令和3年(2021年)度の動物虐待事件の検挙数が警察庁から公表されました。
「動物虐待事犯の検挙事件数は、近年増加傾向にあったが、170事件で前年から大幅に増加」となっており、過去10年間の推移グラフ(上記)もはっきりとした増加傾向を示しています。
これは明らかに、動物愛護法改正により動物虐待の罰則が強化されたことが影響しています。施行は令和2年(2020年)6月1日でした。
罰則(第四十四条~): 動物殺傷罪の上限が懲役5年又は500万円以下の罰金に上がるなどしました ※下線が改正部分。 第六章 罰則 第四十四条 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の[…]
この検挙数の増加について、警察庁長官は会見で、罰則強化により市民の意識が向上し、それが通報につながっているという見解を示していますが(下記参照)、それだけではなく、最高刑が懲役5年となったことで警察側の意識も向上し、受理等が進むようになり、その結果が数値にあらわれてきたのだと思います。
多頭飼育崩壊での立件が行われるようになってきているのも、近年の変化です。長官が会見で、多頭飼育崩壊についてふれているのは注目でした。
最終的に量刑が軽いことが問題ですが、司法判断を変えていくにも、立件される事件を地道にふやしていく作業は必要なのだと思います。以前は、警察の受理の段階でふるい落とされていたのですから、目立つ事件だけが量刑の相場をつくってきたのは明らかです。
(「動物虐待の検挙件数が過去最多 社会的な関心高まり通報増えたか」日テレNEWS 2022年4月7日)
国家公安委員会委員長記者会見要旨より抜粋
問 長官にお尋ねします。今の生活経済事犯の関係ですが、動物虐待事犯の検挙が人員、件数とも過去最多を更新しているところで、非常に深刻かと思いますが、動物虐待の現状への受け止め、警察としての取組、対応について、お考えをお願いします。
答 (長官)ただ今お尋ねのございましたとおり、昨年中、警察におきましては、動物虐待事犯に関し、170事件、199人を検挙いたしておりまして、動物虐待の統計を取り始めた平成22年以降では過去最多となっているところでございます
この増加につきましては、一因として、令和2年6月に動物愛護管理法の改正法が施行されまして、動物虐待の罰則が強化されました。そういったことを背景といたしまして、国民の皆様の間で動物愛護に対する関心が高まりをみせ、それが警察への通報につながったということもあるのではないかと考えているところでございます。
警察としては、いわゆる多頭飼育の崩壊といった事案に対しましては、自治体の所管部門との連携を一層強化いたしますとともに、こうした悪質な動物虐待事犯というのは更なる凶悪事件の予兆ともなり得ることを念頭に、然るべき捜査をしっかりと行って、適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。
ちなみに、令和3年度分から、鳥獣保護関係事犯の統計が消えてしまいました。鳥獣保護法違反、種の保存法違反、動物愛護法違反など動物・鳥獣関係事犯の総計は、横ばいの状況です。