野生のミーアキャットは20~30匹の群れで暮らしていますが、動物園やサファリパークで見られるのは、もっと個体数の少ない群れです。
今年の4月、こうした小さな群れで暮らす飼育下のミーアキャットは、捕食されるストレスにさらされていないにもかかわらず、慢性的なストレスを抱えるリスクが高いことを示す研究が公表され、話題になっていました。
何につけ一つの研究で結論づけることはできないとは思いますが、イギリスの8つの動物園や野生動物公園が協力したこの研究では、「狭いスペースで飼育されており」「群れの個体数が少なく」「来場者数が多い」ミーアキャットが最も高いストレスにさらされているという結論が示されていました。
論文:
- Group size and visitor numbers predict faecal glucocorticoid concentrations in zoo meerkats
Katy Scott, Michael Heistermann, Michael A. Cant, Emma I. K. Vitikainen
Published 19 April 2017.DOI: 10.1098/rsos.161017
概略:
ストレス応答に関連するとみなされている血中コルチゾール濃度を反映する指標として、糞便中のグルココルチコイド(糖質コルチコイド)濃度と何が相関しているかを調べる手法がとられており、発表したのはイギリスのエクセター大学の研究グループです。
野生のミーアキャットについては広く研究が行われており、コルチゾール濃度の変動について既に発表されたデータが十分にあることもこういった比較を可能にしているようです。
ポイント:
- 個体数の多い群れほどストレスが低かった。野生のミーアキャットでは、群れの個体数が少ないと捕食されるリスクが高まるため、ストレスが上昇する。逆に個体数が多くなっていくと捕食されるリスクは減るが、食べ物をめぐる競合のリスクは高まっていき、ストレスも上昇する。群れのストレスを最小限に抑える適正なサイズがあると考えられるが、飼育下の群れのサイズは、野生での不安定な群れと同じくらい個体数が少ない。
- 飼育スペースの広さが広いほど、ストレスは少ない。しかし個体の密度は関係がなかった。
- 観客の数が多いほどストレスレベルが高くなる。最もストレスが低いのは観客数が少ない個体であり、最もストレスが高いのは一貫して高い観客数が保たれる場合である。
- 野生のミーアキャットとは違って、飼育下では、性別、年齢、群れの中での地位はストレスレベルに影響していなかった。
ちなみに、野生ではミーアキャットの群れは最大で数平方キロメートルのテリトリーを守るそうですが、この調査に参加した飼育施設のサイズは34〜300平方メートルとのことです。
結論として、動物園は大きな群れと飼育場を維持することを目指すべきとあるのですが……
もう……単独飼育でリード拘束して「めっちゃさわれる」なんて、論外なんでしょうね。
▼許されるテリトリーはリードの長さ分だけ…