2018年3月6日動物愛護法改正緊急院内集会報告

先進国にふさわしい動物愛護(福祉)法を目指す~すべての動物を守れる法律を~ 動物愛護法改正緊急院内集会 開催報告

動物愛護法改正の議連等での検討が佳境を迎えた3月6日(火)、ロビー活動や請願署名などの活動を協働で行っている認定NPO法人アニマルライツセンター(ARC)、NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)、PEACE 命の搾取ではなく尊厳をの3団体共催で、衆議院第二議員会館で緊急院内集会を開催しました。

多くの皆様にご参集いただき、盛会のうちに終えることができました。ご参加くださいました皆様に感謝申し上げます。

テーマは全ての動物たち~実験動物、畜産動物、展示動物も忘れないで!

動物愛護法改正に際しては、犬猫などの家庭動物については多くの議論がなされますが、私たちの生活に深くかかわり、最後には命を落とす実験動物や産業動物、また動物園の動物(展示動物)については、議論の時間が多くは割かれません。

他の先進国と同様、日本の法律も、犬猫だけでなく実験動物や畜産動物なども含めた、すべての動物を守れる動物「福祉」法として実効性を持たせるのが私たちの悲願です。

それを実現するため、この集会では、この3分野からオピニオンリーダーをお招きし、改正の必要性を訴えることを目指しました。

御礼:23名の国会議員の皆さまにご参加いただきました

森友学園問題で国会が大荒れとなるなか、超党派23名の国会議員の皆様と、代理出席の秘書の方20名が参加くださいました。一般参加の皆様は立ち見が出るほどで、多くの方々が高い関心を持ってくださっていることが伝わったと思います。ご参加くださいました皆さまに御礼申し上げます。

( )内は所属政党・会派(※開催当時です)

【衆議院議員】
青山大人(希望)、石﨑徹(自民)、生方幸夫(立憲)、大西宏幸(自民)、木村弥生(自民)、源馬謙太郎(希望)、小宮山泰子(希望)、重徳和彦(無所属)、杉本和己(維新)、高井崇志(立憲)、田畑裕明(自民)、古川元久(希望)、堀越啓仁(立憲)、松田功(立憲)、松原仁(希望)、松本剛明(自民)、務台俊介(自民)

【参議院議員】
糸数慶子(沖縄の風)、江島潔(自民)、小川勝也(民進)、平山佐知子(国民の声)、藤田幸久(民進)、牧山ひろえ(民進)

これまでの議論の報告<家庭動物>
公益財団法人動物環境・福祉協会Eva理事長 杉本 彩

杉本彩さん写真

冒頭は、超党派の「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」のアドバイザーを務めていらっしゃる杉本彩さんをお呼びしました。これまで議連で議論されてきた内容のうち、ペットショップ、オークション市場、流通過程の犠牲、8週齢規制、動物取扱業者の取締り強化、動物繁殖業者、移動販売・インターネット販売等ついて、これまでの問題事例を交えながらご説明いただきました。

スライド

実験動物
日本動物実験代替法学会の活動と展望
日本動物実験代替法学会会長/東京大学大学院工学系研究科教授 酒井 康行

酒井先生写真

動物実験の3R、特に代替を進めるうえで日本の推進力となる学会として、日本動物実験代替法学会から酒井康行会長をお招きしました。まず、同学会の歴史や活動についてご紹介があり、学会としても動物愛護法改正に際し、代替法の推進の強化(3R の義務化)を関連省庁に要望しているとの報告をいただきました。

そのほか、化粧品、一般化学物質、食品・医薬品など様々な分野で代替法の導入や3Rの推進がなされていることや、代替法への転換が難しいとされる全身毒性、長期毒性についても、臓器チップのプロジェクトや、ビックデータとAIを活用したプロジェクトが進んでいることをお話しくださいました。

また、動物を守りたいという社会的要請と科学的要請のトレンドを一つにすることが代替法を進めることに繋がり、そのなかで動物福祉団体との協調も求められていると話されました。

スライド

畜産動物
畜産動物の福祉を考える
東北大学名誉教授/帝京科学大学アニマルサイエンス学科教授 佐藤 衆介

佐藤先生写真

畜産動物については、動物福祉の日本の第一人者である佐藤衆介教授をお招きしました。実例から、牛、豚、鶏も犬猫と同様に仲間を強く意識し、賢い動物であるということや、畜産動物の福祉改善が、生産性を改善、食の安全につながり、その結果、人の利益の向上に繋がることをお話しくださいました。

さらに、「認知行動療法」によって、動物を管理する人間の考え方を変えることができると、仕事の満足度ややる気が増し、それが動物福祉の改善、ひいては畜産物の品質向上につながるというお話もありました。

動物愛護法の中に、畜産動物は愛護動物として入っているけれども、実効性の担保が必要であるとご指摘いただきました。人の福祉と動物の福祉をつなぐ「ワンウェルフェア」の考え方が、世界では強くなってきており、動物愛護法にもとづく「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」のなかで、この「ワンウェルフェア」を目指した畜産動物に関する普及啓発を推進するべきとされていました。

