今年5月、遺伝子組み換えされたシロイヌナズナが学内に自生していることから発覚した名古屋大学の遺伝子組み換え実験の問題ですが、8月28日に文部科学省が文書での厳重注意を行いました。
植物を対象とした研究で起きた問題なので、「動物は関係ないではないか」と思われるかもしれませんが、実際には5月22日、このことが公表されると同時に理学研究科および遺伝子実験施設で全ての遺伝子組換え実験が停止されました。つまり、植物の研究で起きた問題ではありますが、動物や微生物を用いる実験も影響を受けたのです。
当初設置されていた相談窓口に問い合わせをした時点では、まだ動物の安楽死を行うような事態にはなっていないとのことでしたが、当然学内からは困ったという声は出ているとのことでした。実験の停止は、長期間になれば使用する動物が減ることにつながりますが、中途半端な期間の場合、実験中止により無駄に安楽死させられる動物がふえるだけになる可能性があると思います。今回の場合、直接関係のない実験については、5月27日に停止は解除されました。
また文部科学省は、今回の件の原因を「本来必要とされる、遺伝子組換え植物の不活化の条件の検討が行われず、不十分な不活化措置が行われていたこと及び一部の研究室では、高圧滅菌器の管理が不適切であったこと。また、不活化前の遺伝子組換え植物の取扱いが不適切であったこと」としていますが、原因の1つに機器の劣化による故障があったことは、注目に値すると思います。
つまり、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)のフタのパッキンが劣化していて蒸気漏れしており、さらに電装部分の劣化によって温度が正確に表示されていない状態だったというのです。一般向けには「拡散防止措置をとっている」と説明がされる遺伝子組み換え実験ですが、やはり実態はこの程度かと感じます。
また今回は、実験後の処理の段階での不具合でしたが、科学実験は正しく動く機器を使うことが前提に成り立っていると思います。機器がこういった状態で放置されている研究機関で実験がきちんと行われているのか? 疑問も生じました。
文部科学省:
名古屋大学: