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イルカ輸入 二種の風景

韓国の「ハンギョレニュース」が報じた記事を翻訳でご紹介します。(翻訳:木下鐘成)

ハンギョレニュース 社会・環境
2013年5月10日 土曜版/生命


“巨済ドルフィンパーク”が申請した、北極シロイルカの輸入が不許可になった。
水温が合わないという理由なのだが、環境府の極めて異例的な処置だ。
動物団体を意識した結果にみえる。
反面、“イルカ虐殺地”太地のハンドウイルカ4匹の輸入申請には、条件付許可方針になり物議。

キョンナム巨済の水族館業者がロシアから輸入しようとした、国際的滅種危機種“シロイルカ”に対して、環境府が最近、飼育環境が適切ではないとし、輸入申請を返戻したことが10日に確認された。政府が展示・ショー目的でイルカを輸入申請したものに対して、動物福祉問題を憂慮して、輸入不許可をしたのは今回が初めてだ。

環境府関係者は10日、「(株)巨済シーワールドが提出したシロイルカ4匹に対する輸入許可申請案件に対し、科学当局の調査を経て返戻し通報を出した」と、明かした。この関係者は「イルカ体験施設である“巨済ドルフィンパーク”完工の前に、イルカを臨時収容する巨済沖の囲いの水温が、シロイルカが住む北極の海のに比べ、非常に暖かい。シロイルカがストレス等、悪影響を受ける可能性があり、不許可通報を出した」と、説明した。

シロイルカは北極の氷海にすむ国際的滅種危機種である。3~5mの白い色彩の体のために“ベルーガ(ロシア語で“白い”という意味)と呼ばれ、美しい泣き声で“北極のカナリア”という別名も持つ。国際自然保全連名(IUCN)のレッドリスト上、滅種危機近接種(NT)であり、“絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する条約(CITES)”に登載された絶滅危惧種で、輸出入国の別途許可を受けない限り、国際取引が不可能だ。シロイルカ生息国である米国とカナダは、シロイルカ輸出を厳格に限定しているが、ロシアでは最近までも輸出許可をしている実情だ。

今年の初め、巨済シーワールドはロシアからシロイルカ4匹を買い入れるために、環境府に輸入許可申請書を出した。環境府は異例的に4月中旬、国立生物資源館調査チームを巨済に派遣して、現状査察を行った。

査察に参加した国立生物資源館関係者は「水温が22~25度まで上がっても問題がないと業者側は主張したが、シロイルカ生息地である北極海は真夏でも18度まで上がることがないばかりでなく、巨済の沖は26~27度まで上がるという点を勘案した。度を越えて高い水温は滅種危機種であるシロイルカに良くない影響を与えるだろう」と話した。彼は「ドルフィンパーク建設に先立ち、イルカたちの臨時生息する囲いが、業者が一緒に輸入しようとするハンドウイルカと一緒に飼育できるほど、面積が十分なのかどうかも、そして二種を分離収容できるかどうかも確認できなかった」と話した。

環境府の輸入申請返戻は異例だ。この間、環境府は動物園・水族館が外国で絶滅危惧種を導入する場合、特別な瑕疵がないなら書類審査だけで輸入許可を出していた。しかし、ソウル大公園、ミナミハンドウイルカ“チェドリ”の野生解放決定と最高裁判所によるパシフィックランドのミナミハンドウイルカ没収判決など、展示・ショーに使われるイルカの保護が社会的関心に高まったことにより、環境府は野生イルカの輸入案件に対して綿密に検討したこと伝えた。環境府関係者は「劣悪な環境のため輸入後、飼育過程で良くないことが起こりえる。使用計画、入手経路、保護施設など、絶滅危惧種保全条約の趣旨を総合的に判断した」と説明した。

しかし、全世界環境団体の間で“イルカ虐殺地”として悪名の高い、日本・太地からハンドウイルカ4匹を買い入れるという輸入申請書に対しては、環境府は条件付許可方針を固めたことが分かった。巨済シーワールドは初めの頃、太地からハンドウイルカ15匹を買い入れると言ったが、飼育密度問題が提起され、最近、4匹に対してだけ輸入申請を出した。