スライド

展示動物
日本の展示動物の現状と問題
動物ジャーナリスト/映画監督 佐藤 榮記

展示動物については、「どうぶつ奇想天外」のディレクターなどテレビの世界で長年活躍され、世界中の動物を取材したり、動物ドキュメンタリー映画を製作されてきた佐藤榮記監督をお招きしました。映像を通じ、日本の動物園における悲惨な飼育の実態についてお話しくださいました。

YouTubeの映像でご覧いただくことができます。

私たち3団体が求める改正

後半は、私たち3団体からそれぞれの分野について求める改正についてご説明しました。

実験動物について(NPO法人動物実験の廃止を求める会事務局長 和崎聖子)

以下の求める改正3点について、その理由を含めご説明しました。

  1. 動物実験施設、実験動物販売業を「第一種動物取扱業」の対象とし、施設の場所や取り扱う動物の種類・頭数といった基本的な情報を自治体に登録させる。
  2. 「3Rの原則」の遵守を強化し、すでに義務規定となっている「苦痛の軽減」に加え、「代替」と「数の削減」についても義務規定として、代替法がある場合はそれを利用する、できる限り使用動物数を削減するようにする。
  3.  代替法の開発と普及を国の責務とする。

いずれも動物実験の内容に踏み込む改正ではなく、その理由は、動物実験は多くの省庁が関わり、その法律や動物実験の分野も多岐にわたるため、動物実験の内容に踏み込んだ改正はそれぞれの関連法、たとえば、医薬品なら薬機法、化学物質なら化審法で行うべきと考えているからであると伝えました。

資料:兵庫県動物愛護センターの資料「実験動物飼養施設の届出制度について」

スライド

畜産動物について(認定NPO法人アニマルライツセンター代表理事 岡田千尋)

畜産業者の多くが、畜産動物が動物愛護法の対象となっていることを認識しておらず、殴る、蹴る、焼き殺す等、暴力的行為が一般的になっている現状を紹介しました。その上で、次の4点の求める改正についてご説明しました。

  •  畜産関係業者も第一種動物取扱業の対象とする。
  •  動物愛護法の本文に産業動物に関する条項を設ける。
  •  国際基準を守り、苦痛を与えない殺処分方法を規定する。
  •  すでに畜産業との関わりのある“家畜保健衛生所”、“食肉衛生検査所”、“畜産に関わる地方行政部局”を連携機関に含める。

スライド

展示動物について(PEACE 命の搾取ではなく尊厳を代表 東さちこ)

さまざまな動物園やその他展示施設での劣悪な展示状況や輸送について紹介し、次の11の求める改正についてご説明しました。詳細は発表スライドをご覧ください。

  •  基本原則に「5つの自由」すべてを盛り込む。
  •  適正飼養を努力義務から義務に強化する。
  •  適正飼養できない者に譲渡や販売をしてはならないとする。
  •  みだりな繁殖を制限することを義務とする。
  •  輸送業も第一種動物取扱業の対象にする。
  •  犬猫等販売業の規制を展示等に拡大する。
  •  動物取扱業の対象動物を「脊椎動物」に拡大する。
  •  要件を満たさない業者は登録取消しを義務とするなど機能する法律に変える。
  •  特定動物の規制強化と個人の愛がん飼養を禁止する。
  •  罰則を強化する。
  •  虐待の定義を明確化する。

スライド

3分野の専門家からのメッセージ

講演いただいた方たち以外にも、3分野の専門家から、私たちの改正を後押しするメッセージを頂戴し、参加者の皆様にご紹介しました。

<実験動物>
「実験動物に対する縦割り行政があり、加えて行政の傘下にない分野での動物実験も多々ある。ですから、動物愛護法や各省庁の通知する基準の周知徹底には、すべての動物実験や実験動物に関する施設を把握する必要がある。そのためには、自治体等行政機関に登録が必要である」(実験動物技術者である末田輝子氏より)

<畜産動物>
「1年間に人間のために命を奪われる産業動物の数(2017年)は約10億と膨大な数に及ぶ。こうした、たくさんの産業動物に対して実際に動物愛護法があまり機能していないことは由々しき問題。動物愛護法の対象であることを明確にするとともに、福祉向上に資する具体的内容を盛り込むべき」(消費者法の専門家である日本女子大学家政学部教授の細川幸一氏より)

<展示動物>
「日本の動物愛護法では、特に飼育下の野生動物の福祉的ニーズに対応する規制はない。日本の動物園・水族館の飼育は国内外からの批判にさらされ続けるだろう。飼育下の野生動物の福祉が優先されることを確実にするために、適切で確実な仕組みが作られることが不可欠」(動物園の動物たちの福祉改善のための取り組みを行うWild Welfareのジョージーナ・アレン氏より)

配布資料

以上、当日はご参加を大変ありがとうございました。

国際的には、人の生活に関わる飼育動物の福祉全般に法的な取り組みが進んでいます。日本も取り残されることなく、法による動物たちの保護を進めるべく、今後ともぜひお力をお貸しください。

▼2019年改正法について
2019年改正 動物愛護管理法 2020年 2021年 施行

 

NO IMAGE

動物の搾取のない世界を目指して

PEACEの活動は、皆さまからのご寄付・年会費に支えられています。
安定した活動を継続するために、活動の趣旨にご賛同くださる皆さまからのご支援をお待ちしております。

CTR IMG