農薬取締法の改正が、今月8日に成立しました。
継続審議になると言われていたものが急に動き始めたため衆議院での働きかけが間に合わなかったのですが、参議院では、小川勝也議員(無所属、会派は立憲)が動物実験代替法の採用について質問をしてくださり、野党筆頭理事の田名部匡代議員(国民民主党)のご尽力によって、動物実験代替と3Rの促進が付帯決議に書き込まれました!
平成21年の化審法改正の際の付帯決議に似た内容となっていますが、今後改正農薬取締法が施行されるにあたり、関係省庁が動物実験についても意識してくれるようになるのではないかと期待します。
(付帯決議は法的拘束力のあるものではありませんが、行政が法律を運用するにあたり参考にするべき国会の意見となります)
急な要望にもかかわらず、ご尽力くださいましたお二人の議員に厚く御礼申し上げます。
該当する部分は以下の通りです。
七 試験に要する費用・期間の効率化や国際的な動物試験削減の要請に鑑み、定量的構造活性相関の活用等を含む動物試験の代替法の開発・活用を促進すること。また、国内外の法制度で明記されている動物試験における3R(代替法活用、使用数削減、苦痛軽減)の原則に鑑み、不合理な動物実験の重複を避けるなど、3Rの有効な実施を促進すること。
今回の農薬取締法改正
まだ運用の詳細はこれからですが、今回の改正の目玉は、現在3年ごととなっている農薬の再登録を止め、定期的に最新の科学的根拠に照らして安全性(毒性)等の再評価を行う仕組みを導入することにあります。
また農薬の登録審査の見直しも行われることになり、農薬使用者に対する影響評価の充実については、暴露のシミュレーションが採用されると聞いていますが、動植物に対する影響評価の充実については、試験する生物をふやす方向にあるので、新たに動物を用いた試験が追加される可能性もあります。水草や昆虫などが想定されているという話もありますが、どういう生物の試験をふやすかについては、今後環境省で検討が行われますので、油断はできません。
国会の質疑を見ていると、国会議員はどちらかというと動物実験を増やしてほしいと考えているように感じます。例えば神経毒性試験を追加せよといった意見もありました。しかし、EUでは既に神経毒性についてもEFSA(欧州食品安全機関)が動物を用いない試験法(ヒト誘導多能性幹細胞(iPSC)を用いるもの、げっ歯類初代培養細胞を用いるもの等)との併用について、既に検討を行っており、今年4月に報告書も出ました。ただ単に動物を使えばいいだろうと考えるのではなく、こういった動向を日本もきちんと受け入れてほしいと思います。
また、小川議員が質問で指摘してくださっていますが、OECD等で採用されている既存の代替法も日本ではまだ正式に通知に掲載されていません。これについては、答弁で対応することが明言されましたので、今後進んでいくことを期待します。
さらに、農薬の試験は2種の動物で行うことになっている試験も多く、重複が国際的にも批判されています。発がん性試験については、日本からマウス試験が重複となっている可能性を示唆する研究成果も出ていますので、国際的動向を待つのではなく日本がイニシアティブをとるくらいの気持ちに変わっていってほしいと願っています。
とにかく恐ろしいほど動物を犠牲にしているのが農薬。もっと依存しない社会へ転換していく必要がありますが、多くの国会議員がその願いを持ちつつも、1つ1つの農薬ごとでしかなく動物からの推定でしかない「安全性」のロジックに陥ってしまうのは少し残念な印象も持ちました。