旭川医科大学で遺伝子組み換えマウス1匹が行方不明に! 質問書を送りました

4月1日、旭川医科大学がウェブサイト上で「遺伝子組換え動物の所在不明について」という文書を公表しました。

驚いたことに、遺伝子組み換えマウスが1匹いなくなっており、見つけることができていないというのです。掲載されている「遺伝子組換え動物の所在不明に係る報告書」によれば、人為的な持出の可能性も排除できず、 1 17 警察被害を届け出たとも書かれています。

驚愕です。

マウスがいなくなった動物実験施設 Asahidake 通称「A 」)は、2018年度に新しく増築されたばかりの施設ですが、監視カメラや入退館記録のデータログが残る仕組みはなかったそうです。

廃棄するき(ケージ内に入れる床材)と一緒に捨ててしまうパターンが一番ありそうに思いますが、使用済みケージのエリアでも見つけられていないようです。

実験動物がいなくなるなんて、そんなことがあるのでしょうか?

旭川医大の動物実験施設で何が起きている?

実は旭川医科大学の動物実験施設については、ユーザーである研究室側から感染症疑い多発等について苦情が出ているとの情報があり、事実確認のため、PEACEでは昨年10月に情報開示請求を行っていました。端的に、劣悪飼育が心配だったからです。

しかし、動物実験施設での動物の飼育に関し学内から出たクレーム・要望等に関する記録及び動物実験委員会議事録については、開示が延長となっており、現在でもまだ入手できていません。なるべく早く入手したかったので、動物実験計画書を含めなかったのですが、この遅さです。

一部、感染症発生に関する記録として、微生物モニタリングの結果(すべての項目で感染は検出されていない)とマウス1匹の検査結果(黄色ブドウ球菌による包皮腺膿瘍等の所見)だけが開示されている状況です。

ですので、何が起きているのか、ほとんど確認ができていない状況ではあるのですが、まさか、また感染症疑いのマウスが発生したので隠すために淘汰したが言い出せないなどの状況が起きていないか?等は心配です。

質問書を送付しました

旭川医科大学は、病院長の解任(現在は復帰)や学長の辞任をめぐる解任騒動など、報道を見ているだけでも、内部がどうなっているのか疑問に思う状況です。

学内ガバナンスの問題と動物施設の問題が関係があるのかどうか、何もわからない状況ですし、もし関係があってもそうしたことには一切関与しない立場であることは明確にしたいところですが、動物の飼育管理に懸念が示されているのは気がかりですので、PEACEでは4月8日付けで質問書を送りました。

文部科学省の動物実験基本指針では、動物実験等の実施に関する最終的な責任を有するのは、機関の長とされています。旭川医科大学では、4月1日から新しい学長が就任していますので、西川祐司新学長あてに質問書を送りました。

遺伝子組み換えマウスの所在不明には驚きましたので、質問内容を先に公表したいと思います。以下に掲載します。真摯なご回答をお待ちしております。

注:質問内容については、事実確認できているわけではなく、あくまで回答を求めている段階ですので、誤解のないようにお願いいたします。

以下、写真閲覧注意

質問書:動物実験施設での動物の飼養管理について

 主に動物実験施設Asahidake(以下A棟とする)での実験動物の飼養管理等について、以下の通り質問いたします。私どもは、動物福祉上の懸念を持っておりますが、貴学で行われる研究の科学的信頼性についても関わる問題と考えております。ご回答のほど、よろしくお願い申し上げます。

質問事項

1.公文書開示請求により既にお送りいただいた分の文書の中に、2021年3月11日付けで公益財団法人実験動物中央研究所ICLASモニタリングセンターへ検査依頼が行われたマウス検体に関する病理学的検査結果が含まれていました。これに関し、以下の点について教えてください。

(ア)このマウスはA棟のSPFエリアで飼育されていたマウスで間違いないでしょうか。

(イ)このマウスは、通常の微生物モニタリングの過程で検査に至ったのか、それとも利用者からの検査の求めがあったのか、検査依頼に至る状況を教えてください。目視で異常がわかる状態であったのか、そうしたマウスが複数いたうちの1匹であるのか、また外傷があったのかどうか、なども、わかれば教えてください。

(ウ)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は常在菌であり、C57BL/6マウスでは包皮腺膿瘍が知られているところではあるかと思いますが、この検査結果が出たことに対し、貴学ではどのような対処を行ったのか教えてください。

(エ)マウスの解剖写真が非開示(墨塗り)となっていました。なぜ非開示とするのか、理由を教えてください。

2.A棟で飼養管理されているマウスについて、複数の感染症が発生している疑いなどが取りざたされていると受け止めております。これに関し、以下の点について教えてください。

