欧州REACH施行10年。動物実験代替法の利用状況はー?

EUの化学物質規制であるREACHでは、市場に流通させる化学物質ごとに登録が求められており、毒性に関するデータがないものについては動物実験が新たに行われることがあります。

よく、「動物実験されていない化学物質はない」などといった話がまことしやかに語られていますが、医薬品等とは違い、工業製品等に用いられている一般化学物質には動物実験データがないものが非常に数多くあるのです。

REACHは、毒性データ提出を求めることによってEU域内で流通する化学物質の種類を大幅に減らすだろうと期待されて導入されたのですが(なぜなら、新たに試験するコストがペイしない化学物質は淘汰される)、立案過程で膨大な数の動物の殺戮が見込まれたため、(1)既存データを各社が出し合うことで重複実験を避ける、(2)代替法の採用を推進するといった対策が同時に採用されました。

そして施行後10年が経ち、欧州化学物質庁(ECHA)は、REACHに関する動物実験の代替法利用に関する3度目の報告書を公表しました。

いつも翻訳をしてくださっているM.K.さんに報告書の概要をまとめてもらいました。


REACHで調べられている物質の9割弱は、なんらかの代替法を評価の一部に使っている
― しかし、後半の文章からは、ECHAは、内容に不満を持っている

REACHの話が出た頃を思い出しますが、私は動物の大量虐殺を予想しました。それを避けるために、REACHでは、企業の単独登録を禁止したため、一応、各物質ともに、多企業が一緒に登録申請することになりました。

この点は評価できると思います。例えば、各社の製品は、濃度も、多少の成分の違いもありますが、REACHでは、(そのあたりはいい加減に)、ひとつの物質と見立てて、登録を行います。このいい加減さが、動物の実験数を減らすことに貢献しました。

The analysis is based on joint and individual registration dossiers submitted to ECHA between 2008 and 2016 for 6 290 substances. Out of these substances, 89 % have at least one data endpoint where an alternative was used instead of a study on animals. The most common alternative method was using information on similar substances (read-across), used in 63 % of the analysed substances, followed by combining information from different sources (weight of evidence, 43 %) and computer modelling (QSAR prediction, 34 %).

ここの文章が、本報告書の要点だと思います。動物実験を減らすために、「似た物質の実験結果」(Read-across)や「関連するいろんな実験結果を集めて、推定する」(wight of evidence)を採用しています。

これらは、QSARも併せて、すべて推定評価に過ぎないのですが、それで申請を許可することで、動物実験が避けられることになります。

しかし、その推定を認めるかどうかは、「ECHAの担当者の判断」になるので、責任は、その担当者にかかってきます。認めなければ、動物が犠牲になるので、ECHAの担当者は認めたいのですが、いい加減な推定結果を企業が提出すると困ることになるわけです。

ECHA’s Executive Director Geert Dancet says: “Testing chemicals on animals should be the last resort – when there is no other scientifically reliable way to assess the potential effects of chemicals on humans or the environment. However, registrants need to improve the quality of the alternative data. We will use this report’s findings to promote the proper use of alternative methods and to support their further scientific development. We encourage registrants for the 2018 deadline to use the available in vitro methods, read-across and QSARs.”

「動物実験は最後の手段だ」―― この文句で、市民を納得させようとしています。しかしながら、ECHAは代替法の精度を高めることを強く求めています。

ところで、インビトロの代替法は、たくさん認められていますが、たとえば、毒性があると判断されれば、それ以上の動物実験はなくなるのですが、「あるかも」程度の結果が出てしまうと、その後に動物が使われるのが現状です。

ECHAも、動物による再実験を肯定しています。

Read-across has been particularly used for human health endpoints, for example, developmental and reproductive toxicity. For skin and eye irritation, registrants mostly use existing data, read-across and in vitro studies, using cells, tissues or organs. For environmental endpoints such as bioaccumulation, long-term toxicity to fish and toxicity to birds, data waiving – justification to omit studies – is the most commonly used alternative to testing in animals.

Taking all of the endpoints and substances analysed that can be filled by tests on vertebrate animals, registrants used data from new vertebrate animal studies in 11 % of the cases.

ECHA uses the report’s findings to promote alternative methods through its guidance, web pages, webinars and events. In addition, the Agency gives regulatory input to scientific projects and activities at EU and OECD level that contribute to the development of alternative methods.

Read-across等の、過去データからの推定を認めるおかげで、新規な動物実験を行うケースは11%まで減ったと書いてあります。この点は評価できるのですが、
グラフをよく見てみます。

EU REACH 3rd report alternatives

100t以下生産で生産される化学物質に関してみると、濃い青の新規な実験は20%以上で続いています。

薄い青は、すでに過去に行われた実験で、ほとんど、動物実験と思われます。

新規な20%は、REACHのために行われる実験なので、増えている実験です。

インビトロ代替法はこの中にあるのですが、結局、「毒性あるかも」という判定結果の場合は、生きた動物が使われることになるのです。

出典:

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