸念が持たれていた。
よく飼育員やトレーナーとの絆が美化されるが、動物たちの家族や仲間を引き裂いているのも彼らだということは忘れてはならない。また、「絆(きずな)」という言葉は犬や牛などの動物をつなぎとめる綱の意味を持つことを追記しておく。