茨城県畜産センターの劣悪な実験動物の取扱いをPETAアジアが暴露! 法制度の欠如が如実にあらわれた

茨城県畜産センターの劣悪な実験動物の取扱いをPETAアジアが暴露

目次

茨城県畜産センターは、県が設置する、いわゆる畜産試験場です。ここでの牛の取り扱い方法が暴力的で、劣悪であることをPETAアジアが動画によって暴露しました。

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和牛や乳牛を研究対象として扱う茨城県畜産センターは、公的資金で運営されている施設であり、牛にとってのこの世の地獄ですこの…

この動画に関するPETAの記事はこちらです。

PETA Asia

公的資金で運営されている茨城県畜産センターの職員が子牛や成牛を虐待していたことが発覚…

映っている中で特に残酷なのは、「除角」と呼ばれる作業です。牛の角には神経も血管も通っていて、当然痛みを感じますが、これを無麻酔で切断し、止血のために焼きごてを当てます。焼きごてを当てるのは一瞬ではなく、一定時間、当て続けます。強烈な痛みを生じるため、動物福祉に反するとされる方法です。

多くの畜産農家が牛の角が危ないという理由で除角を行っていますが、試験研究機関である畜産試験場ですら、薬剤による鎮静、麻酔、鎮痛といった疼痛コントロールすらせず、強い痛みを与え、さらに子牛の顔を踏みつけるような方法をとっていることは驚きます。

また、動画では牛の自発的な行動を待たず、棒などで突いたり、暴力的に脅したりして牛を動かそうとしています。

畜産センターは、除角も含め、ほかの施設で日常業務をどのようにやっているかをまったく知らずに、長年、牛をあつかっていたことを電話で認めました。

現在は、そもそも角の生えない無角の牛も導入しており、除角を行う回数は減っているそうで、除角はクリームを使い、獣医師による鎮痛も行うそうですが、獣医師はあくまで研究員とのことでした。

後述しますが、ここは動物実験施設でもあり、本来であれば飼育する動物を管理する獣医師の雇用が必要です。研究員は、主な仕事が研究であり、管理獣医師とは仕事が異なります。

そのほか、猛暑に日光を遮るもののない場所で常時飼育されている牛や、泥濘化した汚泥の中に出される牛などの姿が映っています。畜産センターによれば、汚泥化している場所に敷いてあったのは、なんと土ではなく砂だったそうですが、砂に見えないほど泥になっているのは、糞尿を長期間取り除かないことと、下にコンクリートが打ってあり雨水が排水しないことが原因です。

牛の体の汚れ方も、と畜場が受け付けないレベルかと思いますが、定期的に洗っているなどと言っていました。

畜産センター 牛よごれ

誰が指導するのか? 放置される畜産動物と実験動物

茨城県畜産センターの動物はすべて実験動物

茨城県畜産センターは、近年では受精卵の供給等の事業もふえてきているそうですが、試験研究機関です。動物実験委員会が設置されており、実験計画書の審査が年1回行われていること、飼育されている動物はすべて実験動物であるとの回答を、同センターから得ました。

試験研究以外に行っている事業のための動物であっても、採血などで記録をとっており、すべての飼育動物が実験動物で間違いないとのことです。

ただし、動物実験委員会が何に基づいて設置されているのかはわからないとのことで、「昔からあるから」とのこと。農林水産省の動物実験基本指針や動物愛護法が意識されているようには、とても思えません。

驚くのは、すべてが動物実験委員会の審査を経て行われた実験処置のばずなのに、除角でもあのように乱暴な方法で行われていることです。これについては、実験計画書がどの程度の内容なのか、公文書開示請求を行いました。

そして、このセンターの存在意義を疑ってしまうのは、査読付き雑誌への投稿が行われていないことです。研究結果はサイトで公表されていますが、論文化はされていないので、「おかしい」と思い確認したところ、以前は論文投稿を行っていたが、ここ数年していないとのことでした。身内で評価を行ってお終いというスタイルです。そんな手前味噌で終わる研究ばかりしていて、研究機関と言えるのでしょうか?

実験動物福祉について、法整備の遅れている日本では、外部からの立入や指導、罰則等の仕組みは一切ありません。外部の目は、せいぜい、論文投稿先から動物福祉について物言いがつくことがあれば圧力になる程度です。

他がどうやっているかも知らず、動物にいたずらに苦痛を与え続けるような機関には、消えていただきたいものです。

農林水産省のアニマルウェルフェア基準の無意味さ

農林水産省は、今年新しく、WOAH(旧OIE:国際獣疫事務局)のコードに対応したアニマルウェルフェア指針を策定しました。しかし、この指針は、あくまで自主的に守ってくださいというスタンスのものであり、違反しても罰則もなにもありません。それどころか、この指針に基づいて誰が指導を行うかということも想定されていません。あくまで事業者に自主チェックを求めるだけのスタンスです。