環境府関係者は「ソウル大公園など、過去に他の水族館からハンドウイルカを輸入した前例があり、海の水温が日本の太地と似ていて、イルカ飼育に悪影響をきたすことはないと見る。」と話した。しかし、「臨時囲いで長く飼育するとイルカがストレスを受けて、海の環境が悪化する憂慮があるので、三カ月以内に水族館の中に移送することを、全体条件で検討中」であると付け足した。

動物保護団体は、日本の太地からのハンドウイルカ輸入も不許可にしなければならないとし、反対運動に立ち上がった。太地は年間2000匹内外のハンドウイルカを海から網で捕獲した後、屠殺して肉に利用したり、全世界の水族館に売り渡す“イルカ輸出地”として有名だ。ハンドウイルカ一匹の価格は、およそ1億ウォン。各種ショー技術を訓練させると、一匹が出す利潤が数億ウォンになるため、水族館業者たちに人気が高い。

一方では、イルカを野生に返し、一方では野生から捕獲したイルカを輸入する。昨年3月、ソウル市のチェドリ野生放流決定で展示・ショーに使われるイルカの動物福祉問題が社会的関心事に浮かんだが、依然と一部の地方自治団体と水族館業者たちは、イルカショーやイルカ体験場に目を付ける。

今回の環境府がシロイルカ輸入申請を差し戻した巨済ドルフィンパークは、巨済市が巨済シーワールドを施工社に選定して建設中の国内最大イルカ体験場だ。 巨済市イルウン面ソドン里に、建築面積7300㎡、3階規模で、年末完工が目標だ。最高裁判所の不法捕獲判決で4月8日、ハンドウイルカ2匹を没収されたチェジュ島ソギッポ市のイルカショー企業パシフィックランドは、最近、太地からハンドウイルカ2匹を輸入し、イルカショーを続けている。昨年、3月にはウルサン南区が運営する、クジラ生体体験館も、やはり太地からハンドイルカ2匹を買い入れた。

結局、昨年3月、ソウル市のハンドウイルカ・チェドリの野生放流決定と、今年の4月、最高裁判所のパシフィックアイランド不法捕獲判決でのハンドウイルカ2匹等、全3匹が海へ返ることになったが、逆に、ハンドウイルカ4匹が日本の海から捕らえられ、国内水族館に入ってる来るのと同じ事になったのだ。全体的にみると、野生イルカ1匹をさらに捕まえてきたのと同じだ。環境団体の“ホットピンクドルフィンズ”の、ファン・ヒョンジン代表は「野生生態から水族館に入ってきたハンドウイルカの相当数が、幾らもたたないうちに死亡する」とし、「環境省は前例を踏まえ、太地イルカ輸入許可を下したが、イルカたちにストレスを与える飼育環境を綿密に検討しなければならない」と、話した。HIS, Born Free, クジラ・イルカ保護協会など、世界的な環境・動物保護団体もハンドウイルカ追加輸入を禁止することを促す嘆願書を韓国政府に送る予定だ。

イルカ展示・ショーの問題点が社会的関心事になると、環境府は国際的絶滅危惧種の“無分別”輸入と、これに伴う大量死亡を防ぐため、飼育環境基準設定など関連対策を模索することを伝えた。最近になっての希少動物の飼育ブームと小規模移動動物園の人気で、絶滅危惧種輸入件数は増加傾向だ。環境府資料をみると、絶滅危惧種輸入件数は、2010年4608件から、2012年5961件に増えた。

チョ・ヒギョン動物自由連帯(AFK/KAWA)代表は、「国際的滅種危機種保護の趣旨を生かすためには、日本太地のハンドウイルカのように、直接捕獲した野生動物の輸入を禁止しなければならない。環境府からこれと関連した基準を作り、規制をしなければならない。」と話した。

ナム・ジョンヨン記者

元記事:http://www.hani.co.kr/arti/society/environment/586929.html(リンク切れ)

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