OECDテストガイドライン動向~動物実験代替はどういう形で進むか

今年7月に、OECD(経済協力開発機構)の化学品の安全性のためのテストガイドラインに、新たに動物実験代替法にあたる4試験が採用されました(TG490~TG493)。また、11試験法の改訂もあり、今後の予定も含めると、国際的には動物の利用の削減への取組みが加速してきていることを感じます。

動物実験の代替に関連するOECDテストガイドラインの一覧を作成してみましたので、ご参考ください。(使用数の削減・苦痛の軽減に関連するものを含むので、動物が使われる試験も入っています。試験法の日本での呼称は一定していないものもあり、参考程度にお願いします)

OECDのテストガイドラインは、化学物質の安全性評価に関し、各国で共通の試験方法を使うことによって試験結果を共有できるよう定められているものです。2002年、OECD加盟国は試験法を動物福祉と調和させることについても合意しており、代替・削減・苦痛の軽減に配慮しつつ最新の科学的動向を試験法に反映させていくことは、OECDが公式に目指すところでもあります。

ただし、OECDのテストガイドラインは主に工業用・製品用の一般化学物質を対象としているため、化粧品等の人体影響の予測のためにはそのまま使うことはできず、日本での化粧品・医薬部外品を対象とした行政的受け入れに際しては、若干内容が改訂されています。試験法の区分を見ても、化審法の体系に近いことがわかります。

セクション1 物理化学的性質
セクション2 生態系への影響
セクション3 生物分解及び生物濃縮
セクション4 人健康影響
セクション5 その他

また、一覧の中にガイドラインとガイダンスの2種類が出てきますが、テストガイドライン(TG)は、OECD加盟国に対して採用が勧告されるものであり、ガイダンスドキュメント(GD)は加盟国の判断にゆだねられるものになります。TGとDGでは「雲泥の差がある」と、下記の報告会でも説明がありました。

◆8月28日、2015年日化協LRI研究報告会

28日に、日本化学工業協会(日化協)が主催する研究報告会が開催され、一般からも参加が可能だったので聞いてきました。午後のシンポジウムのテーマは「in vitro、in silicoはどこまでin vivoに近付けるか?」で、大変興味深い内容でした。

in vitroは培養細胞などを用いる非動物の試験系のこと、in silicoは平たく言ってしまうとコンピューター予測ですが、「動物実験でなければダメという話になるのかな?」と思いきや、予想以上に動物実験ありきではない印象を受けました。日本も確実に変わりつつあるように思います。

特に、「動物実験はブラックボックスだ」とよく言われますが、今回もその話が何回か出てきました。「何が起きているかはわからないけど、動物に与えるとこうなった」というデータをもとに、非常にざっくりとした安全係数を一律にかけて予測しているのが現在の安全性評価ですが、そうではなくて、「化学物質が生体のどの部分に、どのように作用して、どういう影響が出るか」というメカニズムにのっとった予測をしていかなければいけないのではないかという話にようやくなりつつあるように思います。

今回は特に、そのメカニズムの模式化であるAOP(Adverse Outcome Pathways:有害性転帰経路)について、まとまった説明をきくことができました。

ただし、国立衛研からは、「最終的にはAOPではなく、それをもとに必要な試験法や評価の流れを組み立てたIATA(Integrated Approach on Testing and Assessment)が必要で、その段階に至っているのは皮膚刺激性試験だけだ」という話もありました。このあたりになると日本の認識はまだまだ追いつけていないように感じます。

しかし、単独で動物実験に替えられる試験法はなくても、動物ではない試験法の組み合わせで予測ができるようになっていけば、動物のためにもなりますし、またメカニズムベースで検討されていることから、人間のためにもなると考えられます。今後の動向に期待したいところです。

また1点気になっていた点ではありますが、「in vivo(生体試験)に近付ける」といっても、ヒトの安全性の場合は、近づけるべきはヒトのデータではないのか?ということがあります。パネルディスカッションでは、代替試験の結果をラットやマウスに近づけても仕方がない、ヒトとどれだけ一致するかだがデータが乏しいという話もありました。

もちろん、今すぐ動物を用いた試験がなくせるという話ではないのですが、かなり流れが変わってきたことを感じた1日でした。

会場入り口ではポスター発表もあり、iPS細胞からがん幹細胞をつくることで発がん性試験を細胞系で代替することができるようになるのでは?と感じさせる発表などもありました。

NEW GUIDANCE DOCUMENT ON AN INTEGRATED APPROACH ON TESTING AND ASSESSMENT (IATA) FOR SKIN CORROSION AND IRRITATION

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