センター入試「生物」で違法行為が出題された際の問題作成者公表

センター入試 生物 2015 違法行為 平成27年度 iPS細胞 胚盤胞補完法

インターネットでも科学者からの批判的な論調が話題になり、文部科学省の「動物性集合胚の取扱いに関する作業部会」でも繰り返し座長が批判していた2015年のセンター入試「生物」の試験問題ですが、昨日4月28日付けの官報で問題作成者が公表されました。

(大学入試センターからは今年の春公開と聞いていましたが、委員の任期は2年で1年ごとに半分が辞め、辞めた1年後に公表される方式なので、問題を作った人の半数が公表されたということではないかと思います)

問題となっていたのは、「臓器を移植される人から得た細胞を、遺伝的に特定の臓器を欠損した豚の胚盤胞に注入することによって、拒絶反応を起こさない細胞でできた臓器を持つブタを作出する方法である」と書かれている部分とその出題内容についてですが、これは現在人クローン規制法のもと禁止されている行為です

内閣府で解禁の見解が出たということが先走って報道されていますが、出題から1年以上経った現時点でも、この研究手法が違法であることに変わりがありません。現在、文部科学省の作業部会は終了し、親会である特定胚等研究専門委員会(旧特定胚及びヒトES細胞等研究専門委員会)に議論が戻ってきていますが、作業部会での結論からいっても、ヒトとキメラになったブタの胎児を個体として出産させることまでは解禁しないものと思われます。

というところから考えても当たり前ですが、このような方法でヒトの臓器を持った豚をつくることなど、誰も成功していません。まして「拒絶反応を起こさない細胞でできた臓器」をつくることができるなどという保証はまったくなく、作業部会の印象でも研究者の大半は異種移植であることから逃れられないと考えているようでした。

人間に移植するには非常に高い安全性が求められますから、仮に何らかのブタをつくることができたとしても、実用化には高いハードルがあることは間違いありません。

再生医療は、実現するのかどうか結論が見えない中で研究が進められているのが現状です。そういった技術を、まるで既に実現しているかのように多くの若者が目にするセンター入試で取り上げるのは、非常に大きな問題ではないでしょうか。

iPS細胞が正解かどうかすら確かめられていないのに無理やり選ばせていると、言うこともできると思います。

実際、アメリカに行ってこの胚盤胞補完法の研究をしている当の中内教授は、ES細胞由来のリセット細胞など他の細胞も試しており、iPS細胞ありきではないのではないかと感じます。人間の多能性幹細胞にキメラになるような能力がなければ、この方法は成功しませんから、患者から得た細胞であることにこだわっていられなくなる可能性もまだあります。

この質問の意図は、多能性幹細胞のうち「『臓器を移植される人から得た』と書かれているからES細胞ではない」と選択できるかどうかを単に見たいということでしょう。いわば国語の問題であり、ブタで臓器をつくるような壮大な話を持ってこなくてもよかったのではないでしょうか。

しかも胚の段階から人と動物のキメラをつくることが許されるのかという倫理的問題について無視するというのは、理解しがたい出題です。恐らくこのような技術を推進したい研究者が確信犯で既成事実化するために出題をしたのだろうと感じ、問題作成者が誰なのかが気になっていました。

しかし、全員を50音順で並べる方法では、誰がどの科目の出題について責任があるのか全く分かりません。所属も書かれていないので、同姓同名が複数いる研究者は、誰が該当者なのかもわかりません。社会的責任も大きい任命者の公表方法として、問題があるのではないかと思います。

日本生物教育会の意見

平成27年度試験問題評価委員会報告書(本試験)が公表されており、その中で生物については、日本生物教育会がこの部分について下記のような意見を寄せていました。若干観点が違いますが、問題ありとの認識です。

第6問 選択問題の設定については、事前に予告があったことから、どのような出題となるのか不安があったが、基礎科目との関連性や最新の科学事項をトピックス的に扱うという、受験者にとっては想像しがたいものとなっていた。問1は極めて不適切な出題である。

問1 本問は明らかに出題ミスであり、3も正解としなかったことに強く抗議する。B細胞は抗原提示細胞の特徴であるクラスIIMHC分子を持つ。B細胞が抗原情報を提示することで、T細胞に活性化されることは、東京書籍の教科書に明確に記載されている。教科書を丁寧に勉強し、正しい知見をもった受験者が失点するなどということはあってはならない。また、胎児期の造血幹細胞は肝臓にあり正解の4は教科書的に合っていても、免疫学的に正しくない。