(ア)以下の写真は、A棟で飼養されていたマウスのものでしょうか。異なる場合、どこで飼育されていたマウスか教えてください。貴学の動物実験施設管理者が、マウスにこうした症状が多発しているという指摘について承知しているかどうかを教えてください。

(イ)これらのマウスが貴学の動物実験施設のマウスである場合、侵襲性の高い何らかの実験に使われたマウスではなく、単に飼育のみが行われたマウスだったのかどうかを確認したいと考えております。貴学として、これらのマウスの飼養の履歴をどのようなものと把握されていますか。

(ウ)実験処置が行われていない前提でとなりますが、リンパ節が腫れており、ほぼ感染症が疑われる状況かと思います。また、動物実験施設管理経験者より、画像のみで断定できるものではなく、経験的に強く類推するのみではあるが、どれもこんなにひどくなるのは見たことがない、飼育条件ないし微生物学的環境は最悪かつ劣悪と判定するのが妥当と思われますとのコメントも得ております。これらの写真が貴学で飼養保管されていたマウスのものである場合、貴学ではA棟の飼養状況についてどのように判断され、またそれに対し、どのような対処をとられたのか、教えてください。

(エ)現時点でのA棟の動物の飼養管理状況は適正であると貴学ではお考えでしょうか。そう考える客観的な根拠をお示しください。日本の動物実験施設の問題点として、自主管理体制であるために、公的な査察等が存在せず、内部関係者が適正を主張するのみで、信頼性に乏しい問題があると認識しております。

(オ)今後開示される残りの公文書に関して、もしこれらの写真が含まれている場合、開示をしていただけますか。

3.本年4月1日、貴学は、遺伝子組換えマウスがA棟で1匹所在不明になっていることを公表しています。このことに関連して、以下の点について教えてください。

(ア)遺伝子組換えマウスの所在がわからないことは、カルタヘナ法上ももちろん問題ですが、動物福祉上も重大な問題です。死んでいる場合は、どのような状況で死んだのかがわかりませんし、生きているのであれば、現状どうしているのかが心配です。報告書及びウェブサイト公表の「遺伝子組換え動物の所在不明について」では、その視点を欠いていますが、貴学として、動物福祉上の問題についてどのようにお考えでしょうか。

(イ)これまで特にA棟に関し、以下のような問題点が指摘されてきたのではないかという疑念を持っております。これらの点についても、調査を行った上での、4月1日の公表だったのでしょうか。

・遺伝子組換え動物数を記録上改ざん
・遺伝子組換え動物の性別を記録上改ざん
・ユーザー(研究者)の許可なく遺伝子組換え動物を交配
・ユーザー(研究者)の許可なく遺伝子組換え動物を処分
・遺伝子組換え動物の処分日が不明
・遺伝子組換え動物の死因が不明確・不審
・遺伝子組換え動物の誕生日が不明

4.文部科学省の「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」の定めにより、毎年「動物実験に関する自己点検・評価報告書」が公表されています。しかしながら、貴学のみならず全国的に、都合の悪いことやネガティブな報告を書かない運用が行われているのが実態です。それでは自己点検の意味がありません。

諸外国と異なり、日本では動物実験に関して法的に定められた具体的な管理制度や査察、罰則などが存在しない中、いわゆる自主管理体制がとられています。であるならば厳しい自己点検が求められるはずですが、実態は異なります。それは、「動物実験に関する自己点検・評価報告書」を見れば明らかです。

身内への忖度や問題の隠ぺいができてしまう状態が長年放置されており、また、日本で第三者評価と呼ばれているものも、貴学で起きているような問題に対処できているとは思えません。

学内でどのように問題に向き合っているのかが外部から見えないことは問題であり、制度や科学への信頼を損ねます。学内で起きている動物実験にかかわる問題について、きちんと自己点検し、評価報告書にも記載するべきと考えますが、昨年度(令和3年度)分からご対応いただけますか。

5.2018(平成30)年度から2020(令和2)年度にかけて動物実験施設が新しくなっているにもかかわらず、2013(平成25)年11月18日付けの「動物実験に関する相互検証プログラム」の受検結果を公表していることに意味があるとお考えですか。

以上、ご回答のほど、よろしくお願い申し上げます。

なお、ご回答後、もしくは公文書開示が完了したのちに、再度ご質問をさせていただく可能性がございます。

回答期限

誠に勝手ながら、回答は文書にて2022年5月11日(水)までにお願いいたします。

補足

補足情報をこちらに掲載しました。

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