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農林水産省は、各自治体の動物愛護センター・保健所等がこの指針に基づいて指導を行ってもよいと言っていますが、茨城県で動物愛護法を所管する動物指導センターは、立入を行う権限がないと言って、これを拒絶しました。

確かに畜産業は動物取扱業から除かれていますが、「茨城県動物の愛護及び管理に関する条例」には、第14条に「知事は,この条例の施行に必要な限度において,動物の所有者から必要な報告を求め,又は当該職員をして動物を飼養する場所その他関係ある場所(人の住居を除く。)に立ち入らせ,その飼養状況を調査させることができる」との規定があり、対象者や動物種などは限定されていません。(条例ではもちろん適正飼養がうたわれています。)

しかし、動物指導センターは、この第14条の規定は「運用で実験動物と畜産動物を除いている」とし、明文化されていない暗黙のルールによって、動くことを拒否したのです。

茨城県の畜産課は、外部の有識者を呼んで実際に現地を見てもらうことを予定しているそうですが、電話確認時点で未実施でした。動物指導センターは、畜産課から呼ばれれば行くと言うだけで、自ら指導することは拒絶でした。

結局、農林水産省が地方農政局生産部長等に対し、都道府県に指導させるよう通知を出していたことがわかりましたが、根拠法不明の、非常にイレギュラーな措置を求めたことになります。

虐待を行った従業員は、一切、処罰は受けていません。もちろん解雇もされていません。これまで長年続けてきたことが、一度指導で改善したからといって、それが維持されるとは、とても思えません。長期的に監視する仕組みの構築が必要です。

動物愛護法の恐ろしい欠陥! 一般人の飼育なら行政処分もありうるのに

畜産動物もしくは実験動物の劣悪飼育や虐待的扱いについてはどこが指導するのか? 役に立たない動物愛護法について、環境省にも問い合わせました。

恐ろしいことに、現在の動物愛護法には大きな欠陥があったのです。

第十条で畜産動物と実験動物を動物取扱業から適用除外する定めがありますが、そこに「以下この節から第四節までにおいて同じ。と書かれています。そのため、第四節である第二十五条(周辺の生活環境の保全等に係る措置)に定められた「虐待を受けるおそれ」がある事態に対する勧告や命令についても、畜産動物と実験動物は除外されていたのです。

こんなばかな話があるでしょうか。

劣悪飼育の一般人に対して勧告や命令が出せるのに、畜産業者や実験施設には出せないのです。こんな遅れた国が、先進国のようなふりをしているとは驚きです。

環境省によれば、動物愛護法第九条に基づいて自治体が条例を定めていた場合には、立入、指導等もできるとのことだったので、茨城県に対しては条例を根拠に指導を求めたわけです。

また、「虐待を受けるおそれ」ではなく、「虐待」であれば司法での取り扱いになるので、自治体は刑事告発等の対応を迫られることになるそうですが、これも期待ができないため、刑事告発は別途検討中です。

環境省回答~実験動物の飼養保管等基準の畜産動物の除外規定に関する見解

さらに恐ろしいことに、環境省が定める「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」には、畜産に関する適用除外規定があります。畜産目的であればすべての実験が適用除外となるのか? 以前からはっきりせず、問題になっていた争点でした。

この基準に違反したからといって、罰則もなにもなく、指導すら受けることがないような意味の薄い基準ですが、環境省に以下の質問をし、畜産センターで行われているような実験処置は基準の適用除外にはならないことを確認しました。

これにより、畜産の実験がすべて除外されるわけではないことが、ようやくはっきりしました!

以下、質問と回答全文です。(赤い下線はPEACEによる)

日本でも活動を開始したPETAアジアが、茨城県畜産センターの牛の取扱いが劣悪かつ暴力的であるとして告発する動画と記事を公表しました。
畜産センターは試験研究機関ですので、単なる畜産動物ではなく実験動物に当たると思います。研究内容は下記に公表されています。
https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/chikuse/kikaku/kenkyu/kenkyu.html

(1)こうした試験研究機関の劣悪飼育と暴力行為を是正させる指導・監督はどこが行うべきなのでしょうか? 茨城県の動物指導センターでしょうか、それとも家畜保健衛生所でしょうか。それとも農水省なのか、畜産や実験動物関連のどこかの団体が行ってくれるものなのか、環境省の見解をお聞きしたいです。

