日本化学工業協会LRI 研究報告会 動物実験代替路線明確に

▼経済産業省のプロジェクトに関する資料にも動物実験3Rや禁止の文字が

8月25日、工業化学物質の業界団体である日本化学工業協会(日化協)の研究報告会がありました。「日化協LRI 研究報告会」として毎年行われているもので、LRIとは長期自主研究活動(Long-range Research Initiative)のことです。

今年は残念ながら午後のシンポジウム「毒性予測の今後」しか聞くことができなかったのですが、動物実験の代替が大きなテーマになってきたことを実感する内容で、とても驚きました。以前には考えられなかったことで、時代が変わってきたことを感じます。

日化協からの発表でも、自分が若いころは1日何匹殺さないといけないというのがあったが、今は犠牲を減らす方向であるという話がありました。

コンピューターを用いるin silicoの予測手法の活用がなぜ必要か?というスライドには、リスク評価の迅速化や効率化と並んで、動物福祉も載っていました。脊椎動物の実験を最小限に抑えることは国際通念だときちんと書いてあります。化審法の新規物質届出のスキームの中で、どのようにこれらの予測手法を活用して行くかということについて、日化協案も考えているそうです。

また、今後の動物実験代替法の開発・実用化に際して土台になっていくと考えられているAOP(有害性発現経路:Adverse outcome pathway)についても、OECDのプロジェクトに参加した日本免疫毒性学会試験法委員会AOP検討小委員会から説明があり、かなり情報共有に時間が割かれました。日本でもこの流れが大きくなってきていると感じます。

現在、経済産業省は「省エネ型電子デバイス材料の評価技術の開発事業(機能性材料の社会実装を支える高速・高効率な安全性評価技術の開発 -毒性関連ビッグデータを用いた人工知能による次世代型安全性予測手法の開発-)」というプロジェクトを進めているのですが、この中でもAOPは重要な位置を閉めます。

このプロジェクトについてもプロジェクトリーダーである東京大学の船津公人教授からお話がありました。化学物質の研究開発費の20%を占めるといわれる安全性評価にかかるコストや期間の短縮ができることなどを目指して、統合的予測システムの構築へ向けた研究が行われているとのこと。

このプロジェクトについては、経済産業省の担当課の課長さんが代替法学会の市民公開講座シンポジウムにパネリストとして出てくださるので、ぜひ皆さまご参加くださいね。

パネルディスカッション

印象に残ったあたりをピックアップすると、まずPMDAの方は、予測手法について何らかの透明性がないと行政的利用はできないと言っていました。皆がわかるガイドラインが必要といった意見も。

一方、「個人の意見だが、毒性試験も再現性はないと思う」という発言もありました。でもまあ、これでやっていきましょうというのを動物実験はやってきたが予測手法はそこがまだ模索中。

この流れで、ILSI HESIのアドバイザーをされていて海外の状況に詳しい方が、「日本人の皆さまは予測の精度について真面目です」と発言したのは印象的でした。外国でモデルの話になると、「どんなモデルも間違っている、100%は無理」という前提で、どの程度、どこで使えるかというのをやっている。日本は、間違ってはいけないというのをすごく感じる。(わかります!!) 決していい加減にやれという意味ではないがと前置きしつつ、もっとモデル活用するために積極的になってほしいととれる発言をされていました。

ここで、そうそう、だって動物実験だってそもそも100%ではないのだから!と思っていたら、ちゃんとパネリストからもその発言が出ました。(ほっ) 

しかも、動物実験のほうがブラックボックスだと。

また、なるべく動物実験はインシリコに変えていきたいがということ前提の議論もされていました。業界からも、いかに試験を減らしていくか、しかも難しくではなく簡単にしていきたい、そのために産官学で同じところで話し合う必要性がある等々。

企業が隠しているデータを出してもらうとか、製薬などでインシリコをやっている人が毒性にも注目するようになればもっと変わるようになるとか、日本がいかに計算毒性学を軽視しているかとか、製薬はAOPがピンとこない人多いが化学品と医薬品で毒性評価の考え方が違うからかもとか、興味深い話もいろいろ出ていました。

いずれにしても、一昔前では考えられないほど、動物実験を代替するということに業界が積極的になっていて、とても驚きます。

むしろ一般の人のほうが、こういう流れを知らないくらいなのではないでしょうか。

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