<動物性集合胚>特定胚等研究専門委員会資料に訂正の要望を送付

ここのところタイムリーなご報告ができておらず申し訳ありません。動物性集合胚を用いたヒトと動物のキメラ作成の規制緩和へ向けて文部科学省が検討を継続しています。

すでに科学的検討をするとされていた作業部会は終了し(作業部会の最終報告書はこちら。普及する気満々の資料も作成されています)、親会である特定胚等研究専門委員会(旧・特定胚及びヒトES細胞等研究専門委員会)での議論に入っています。

この委員会は、不思議なことに委員名簿が配られず、インターネットでも古いものしか出てきません。公開されている名簿から、研究費不正により国の研究費の応募資格停止になった委員がいなくなっているのですが、そのことと関係あるのでしょうか? いなくなったのはブタを使う研究者ですが、4年間の資格停止はなかなか重いものだと思います。

(処分を受けたのは農林水産省の研究費での不正でしたが、1省庁で処分を受けると国の研究費全体について応募資格停止になるそうです。期間の長さは、責任者であったかどうかなど悪質さに比例します。)

この委員会では他のテーマも並行して扱っていますが、動物性集合胚を用いた人と動物のキメラ作成についての検討は、社会的・倫理的問題についても行うということで進められています。

今のところ意識調査に関する発表が2名のべ3回と、宗教学者が1人、患者団体が1団体、動物実験について専門家が1名という状況で、倫理が専門で自分の考えを述べるような有識者からのヒアリングはされていません。

意識調査は興味深い内容でもあり別途ご報告しますが、ざっと他の論点について報告すると、宗教学者はイスラム教の専門家だったので、ブタを人体に用いる医療についての問題点を述べられるのかと思ったのですが(ブタで人の臓器をつくるといっても、ブタの細胞の混入をなくすことは限りなく減らしてもおそらく不可能とこれまで専門家が述べている)、そうではなく日本人の宗教観についての話でした。(この日の実況ツイートはこちら

ヒトと動物のキメラを「気持ち悪い」と感じるのはただの感情のように思われるかもしれないが立派に日本人の宗教観なのだというのが主旨で、全体に日本人として違和感はないものでしたが、推進側の法律学者がキメラ作成に理解を得るにはどうしたらよいのかという誘導的な質問をしたことによって、結果として主張の意図するところがゆがめられたように感じました。

実際には、なぜ「気持ち悪い」のかということをもっと深く考える必要があるでしょう。当会の署名では、自分の体を何者にも侵されず一つのものとして守りたい自己防衛としての反応であって生命体として至極当然のものだという主旨のこと書かせていただいていますが、理由なく生じる感覚ではなく、その感覚が失われたときどういう社会が来るのかということも含め、もっと専門家もきちんと考察すべきだと思います。

一番直近の回は、動物福祉もテーマになったのですが、この技術によって具体的にどのような動物福祉上の懸念がもたらされる可能性があるのかについてはスライド1枚だけで、結局「よくわからない」という内容。

この問題を国が検討し始めた最初のころから引き合いに出されているナフィールド生命倫理評議会の報告書は「見た目がほかの個体と異なるといじめられるのではないか」程度の考察しかしていない研究者寄りのものですが、その話も出ず、結局質問者が質問で出していました。生命操作自体が苦痛を生む可能性があり、遺伝子操作された動物の取扱いについてはもっと専門的な観点からの話があるのではないかと思いますが、「苦しそうだったら殺せばよい」で進んでいるのが現実です。

また、日本には実験動物福祉を担保する制度について具体的に定めた法律がないことについても触れず、まるでちゃんとやっているかのような内容。いつもの話ですが、この話ならわざわざヒアリングする必要もありません。

現実には、動物福祉が法制度上も担保されていないからこそ問題であるのに、またしても日本に諸外国のような法律があるかのような表が出てきたので、修正を求める文書を文部科学省に送付しました。