問2 第1問のBで同様な視点での出題があったので、選択問題とは言え、重複の出題は好ましくない。オペレーターと転写調節領域を高校生に区別させるのは難しい。

問3 最新の話題を扱った設問ではあるが、「ES細胞」や「iPS細胞」は、教科書によって記述量に差があり、「生物」の一部の教科書には全く載っていない。

独立行政法人大学入試センター試験問題作成者一覧
(平成27年3月31日で任期満了の者)

阿尾安泰 青木隆 青柳かおる
青山和裕 赤坂甲治 秋葉淳
浅野一弘 アダムマレー
阿部一哉 阿部秀樹 天野一男
天野太郎 甘利弘樹 荒井豊
アンティエエマヌエル 飯田伸二
伊賀啓太 井口梓 井澤公一
石坂香子 石野好一 伊勢晃
磯貝明 磯野達也 市大樹
伊藤徹哉 伊藤眞人 稲氷純二
井上武史 井上智勝 今井慈郎
井村久則 井元秀剛 岩崎郁子
于洋 上崎哉 植田かおり
上田実 上田佳宏 植松晴子
遠藤文彦 王占華 大朝由美子
大石太郎 大串健一 大嶋孝吉
太田英利 大武信之 大西利和
大西俊弘 大橋敦子 大原志麻
岡田和彦 尾形庄悦 岡村寛之
岡本徹 奥田筧 奥山和美
小栗裕子 長篤志 小田宏信
小野将 香川孝三 腱谷方子
垣水修 富瀬達男 片岡香子
片山郁夫 片山裕 勝俣啓
加藤玄 門田明雄 門野圭司
金子恵美子 狩野謙一 狩野雄
上村慎治 カルメンハンナ
川崎昌博 河西秀哉 菅正彦
菊池瞹介 木津昭一 木股三善
木村弘信 清田洋正 桐原健真
楠瀬博明 久世宏明 工藤哲夫
久保田雅久 熊谷健一 熊坂亮
公文富士夫 藏本哲治 粟岡幹英
クレイグランバート 黒岩卓
桑本剛 桑山由文 古賀毅
小粥良 小久保謙一 小嶋茂稔
小西敏夫 小林秀樹 小林励司
小牧研一郎 小室夕里 齊藤由香
酒井啓司 坂井秀隆 桜井三枝子
佐々木整 佐々木勲人 笹倉直樹
佐藤健一 佐藤滋 佐藤隆
佐藤将朗 佐藤眞久 佐藤実
澤田直 陣田康徳 猿渡英之
志賀啓成 篠山浩文 柴博史
柴田勝 島永和幸 清水久芳
清水泰洋 周国龍 荘中孝之
新谷明雲 菅原邦雄 杉浦真一郎
杉村安幾子 杉山清彦 鈴木孝弘
鈴木直 鈴木昌和 須藤美音
隅田学 副島雄児 苑田亜矢
高瀬奈津子 高橋純夫 高橋尚志
高橋信人 高橋由美子 高見泰興
田崎博之 辰巳佳寿 恵田中榑
田中良英 谷友和 谷口裕信
千葉謙悟 郭銀志 辻川慶子
津田博司 坪井雅史
デビッドクルソン 渡慶次学
内藤雄志 永澤明 中島和夫
中園和仁 中田潤 中西裕之
中西通雄 長野秀樹 仲野誠
長森美信 中屋宏隆 成戸浩嗣
西舘司 新田智通 野口航
野口哲也 野村清英
ハーティングアクセル
バーンモルヴィ 橋本英司
橋本久子 蓮井誠一郎 長谷川孝治
長谷中利昭 畠山寛 八反地剛
花見仁史 濱田球司 原祐二
原下秀士 原田敬一 半谷俊彦
日置英彰 挽直治 樋口浩造
菱田隆彰 日比野雄嗣 廣川健
廣瀬弘毅 広瀬正浩 廣渡太郎
笛田薫 深澤真 福島勲
藤澤郁夫 藤田真哉 藤芳衛
藤原滋樹 淵田吉男
ブッヘンベルゲルステファン
古川邦之 古瀬一隆 古畑仁
堀和明 堀内晶子 前田直子
前田禎彦 前野俊昭 真壁和裕
増田茂 増本浩子 町田章
松崎公紀 松渾裕作 松田恒平
松野健 松野敏之 松宮奈賀子
眞鍋敬 丸山裕美子 三田昌彦
三次徳二 宮尾正樹 宮川勇人
宮崎充弘 三好明 武者忠彦
牟田日辰己 村田次郎 望月恒男
望月康恵 元木理寿 森真一
森口毅彦 森田光宏 守橋健二
森本弘一 山崎圭 山下亜紀郎
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