<海外署名紹介>エンドトキシン試験のための野生カブトガニの捕獲禁止を求める署名

安全性試験のために捕獲され死んでいく野生のカブトガニ 捕獲を禁止に!

医療機器や医薬品開発等で行われる試験で使われる成分ために血を抜かれる野生のカブトガニ。体を固定され、青い血液が採取される様子をテレビなどでご覧になったことがある方もいるかもしれません。

これらのカブトガニは採血後に生きたまま放されているといつも報じられていますが、3割が衰弱や乱暴な扱いなどのために死んでいるとみられ、アメリカで捕獲禁止を求める署名が行われています(英語)。

Lady Freethinker

Sign our petition urging authorities in five states to stop …

それによれば、2021年、採血会社5社が、70万匹のカブトガニから血液を抜き取ったとのこと。各カブトガニからは最大半分の血液が抜き取られ、採血後、餌として売られる場合もあるそうです。

捕獲する漁師たちは、カブトガニの福祉的扱いにはほとんど関心を示しておらず、乱暴な取り扱いが横行しているとも報じられています。

また、非臨床試験大手のチャールスリバー・ラボラトリーズの収穫業者がケープロマン国立野生生物保護区で違法にカブトガニを収集していたなど、違法捕獲も発覚しています。

アメリカカブトガニはIUCNレッドリストでは危急種(VC)であるにもかかわらず、このようなことが起きています。

署名は、サウスカロライナ州、ニュージャージー州、マサチューセッツ州、バージニア州、メリーランド州、デラウェア州の知事、議員、天然資源局、および大西洋岸海洋漁業委員会に対し要望するもので、血液や飼料のための暴力的なカブトガニの捕獲を禁じ、生息地での搾取や捕獲推進につながる政策を即刻停止することを求めています。

代替となる試験法が日本薬局方に収載されている

カブトガニの血液から採取されている物質はライセート(LHL)といい、発熱やショックなどの作用を起こす「エンドトキシン(内毒素)」という物質を検知するための試験に試薬として使われます。エンドトキシンはグラム陰性菌から生じる発熱性物質で、この試験は、医療機器や医薬品等が有害なレベルで細菌汚染されていないかどうかを見るために行われています。

カブトガニ由来のライセート試薬を使う方法は、ウサギを用いる動物実験の代替として普及したのですが、世界中で野生動物が死滅しつつある今、さらなる代替法に道を譲るべきでしょう。

カブトガニ由来の試薬を使わない代替法は、日本では2021年に日本薬局方に収載されています。第十八次日本薬局方の「参考情報」に収載された「エンドトキシン試験法と測定試薬に遺伝子組換えタンパク質を用いる代替法 〈G4-4-180〉」がそれです。

ただし、残念ながら未だにカブトガニ由来の試薬を使う試験が正式な試験法として認められており、代替となる方法は、あくまで「代替できる」という位置づけです。

現在は、カブトガニ由来ではない遺伝子組換えタンパク質を用いたエンドトキシン測定試薬のうち、感度、特異性などがカブトガニ由来成分を使う試験と同等以上であることが報告されているものについては使えると参考情報として収載されただけですので、今後本格的な代替が行われることが待たれます。

代替試薬がどれくらい使われているかは明らかではないですが、カブトガニ由来が未だ主流だという報道も海外では見られます。

日米欧三薬局方検討会議の検討状況

各国の薬局方については、国際調和を取るために世界薬局方会議が設置されており、さらに日本薬局方、欧州薬局方(Ph. Eur.)、米国薬局方(USP)の3つの薬局方については、日米欧三薬局方検討会議(PDG)で調和をとっていく方向にあります。

厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課によれば、エンドトキシン試験については2022年3月15日、3月28日に行われた日米欧三薬局方検討会議のテレビ会議で以下の検討がなされたとのことでした。3局協調で完全代替となるよう、検討を進めてほしいと思います。

PMDAプレスリリースより

また、PDGは、一薬局方から提出された、試薬として遺伝子組換えC因子(rFC)を使用するQ-06エンドトキシン試験法の改正提案を検討した。本提案は、各薬局方の専門家が参加する電話会議で重ねて議論され、薬局方間でアプローチ方法に深刻な違いがあることが浮き彫りになった。提案薬局方以外の薬局方は更なるデータが必要であり、他の遺伝子組換え試薬(C因子、B因子、及び凝固酵素を使用した組換えカスケード試薬等)についても検討する必要があると考えることから、現時点でPDGは改正提案を受け入れられないと判断した。各薬局方はrFCを含む遺伝子組換え試薬を使用した試験法について、それぞれのアプローチ方法で検討を行う一方、PDGにおける将来的な試験法の整合化の可能性を見据えて情報交換を継続することになった。

出典:PDGテレビ会議プレスリリース(仮訳)

日本もカブトガニ消費に無関係ではない―名指しされる富士フィルムグループ

アメリカの非営利・公共ラジオネットワークであるNPRがカブトガニ採血産業の問題について長い記事を公開していますが、この産業を主に支配しているのは、バージニア州に工場のある日本の富士フィルムの関連企業や、チャールスリバーなどの多国籍企業だと名指ししています。

NPR

Horseshoe crab blood is used to test vaccines around the wor…

富士フィルムの関連会社とは、富士フィルム和光純薬株式会社(FUJIFILM Wako Chemicals U.S.A. Corporationのことです。武田薬品工業の子会社だった試薬メーカー、和光純薬工業を富士フィルムが買収して完全子会社化させた会社です。

アメリカの話だから日本に関係ないということはなく、むしろ責任が大きいのは日本です。

アメリカでの動き

米国魚類野生生物局は、重要な産卵期である3月15日から7月15日まで、サウスカロライナ州のケープロマン国立野生生物保護区でのカブトガニ猟を禁止したとのこと。

また、デラウェア州では、デラウェア湾でのメスのカブトガニの捕獲を禁止する新たな法律案が検討されているそうです。海鳥や湾に立ち寄る渡り性のシギ類などが捕食する生きものを守る目的での規制です。

また8月22日、米国薬局方(USP)もカブトガニ血液由来成分の合成代替品の使用に関するガイドラインの草案が公表しました。欧州薬局方は2019 年から代替品を承認していましたが、アメリカが遅れていました。パブリックコメントを経て2024年に最終決定されるとのことです。

関連情報追加

米国薬局方に代替法を早期収載するよう求める署名も始まりました。こちらもご協力ください。 ※提出されました。

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#チャールズリバー #チャールズ・リバー #アニマルフリー

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