令和3年度(2021年度)統計では動物虐待事件の検挙数が大幅増加。法改正の効果が出ている

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令和3年(2021年)度の動物虐待事件の検挙数が警察庁から公表されました。

動物虐待事犯の検挙事件数は、近年増加傾向にあった170事件で前年から大幅に増加」となっており、過去10年間の推移グラフ(上記)もはっきりとした増加傾向を示しています。

これは明らかに、動物愛護法改正により動物虐待の罰則が強化されたことが影響しています。施行は令和2年(2020年)6月1日でした。

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2019年動物愛護法改正解説

この検挙数の増加について、警察庁長官は会見で、罰則強化により市民の意識が向上し、それが通報につながっているという見解を示していますが(下記参照)、それだけではなく、最高刑が懲役5年となったことで警察側の意識も向上し、受理等が進むようになり、その結果が数値にあらわれてきたのだと思います。

多頭飼育崩壊での立件が行われるようになってきているのも、近年の変化です。長官が会見で、多頭飼育崩壊についてふれているのは注目でした。

最終的に量刑が軽いことが問題ですが、司法判断を変えていくにも、立件される事件を地道にふやしていく作業は必要なのだと思います。以前は、警察の受理の段階でふるい落とされていたのですから、目立つ事件だけが量刑の相場をつくってきたのは明らかです。

報道によれば、内訳は「遺棄」が81件と最も多く、劣悪な環境で飼育するなどの「虐待」が48件「殺傷」が41件とのこと。動物別では猫が95件犬が60件馬やうさぎの被害もありました。
(「動物虐待の検挙件数が過去最多 社会的な関心高まり通報増えたか」日テレNEWS 2022年4月7日)

国家公安委員会委員長記者会見要旨より抜粋

令和4年4月7日

  長官にお尋ねします。今の生活経済事犯の関係ですが、動物虐待事犯の検挙が人員、件数とも過去最多を更新しているところで、非常に深刻かと思いますが、動物虐待の現状への受け止め、警察としての取組、対応について、お考えをお願いします。

 (長官)ただ今お尋ねのございましたとおり、昨年中、警察におきましては、動物虐待事犯に関し、170事件、199人を検挙いたしておりまして、動物虐待の統計を取り始めた平成22年以降では過去最多となっているところでございます
この増加につきましては、一因として、令和2年6月に動物愛護管理法の改正法が施行されまして、動物虐待の罰則が強化されました。そういったことを背景といたしまして、国民の皆様の間で動物愛護に対する関心が高まりをみせ、それが警察への通報につながったということもあるのではないかと考えているところでございます。
警察としては、いわゆる多頭飼育の崩壊といった事案に対しましては、自治体の所管部門との連携を一層強化いたしますとともに、こうした悪質な動物虐待事犯というのは更なる凶悪事件の予兆ともなり得ることを念頭に、然るべき捜査をしっかりと行って、適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。

ちなみに、令和3年の報告で主な事例として取り上げられていたのは、以下の事件です。

取り上げられていた主な事例

空気銃を使用した猫の殺傷に係る動物愛護管理法違反事件
倉庫作業員(49)は、平成30年11月頃から令和2年12月までの間、駐車場等において、猫に向けて空気銃を発射して弾丸を命中させ、猫6匹を殺傷した。
令和3年6月、動物愛護管理法違反(愛護動物の殺傷)等で検挙した(千葉)。


天然記念物「奈良のシカ」を殺傷した文化財保護法違反事件
鳶工(23)は、令和3年2月、路上において、天然記念物である「奈良のシカ」に対し、斧様のもので傷害を負わせ、死に至らしめた。
同年3月、文化財保護法違反(史跡名勝天然記念物の滅失)で検挙した(奈良)。


希少動物の骨格標本の密輸入に係る外国為替および外国貿易法違反等事件

会社役員(57)らは、令和2年2月、アメリカ合衆国において、ワシントン条約で規制されたアメリカアリゲーターの骨格標本を隠し入れた国際宅配荷物を発送し、経済産業大臣の承認を受けないで輸入するなどした。
令和3年12月までに、2人・2法人を外国為替及び外国貿易法違反(無承認輸入)等で検挙した(警視庁)。

また、令和3年から、鳥獣保護関係事犯の統計が消えてしまいました。鳥獣保護法違反、種の保存法違反、動物愛護法違反など動物・鳥獣関係事犯の総計は、横ばいの状況です。

追記

ちなみに、前年の令和2年は、動物虐待の検挙件数は前年比横ばいと報じられていました。

取り上げられていた主な事例

犬の多頭飼育崩壊に係る動物愛護管理法違反事件
派遣社員(55)は、自身が管理する建物において、令和2年6月、犬の排泄物が堆積した状態で犬 67 匹を飼養する虐待を行った。
同月、同人を動物愛護管理法違反(愛護動物の虐待)で逮捕した(兵庫)。

コツメカワウソの密輸入に係る外国為替及び外国貿易法違反等事件
会社経営の男(52)らは、コツメカワウソを不正に輸入しようと企て、平成 30 年6月、生きているコツメカワウソ3頭をボストンバッグに隠匿して経済産業大臣の承認及び税関長の許可を受けることなくタイ王国から輸入するなどした。
2年5月までに、4人を外国為替及び外国貿易法違反(無承認輸入)等で逮捕した(警視庁)。

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続く令和4年(2022年)についてはこちら

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