2019年改正動物愛護法解説:附則に実験動物等の取扱いや動物実験の代替・削減の推進について検討すべきことが入りました!

2019年動物愛護法改正解説

附則:実験動物の取扱いのあり方、両生類の業規制のあり方、愛護動物の範囲、動物実験の代替・削減等について検討の規定が入りました!

 ※全て新規条文

附則

(検討)
第八条 国は、動物を取り扱う学校、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供する動物を取り扱う者等による動物の飼養又は保管の状況を勘案し、これらの者を動物取扱業者(第一条による改正後の法第十条第一項に規定する第一種動物取扱業者及び第一条による改正後の法第二十四条の二に規定する第二種動物取扱業者をいう。第三項において同じ。)に追加することその他これらの者による適正な動物の飼養又は保管のための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

2 国は、両生類の販売、展示等の業務の実態等を勘案し、両生類を取り扱う事業に関する規制の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

3 前二項に定めるもののほか、国は、動物取扱業者による動物の飼養又は保管の状況を勘案し、動物取扱業者についての規制の在り方全般について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

第九条 国は、多数の動物の飼養又は保管が行われている場合におけるその状況を勘案し、周辺の生活環境の保全等に係る措置の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

2 国は、愛護動物(第一条による改正後の法第四十四条第四項に規定する愛護動物をいう。)の範囲について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

3 国は、動物が科学上の利用に供される場合における動物を供する方法に代わり得るものを利用すること、その利用に供される動物の数を少なくすること等による動物の適切な利用の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

第十条 国は、マイクロチップの装着を義務付ける対象及び登録を受けることを義務付ける対象の拡大並びにマイクロチップが装着されている犬及び猫であってその所有者が判明しないものの所有権の扱いについて検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

第十一条 前三条に定めるもののほか、政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後の動物の愛護及び管理に関する法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

3団体では、業の目的で多数の動物を飼養管理している点で他の業種と違いはないという観点から、現在の動物取扱業規制における適用除外をなくし、実験動物と畜産動物も動物取扱業に含めることを強く要望してきました。(実験動物については、こちらの要望書もご参照ください。)

人間が意図的に心身に危害を加えることが前提となっている実験動物や、経済効率優先のために虐待的な飼育が恒常化している畜産動物にとって、最低限の福祉を担保させるための法的枠組みが国際的な流れからも必要ですが、超党派の議連が、もともとは犬猫殺処分問題に関心のある議員の集まりであったこともあってか、十分な検討時間がとられなかったことが本当に悔やまれます。2018年末に公表された骨子案の段階で既に、別紙の検討事項に回されてしまいました。

3団体として、骨子案に格上げをしてほしいとロビーを重ねましたが、かなわず、最終的には附則の中に検討事項として残されることになりました。しかし、「施行後3年を目途として」との文言が削られ、さらに与党の農林水産族議員からの圧力で畜産動物が削られ、実験動物と学校で扱われる動物だけがかろうじて残るという結果になりました。

皆さんにアクションをお願いしてきた重要事項について力及ばず、非常に申し訳なく、また悔しいところですが、次の改正へ向けスタートを切らなければなりません。前回の法改正時には、附則に犬猫生後8週齢規制に係る調査検討の規定が入ったことで、環境省は多額の国家予算を投下し、調査研究を行いました。附則に入ったことで、一定の効果は見込めるはずです。

さらに、私たちとしては、観賞魚も含めた脊椎動物すべてを業規制および動物虐待罪の対象種(愛護動物)に入れてほしいということを当初、要望したのですが、魚類については全く理解が得られず、途中から両生類に絞って対象種拡大を要望してきました。

業界団体も両生類について第一種動物取扱業への追加を要望していましたし、対象種拡大については、1999年の最初の改正時の附帯決議にも既に書き込まれていたことです。当時以上に珍しいカエルやイモリなどの「ペット」としての販売は拡大しており、また国内で野生捕獲されたサンショウウオがネットオークションで売られて問題になるなどもしています。改正するための理由は十分にあると思われましたが、結果としては、今後の検討課題として附則に残される形となりました。

