<アメリカ>ミシガン州の研究施設で輸入ザルのうち少なくとも3頭が結核陽性

今年6月、アメリカ・ミシガン州のの研究施設で少なくとも3頭のサルが結核陽性となり、人々の健康や科学研究を脅かしているとの報道があった。(”Infected monkeys at Michigan research lab threaten health and science” MLive、2023年6月21日)

mlive

Animal rights advocates have questioned the accuracy of TB t…

研究所はノーザン・バイオメディカル・リサーチで、感染ザルはモーリシャスから輸入されたサルだった。 なんと、その研究所の2名(人間!)も結核検査で陽性だったという。一般人口でも4%は陽性なので、サルからの感染かはわからないとはされているが、南ミシガンはそんなに結核感染が広まっているのだろうか。同社は取材にはノーコメントとのことだった。

これはPETAがミシガン州農業農村開発局 (MDARD) に対して行った開示請求により判明したもので、ノーザン・バイオメディカル・リサーチは2020年には483頭の非ヒト霊長類を飼育したと報告されているとのこと。

問題は、感染したサルがミシガン州に到着する前に、米国疾病予防管理センター(CDC)の隔離検疫をクリアしていることだ。現在利用可能な皮膚検査や血液検査では潜在性結核の検出には不十分な可能性があり、感染が検出されない可能性があるとのコメントが載っている。

PETAは、CDCが動物実験用に使用する霊長類の輸入を一時停止すること、および/または輸入霊長類のスクリーニング要件を改訂することを要望しているとのこと。

PETA

PETA has uncovered documents revealing that stressed-out mon…

ちなみに、アメリカでは、議会の諮問を受けた会計検査院(GOA)による最近の監査で、特定の輸入野生生物種を規制するCDCの現在のアプローチではパンデミックを防ぐのに十分ではない可能性があると指摘されている。

日本でも霊長類の結核検査について問題が起きている

日本はモーリシャスからの輸入は行っていないが、霊長類の結核検査で問題が起きており、今年5月に開催された第70回日本実験動物学会でも取りざたされていた。

従来、サル類の結核のスクリーニングに使われていたKMバイオロジクス株式会社の動物用ツベルクリン(ヒト型結核菌とウシ型結核菌由来のオールドツベルクリン(MOT))の製造が終了したのだそうだ。

WOAH(旧OIE、国際獣疫事務局)では、畜産動物について、MOTではなく精製ツベルクリン(PPD)でやりなさいとなっており、日本もそれに対応することになったが、PPDは日本では未発売と言っていた。サルでは従来、PPDよりMOTの反応性が高いということで、MOTが使われてきたが、そのことは特に考慮されず終売になったとのこと。その代替となる検査法は何が最適かといったことが議論されていた。

そのためにまた新たに動物実験が行われているのが腹立たしいのだが、ヒト用のツベルクリンは、サルでは作用しないといったことなどが報告されていた。感覚としてはサルでは使えないことはわかっていたそうだが。

この問題が取り上げられたシンポジウムでは、日本には野生のサルは来ていないとか、モーリシャスのサルは繁殖とか言っていたが、ここのところ海外での幾つもの事件で発覚してきたのは、表向きはそう言っていて実は違っていたという問題だ。(密猟されたサルが直接密輸される場合と、母群の供給に違法取引個体が補充される問題と両方があるのではないかと思われる)

絶滅危惧種でもある野生のサルの捕獲・消費を動物実験が推し進めてきたのは間違いなく事実なのに、そのことに対する問題意識がほとんど持たれていないように感じた。

検査法はもちろん大事だが、そもそも野生動物を輸入して消費し続けることへの反省や方向転換のための取り組みが全く見えてこないことは全く残念だ。

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