カブトガニの青い血を使わない試験方法が米国薬局方でも採用される│PEACE 命の搾取ではなく尊厳を

医薬品の検査のために野生のカブトガニが逆さまに固定され、青い血液を採取されているところを映像や写真で見て、驚かれたことはないでしょうか。殺さずに海に帰されてはいるのですが、実際には多くのカブトガニが、この採血のために死亡していると報告されています。

以前、このカブトガニ血液由来の原料を試薬に使う「細菌エンドトキシン試験（BET）」の代替について海外の署名をご紹介しましたが、去年７月、アメリカでも薬局方が動物由来でない試薬を使う方法を採用すると公表しました。正式には、来月からの予定です。

ただ、日本薬局方も同じですが、あくまでカブトガニ由来の試薬を使う試験法（BET）がメインであり、非動物由来試薬の試験は代わりに使えるという位置づけであることは気がかりです。ここは国際協調がなされており、アメリカが抜け駆けでBETを削除することはできないようです。

医薬品などの品質確保のために行われている発熱性物質試験では、もうひとつ、ウサギを用いる非エンドトキシン検出のための試験（パイロジェン試験）の代替が課題となっていますが、どちらの試験も、速やかに動物を利用しない方法へ移行させるべきです。

アメリカ：専門家委員会が動物由来でない試薬を使ったエンドトキシン試験を承認

2024年７月26日の米国薬局方の公表より翻訳

米国薬局方（USP）微生物学専門委員会は、エンドトキシン試験に、動物由来でない試薬の使用を許可する第86章「組換え試薬を用いた細菌エンドトキシン試験（Bacterial Endotoxins Test Using Recombinant Reagents）」を、米国薬局方の国民医薬品集（The National Formulary：NF）に追加することを承認しました。この章の最終版は、早期採用のために2024年11月に公表されますが、2025年5月に正式なものとなります。

エンドトキシン試験は、多くの無菌医薬品の品質と安全性を確保する上で重要なステップです。第86章では、動物由来でない試薬を用いた細菌エンドトキシン試験の手法について解説しています。この新章で解説する細菌エンドトキシン試験は、第85章「細菌エンドトキシン」で解説されている既存の試験手法〔注：カブトガニの血液由来の原料を使う試験〕に追加されるものです。新章には、リコンビナント（組換え）カスケード（rCR）とリコンビナント（組換え）因子C（rFC）の両方を用いた方法が含まれており、新規および既存の医薬品の品質試験にこれらの試薬を組み込む方法についての情報を提供しています。

第86章は、製造業者に対し、動物由来でない試薬の使用に必要な情報を提供することを目的としています。現在、エンドトキシン試験にリムルス・アメボサイト・ライセート（Limulus Amebocyte Lysate：LAL〔注：カブトガニの血球抽出物から調製される成分のこと〕）を使用している製造業者は、引き続き使用することができ、第86章はこれらの製造業者に影響を与えません。

米国薬局方への第 86 章の追加は、動物を使用しない方法と材料の使用を拡大するという米国薬局方の取り組みに沿ったものです。

原文 USP “Expert Committee approves endotoxin testing using non-animal derived reagents“(July 26, 2024)