人と動物のキメラ作成の問題に限らず、毎度毎度、作為的な資料を出してくる研究者たちには、良識というものはあるのでしょうか。生命操作の倫理問題がどうこう以前に、研究者に対する信用が失われていることについて、もっと自省的になるべきだと思います。

2016年10月10日

文部科学省研究振興局
ライフサイエンス課長  原 克彦 様

PEACE~命の搾取ではなく尊厳を
東さちこ

特定胚等研究専門委員会資料の訂正要望

平素は大変お世話になっております。10月5日に開催された科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会特定胚等研究専門委員会(第94回)で配布された資料に不適切な箇所がございます。ご確認の上、公開時には訂正をしていただきたく、何卒よろしくお願い申し上げます。具体的には、久和茂東京大学教授提出資料「動物性集合胚に係る課題について―動物福祉の観点から―」の以下の部分です。

【1】スライド6「日本の実験動物・動物実験行政のしくみ」表中の「5つの自由」を削除してください。

「動物の愛護及び管理に関する法律」に盛り込まれたのは、国際原則である「5つの自由」のうち、3つだけです。盛り込まれていない「恐怖からの自由」と、「行動の自由」は、実験動物・畜産動物の関係筋から難色を示され、盛り込むことができなかったと改正当時立法に関わった関係者(国会議員含む)から聞き及んでおります。

動物実験では、恐怖を避けることも行動の自由を担保することも困難との理由で便宜が図られたにもかかわらず、まるで「5つの自由」を動物実験関係者が実行しているかのような記載をするのは、一体どういうことなのでしょうか。

「恐怖からの自由」と、「行動の自由」が含まれない「5つの自由」などあり得ません。この部分は削除していただきたく、何卒よろしくお願い申し上げます。

【2】スライド8の下記の図で黄色に示した箇所に問題があります。表の削除か、該当欄を削除することを求めます。

kyuwa-shiryo

1.  日本のみ、「利用分野で法規制」という記載があり、薬機法、省令GLP、化審法、カルタヘナ法、感染症法、家伝法などが列挙されていますが、これらの法律に実験動物の福祉を目的とした条文が存在するという見解が私たちに示されたことはありません。各省とも「動物の取扱いは環境省」との見解を示されてきましたが、何らかの変更があったものでしょうか。

また、これらの法律に該当する法律は、EU、アメリカにも存在しますが、EU、アメリカの欄には記載されておらず、不自然です。EU、アメリカとは異なり、日本には動物実験に対する公的な監督制度を定めた法令が存在しないことを隠すため、日本のみ異なる基準で法律を多数挙げたものと考えられます。このような偏った基準で作成された表に、国の専門委員会の資料として妥当性があるとは思えません。

この表を削除するか、公開するのであれば、この欄は空欄にご訂正ください。

2. 施設の日本の欄に「特定動物は許可制 自治体の長所掌」とありますが、特定動物の規制は、「人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物」を管理する目的で制定されているもので、動物の福祉のためのものではありません。むしろ、逸走の防止に重きがおかれているので、福祉が阻害される側面がある規制です。

また、単に実験動物も対象に含まれるだけであり、特に実験動物の取扱いについて何か求めるような制度でもありません。そのような規制はほかにもありますが、なぜ特定動物だけを挙げるのでしょうか。

1と同様、日本に実験動物を対象にした制度がないことを明らかにしたくない意図があると考えられます。この表を公開するのであれば、この欄は空欄にご訂正ください。

3.日本において教育実習が「必須」とありますが、文部科学省等の動物実験基本指針の遵守自体が義務ではなく、「必須」とするのは誤りではないでしょうか。また、そもそも、文部科学省・厚生労働省・農林水産省の動物実験基本指針は、動物実験のすべてはカバーしていません。
非常に誤解を与える表現であるため、この欄も空欄にご訂正ください。

以上、よろしくお願い申し上げます。

 

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