Netflixドキュメンタリー『キング・オブ・クローン』 捏造研究者は倫理観なき世界で今なおクローンを作り続ける

ABEMA TIMESに「『私はクローン犬です。永遠に一緒にいれます』中国ペット市場8兆円の光と影」との記事が出た(2023年8月18日)。

中国では2019年に「ペット」のクローンが実用化され、「実は既に珍しいことではなく、お金さえ払えばクローン犬・猫を飼うことが可能で、少なくとも500匹以上誕生している」のだという。価格は2019年当時500万円以上したが、現在は犬種によっては200万円代から可能だそうだ。

価格が下がってきたとはいえ、金にあかせた、命の生産工場だ。

代理母としてクローン犬を出産させるための犬や、着床させるための卵子採取のための犬も相当な数になっていると考えられるが、どのような生涯を送るのか。2009年時点では、クローン1匹あたり卵子提供犬と代理母犬12匹が必要だとされていた。今は何匹使われているのだろうか。韓国では犬肉に回される疑惑も出ていたが、中国ではどうなのか。

かけがえのない「はず」だった愛犬を失った人間が「コピー」を求める、そのエゴの陰で多数の犬が苦しめられている。

その一方で、殺処分されたり、放浪して野垂れ死んだり、劣悪飼育の末に死んだり、犬肉にされたりする犬たちを、クローン犬に大金を払う人々はどう考えているのだろうか。お金と愛情を向ける先が間違っているように感じてならない。

Netflixドキュメンタリー『キング・オブ・クローン』

実は、幹細胞研究で大捏造事件を起こした韓国の獣医師ファン・ウソク(黄禹錫)の今を追ったドキュメンタリー、Netflix『キング・オブ・クローン』に、一瞬だけクローン犬生産の現場が映った。あの犬たちは外を散歩することはあるのだろうか。

サークル式だが、ケージと大差ないような狭い区画しか与えられていなかった。清潔なだけのパピーミルだろう。

世界を揺るがせた画期的なヒトのクローン研究から、スキャンダルによる失脚まで。悪名高い韓国の科学者に焦点をあてた、思わず引…

『キング・オブ・クローン』では、ファン・ウソクは金持ちの死んだ犬のクローンをつくるだけではなく、アラブ首長国連邦で競走用や品評会用のラクダのクローンを作っていた。

彼は現在も人間のエゴや欲望丸出しの世界で生きている。

特に、品評会で最も美しいとされたラクダのクローンが12頭もつくられていたことは印象に残った。皆同じようなラクダだが、元となったラクダと同じように美しいだろうか。正直、何かが減じているように感じた。希少性こそが「最も美しい」という感覚を作っていたのではないだろうか。クローンを作って何がありがたいのだろう?

愛犬を失った医者がクローン犬を手に入れるエピソードもあったが、その犬のクローンのうち1匹が誕生後すぐ死んだことに医師は心を痛めないのだろうか。

何も知らない無邪気なクローン犬がとても哀れに思えた。かけがえのない1匹として愛されるのではなく、別の犬のクローンというところにしか価値を置かれない生涯をこの犬は過ごすのだ。

そして、このクローン犬もいつかは死ぬが、医者はまたクローンを作ることを繰り返すのだろうか。なんとむなしい人生だろうか。

最後はファン・ウソクに言いたいことを言わせて終わるドキュメンタリーだったが、その様子は、どこかホラー味を帯びていた。

このドキュメンタリーが、クローンを作ることを正当化するファン・ウソクの言い分を支持する立場で作られたのかどうかは、正直、よくわからなかった。科学の醜悪な側面が続いていることを淡々と事実として見せていたようにも思うし(ただし、問題点についてはあまり深堀りはされていない)、単に、一度は評価が地に落ちた人間にも拾う神がいると言いたかったのかもしれない。

ちなみに、ファン・ウソクの世界初のクローン犬がどのように生み出されたかについては、過去記事を参考にしてほしい。

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2005年4月に生まれた世界初のクローン犬「スナッピー」が昨年5月に死亡していたとの報道が先日ありました。10歳です。 World’s first cloned dog dies at 10 韓国中央日報 2016年3月15日[…]

また、ファン・ウソクの研究について内部告発を行った研究者がいたが、その研究者の娘の洗礼時にファン・ウソクがゴッドファーザー(名付け親)になったというエピソードがこのドキュメンタリーで語られる部分は嘘だとコリアタイムスが報じた。 事件の告発者の苦悩は続いている。

koreatimes

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