アメリカ 動物福祉法と動物実験施設

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アメリカの「動物福祉法」に定められた動物実験施設の監督制度はどのようなものでしょうか。

2014年末にアメリカ農務省が出した監査報告書「動植物検疫局(APHIS)による研究施設監視について」(監査報告33601-0001-41)の概説部分がよくまとまっているので、翻訳しました。

アメリカには、もう一つ、健康科学推進法に基づく動物実験規制もあり、そちらとの比較などについてはこちらのページにまとめました。

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「動植物検疫局(APHIS)による研究施設監視について」より概説

背景

1966年、アメリカ議会は、犬、猫その他の実験動物の人道的ケアと取扱いを律するため、「実験動物福祉法(the Laboratory Animal Welfare Act)」(第89議会法律第544号)を成立させた。この法律は1970年に改正され(第91議会法律第579号)、「動物福祉法(AWA:the Animal Welfare Act)」に名称が変更された。

この改正により、研究、展示に用いられる、またはペット取引で卸売されるその他の温血動物を管理する許可が農務長官に与えられている。 同法はさらに、1976、1985、1990、2002、2008年に改正され、改正ごとに温血動物のための新しい規制が加えられた。米国農務省(USDA)所属の機関である動植物検疫所(APHIS)が動物福祉法を所管し、動物福祉法を遵守させるため、APHISは、動物を使用、販売、輸送する施設を査察するためのアニマルケア(以下、AC)部門を設けた。

ACはメリーランド州リバーデールに本部を置き、ノースカロライナ州ローリーとコロラド州フォート・コリンズの2カ所に地域事務所を持つ。獣医官(VMOs)とAC査察官が雇用されており、動物福祉法に基づく許可施設(繁殖、販売、展示業者等)と登録施設(研究施設、訓練、輸送業者等)を査察するため全国に出向く。獣医官は、一部の許可施設だけでなく登録研究施設全1,117施設に対し毎年の視察を行う責任を負う。

研究施設

研究施設は、研究で使った動物の数を毎年APHISに報告しなければならない。この年次報告書では、痛みを伴う処置があったか、苦痛の軽減なされたかによって動物を分類する。すなわち、「痛みを伴うが薬品を用いていない」、「痛みを伴うが薬品を用いた」、「痛みはない」などのカテゴリである。

動物福祉法の水準を満たすには、研究または教育目的で動物を使う研究施設は、動物実験委員会(IACUC)を設置しなければならず、その委員は研究施設によって任命される。委員会は、少なくとも委員長と、実験動物医学に詳しい獣医師、地域社会から加わる中立の委員によって構成されなければならない。IACUCは研究者によって提出されるすべての実験計画書(実験の説明や、動物の利用、鎮痛薬の種類などの情報を提供する)を審査する。

またIACUCは、少なくとも半年に1回、すべての実験エリアと動物飼育施設を査察することが求められており、研究者がIACUCが承認した実験計画及び動物福祉法に基づく規則や基準から逸脱しないよう動物を扱う活動の「継続的審査」を行う。

情報公開について

アメリカで動物福祉法に基づき登録されている動物実験施設等の一覧は、下記のサイトからダウンロードできます。国の査察報告書と、各施設が提出する年次報告書も公開されています。

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