さらに附則の検討課題に含まれているのは動物取扱業についてですが、附則の条文で第一種だけに限定されていないのは、第二種の規制強化をどうするかという課題が残っているためだと思われます。実験動物についても、第二種に入れるのはどうかという検討がなされた時期もありました。改正法施行後、どこまで動物取扱業者の適正化が図られるのか、まだ未知数ですが、引き続き動物取扱業については、検討課題との認識は共有されています。

ほかにマイクロチップについては、今回の改正では犬猫の販売時の義務にとどめることができましたが、この義務化の対象をさらに拡大することも附則に検討として入ってしまっています。

また、ここまでの項目は、特に検討を加える年限は決まっていませんが、最後に法律全体について、今回の改正でも、施行後5年の見直し規定が盛り込まれました。

5年後に向けて、改正が必要である理由について事実関係を積み上げ、よりよい法律になるよう、さらに求めていきましょう。

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2019年の動物愛護法改正のロビーの中で、実験動物の扱いについて危機感を感じ、超党派議連のPTに改めて要望書を提出しました。[sitecard subtitle=関連記事 url=https://animals-peace.net/[…]

追記:動物愛護管理推進基本指針では?

法改正翌年の2020年に改訂された動物愛護管理推進基本指針(動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針)では、実験動物について、以下のように記載されました。赤字部分に不測の内容が反映されています。

動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針

(6) 実験動物の適正な取扱いの推進
①現状と課題
実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成 18 年4月環境省告示第 88 号。以下「実験動物の飼養保管等基準」という。)は、平成 25 にその基準の内容を改正し、遵守状況の点検、その結果の公表及び可能な限りの外部機関等による検証の実施について位置づけを行っている。平成 29 年には実験動物飼養保管等基準解説書研究会による「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説」を作成し、関係機関等に周知を行ってきた。
動物を科学上の利用に供することは、生命科学の進展、医療技術等の開発等のために必要不可欠なものであるが、その飼養及び科学上の利用に当たっては、動物が命あるものであることに鑑み、科学上の利用の目的を達することができる範囲において、国際的にも普及し、定着している実験動物の取扱いの基本的考え方である「3Rの原則」(代替法の活用:Replacement、使用数の削減:Reduction苦痛の軽減:Refinementを踏まえた適切な措置を講じること等が必要とされている。

②講ずべき施策
関係省庁、団体等と連携しながら、実験動物を取り扱う関係機関及び関係者に対し、「3Rの原則」、実験動物の飼養保管等基準の周知の推進や遵守の徹底を進めるとともに、当該基準の遵守状況について、定期的な実態把握を行い、適切な方法により公表すること。
令和元年改正法の附則において、実験動物を取り扱う者等による実験動物の飼養保管状況を勘案し、これらの者を動物取扱業者に追加することその他これらの者による適正な動物の飼養保管のための施策の在り方について検討を加えること、また代替法の活用、使用数の削減等による動物の適正な利用の在り方について検討を加えることが規定されたことから、関係省庁と連携し、現行の機関管理体制(自主管理体制)の仕組みについてレビューを行い、その結果を踏まえて、必要な検討を行うこと。

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2019年改正 動物愛護管理法 2020年 2021年 施行

2019年改正法の概要 目次

● 動物の所有者等が遵守すべき責務規定を明確化

● 第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等

参考:2019年改正動物愛護法に入らなかったこと<動物取扱業>

● 第二種動物取扱業に帳簿の備付け義務

● 動物の適正飼養のための規制の強化

● 特定動物(危険動物)に関する規制の強化

● 動物虐待に対する罰則の引き上げ

● 都道府県等の措置等の拡充

● マイクロチップの装着等

● その他

● 附則

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