各都道府県に属する試験研究機関など都道府県の内部組織への指導は、都道府県からなされるものと承知していますので、動物の愛護及び管理に関する業務を担当する都道府県の部局と、畜産等に関する業務を担当する都道府県の部局で、必要に応じて連携を図って頂きたいと考えています。
なお、農林水産省は、指導・監督権限を有しておらず、都道府県内の公的機関に対する指導権限が都道府県にあることから、本事案と考えられる情報提供を受け、都道府県内の公的機関におけるアニマルウェルフェアに配慮した飼養管理の徹底について、都道府県が指導するように依頼する通知を発出しています。
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/attach/pdf/animal_welfare-7.pdf
(2)実験動物飼養保管等基準では、「畜産に関する飼養管理の教育若しくは試験研究又は畜産に関する育種改良を行うことを目的として実験動物の飼養又は保管をする管理者等」を適用除外しているかと思いますが、これはなぜなのでしょうか?
単なる素朴な交配しか行われていなかった時代の名残かとも思いますが、現在でもこの適用除外が続いている理由が知りたいです。
実験等の中には、動物をある程度拘束はしても、苦痛を伴う処置はほとんど行わないものがあるため、御指摘の適用除外を設けています。
ただし、御指摘の目的のために、血液の採取、人工繁殖や外科的な措置を行う場合、あるいは薬理学的な実験を行う場合などは、それらの産業動物は実験動物となり、その管理者等は実験動物飼養保管基準の適用を受けます。
(3)茨城県畜産センターの動物実験は全て適用除外に該当すると環境省ではお考えですか?
環境省では茨城県畜産センターでの動物の取扱いについて詳細を把握しておらず、個別施設に対する実験動物飼養保管基準の適用の是非は回答いたしかねます。
(4)環境省が行う「実験動物飼養施設における実験動物取扱状況調査」では自治体の畜産センター・畜産試験場等を対象に含める予定でしょうか?
自治体の畜産センター・畜産試験場等で、実験動物飼養保管基準が適用される動物の取扱いがある場合は調査対象に含まれますし、同基準が適用される動物の取扱いがなければ調査対象には含まれません。
同基準の適用範囲については、上述のとおりです。

実験動物飼養施設における実験動物取扱状況調査とは

質問(4)に書いた「実験動物飼養施設における実験動物取扱状況調査」とは、環境省がこの秋、全国の動物実験施設に対し行う予定のアンケート調査のことです。2019年の動物愛護法改正時に附則がつき、動物取扱業に含めるかどうかの検討を行うことになっており、そのための基礎的な情報を得る調査となっています。

茨城県の動物指導センターは、畜産センターに動物実験委員会があり、動物実験施設であることも知らなかったので、このアンケート調査を畜産センターにも回答させるよう、要望しました。畜産関連の研究機関が漏れる可能性があり、これから全国の自治体にも要請したいと考えています。

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実験用ラットイメージ写真

最後に

畜産試験場は、各自治体にありますが、特に設置の義務等はないそうです。畜産業は、地球温暖化対策としても、緊急に縮小すべき産業です。

また、EUでは、畜産動物を使った動物実験は、動物福祉を研究目的としたものが最も多くなっています。日本は虐待が放置されている状況で、なおかつ畜産推進ですから、実態も意識も、大幅に後れを取っていることは明らかです。

畜産動物への虐待をなくすためにビーガンになることはもちろん重要!ですが、ぜひ動物たちのために声を挙げてください。

意見を送ってください!

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追記

追記① 現代ビジネスが取り上げてくれました!

現代ビジネスがこのセンターについて記事を3本、公開しました。詳しくはこちらをご覧ください。

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追記② 茨城県に公開質問書を送りました!

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追記③ 動物愛護法違反で刑事告発しました

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〒310-8555 水戸市笠原町978番6
電話 :029-301-2133(総務部報道・広聴課 広聴・相談担当)

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参考:農林水産省通知全文

4 畜 産第 2932 号
令和5年3月 29 日

地方農政局生産部長
北海道農政事務所生産経営産業部長
内閣府沖縄総合事務局農林水産部長
独立行政法人家畜改良センター理事長       殿
国立研究開発法人
農業・食品産業技術総合研究機構理事長

(農林水産省)畜産局畜産振興課長

アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の徹底について

農林水産省では、都道府県※1 等の御協力の下、アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の普及を図っているところです。

このような中、今般、動物愛護団体から当省に対し、公的機関における家畜への虐待行為が疑われる事案について情報提供がありました。具体的には、「牛の除角の際に、牛の顔を足で踏んで保定する」、「木の棒で牛の乳房を突いて誘導する」、「泥濘化した排せつ物の上で牛を飼育する」、「炎天下の中で日陰を用意せずに牛を飼育する」等の不適切な家畜の飼養管理が行われていることを示す資料が提供されました。このような行為が、畜産事業者に対し、アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の模範を示すことが求められる都道府県等の公的機関の家畜飼養管理施設において行われていたことが事実であれば、非常に残念であり、速やかに改善していただく必要があります。

ついては、貴局管内の都道府県に対し、都道府県内の公的機関においてアニマルウェルフェアに配慮した飼養管理を改めて徹底するよう、関係者への指導を依頼願います。※2

※1 下線部は国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構理事長宛てには「貴機構」、独立行政法人家畜改良センター理事長宛てには「貴センター」と記載。
※2 下線部は国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構理事長及び独立行政法人家畜改良センター理事長宛てには「貴機構※ 1の職員等に対し、アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理を改めて徹底するよう指導をお願いします。」と記載。

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