イルカ追い込み猟と水族館:日本動物園水族館協会へ要請書を提出しました(全文)

2015年、日本動物園水族館協会 日動水 JAZA が英断 追い込み猟からイルカを導入しない NGO働きかけ経緯 まとめ 

追記:2015年5月、JAZAは追い込み猟からのイルカの入手を止めると決定しました! 働きかけ当時の記事をそのまま残しています。


追い込み猟で捕獲したイルカを水族館が購入し続けていることについて、日本動物園水族館協会(日動水/JAZA)に対し、エルザ自然保護の会、ヘルプアニマルズと連名で以下の要望書を提出しました。

また、環境省にて「動植物園等の公的機能推進方策のあり方検討会」が立ち上がっており、動物園・水族館などにおける種の保全や環境教育、動物愛護などのあり方について議論がなされています。イルカショーなどの動物虐待を伴う娯楽に公的機能があるかのようなお墨付きが与えられることのないよう、環境省の関係部署にも写しを提出し、要請をいたしました。

また、ほぼ同時に世界動物園水族館協会(WAZA)へも、JAZAに倫理規範を守らせるよう要望しました。

参考:

追記:
JAZAからの回答は非常に簡単なもので、WAZAの基準を守るつもりがないのが明白です。これについては、WAZAに対し再度の要望を行いました。

追記2:

その後、JAZAは追い込み猟からイルカを入手しないことを決定しました。経緯はまとめページをご覧ください。
日本動物園水族館協会が追い込み猟からイルカを入手しないことを決定!


2013年11月19日

〒110-8567 東京都台東区台東4-23-10 ヴェラハイツ御徒町402
公益社団法人 日本動物園水族館協会
会長 山本茂行様

写:
環境省自然環境局
野生生物課 課長 中島慶二様

環境省自然環境局 総務課
動物愛護管理室 室長 田邉 仁様

メディア各位

要請書

私たちは追い込み漁で捕獲したイルカを水族館へ搬入すること及びイルカを水族館で展示することに反対します。

加盟水族館に対し追い込み漁で生け捕りしたイルカを購入しないよう、通知・指導してください。

要請の理由:

1) 世界動物園水族館協会(WAZA)の「倫理規範」への違反

世界動物園水族館協会(WAZA)は、日本の追い込み漁によるイルカの捕獲をWAZAの倫理規範に違反するとしています。いっぽう、日本動物園水族館協会(JAZA)は、WAZAのメンバーで、WAZAの指導下にあります。

WAZAは、WAZAが掲げる「倫理規範」に基づいて、2004年11月の台北に於けるWAZA会議で、日本のイルカ追い込み漁に反対することを満場一致で決議しました。2005年10月には、「本質的に残酷な方法を使って捕獲した動物を受け入れない事を徹底するよう」WAZAのメンバーに求め、さらに、「追い込み漁は、この容認されない方法でイルカを捕獲することである」と明言しました。その後、2010年にWAZA・JAZA・名古屋港水族館の間でなされた合意によって、太地における追い込み漁漁期の最初月には、ハンドウイルカを生け捕るだけにして、捕殺しないことが決まりました。しかし、これは、イルカ漁の漁期をずらしただけのもので、実質的には、以前と何ら変わらない処置にすぎません。JAZAは、WAZAの「倫理規範」に則った改善策を早急にとるべきです。

2) 資源の枯渇

水族館に展示されているほとんどの動物は、野生の生息域から捕獲された野生動物です。現在、環境の著しい変化、海洋汚染、海洋における騒音、さらに開発や乱獲による動物の減少や絶滅が問題となっています。鯨類に関して、2012年に60か国の1,800人以上の科学者からなる専門学会、国際海洋ほ乳類学会が、日本における小型鯨類の漁の持続性に関して懸念を示しました。2013年には国際捕鯨委員会(IWC)の科学委員会が捕獲の持続性に関して懸念を重ねて表明しています。また、最近の調査で、日本が追い込み漁で捕獲を許可している全種が、たとえ現在の捕獲枠を守ったとしても、減少を免れ得ず、この先、生息数の回復も難しいと発表されました。(2013年10月31日のJennifer Londale(eia理事)の発言。同封資料参照)

3) 経済を優先する、際限ない野生の生命の使い捨て

水族館の展示動物は、死ねば、野生から補充されます。国際的にみて、動物保護・福祉の観点から、野生イルカの水族館への補充はかなり難しくなりましたが、日本においては、追い込み漁からの補充が可能です。実際、和歌山県の太地からは、追い込み漁で捕獲されたイルカが国内だけでなく、世界各地の水族館に売却され、国際的な批判を受けています。野生のイルカを捕獲し、学術調査研究等を名目に水族館に売りさばく経済活動が、近年、太地で活発化しています。JAZAのメンバー間のこうした行為は、WAZAの掲げる倫理規範に違反するだけでなく、JAZAの掲げる「国際的な視野に立って、自然や動物を保護する」という目的にも反するものです。

4) 囲った施設では真の教育はできない

野生のイルカと水族館のイルカは、明らかに違います。生態系から切り離して、不自然極まりない環境に囲うことによって、イルカは、イルカ本来の能力を失い、イルカに似て非なるものに変えられてしまいます。まがい物のイルカによって、本物のイルカの生態について「教育すること」は不可能です。例えば、水族館で一番多くみられるバンドウイルカの場合、野生では1日65kmほど移動し、潜水距離も数百メートル、行動範囲は100平方キロメートルと言われています。こうした動物を狭く浅い水槽や生け簀に閉じ込めて飼育することは、野生動物の生態に反しており、動物虐待に該当します。

野生動物についての真の教育は、自然生態系を保護しながら、自然の中の動物と関わっていくことで達成できることです。捕獲した野生動物を閉じ込めて展示することは、人間が「どのように動物を扱ってもよい」という誤った意識を人々に持たせることにつながり、間違った教育をすることになります。イルカの飼育は、環境教育とは相容れないのです。

5) 国内外で、現状の水族館への批判が増加

近年、イルカについての研究調査が進み、イルカの生態が明らかになったことにより、動物福祉の観点から、海外ではイルカ類を捕獲・展示することに対して批判が高まり、イルカの輸出入、捕獲、展示等を法律で禁止する国が増えてきています。(同封資料参照)。ご存知のように「野生動物は野生のままに」という考えが、水族館関係者の間でもすでに常識化しています。こうした風潮は、日本のイルカ漁に対するWAZAの対応にも顕著に表れています。また、日本でも水族館への抗議の声が高まっており、今年7月に世界中でイルカ等の海洋哺乳動物を水族館で展示することに反対する運動が行われた際、東京・大阪・兵庫でも抗議活動が行われました。

以上の理由から、私たちは水族館で展示する目的で野生動物をこれ以上捕獲し続けることは許されないと考えます。
現在、水族館は野生動物を捕獲展示することで成り立っています。いわば、「野生の生命の搾取」が、存在の基盤になっているわけです。水族館が世界の潮流に合わせて、どう変わっていけるかが、水族館の未来を決めることになると考えます。水族館をメンバーとして抱えるJAZAが、国際的な時代の潮流を配慮され、適切な判断を下されることを期待しております。

上記要請に対するご回答を2013年12月15日までに書面にてくださいますようお願い申し上げます。

以上

要請書提出団体(アイウエオ順)
エルザ自然保護の会
PEACE(Put an End to Animal Cruelty and Exploitation)
ヘルプアニマルズ

●同封物:
1)水族館に関する世界の動向、及び、イルカ・クジラ類の保護
2)Towards Extinction – The continued hunting of small cetaceans in Japan, Environmental Investigation Agency, 2013


注:
※「水族館に関する世界の動向、及び、イルカ・クジラ類の保護」はエルザ自然保護の会作成の資料です。

※「Towards Extinction」については、提出時は上記の英語資料を添付しましたが、現在、同じ団体の資料の日本語版を読むことができます。

日本動物園水族館協会が追い込み猟からイルカを入手しないことを決定!

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