経済産業省の動物実験代替技術の開発に期待がかかる~「近い将来動物実験を実施できなくなる可能性が高い」

経済産業省の事業の中間評価報告書が公開されている

先日、経済産業省のバイオ小委員会の報告書が出たことを、ご紹介しました。

関連記事

2月2日、経済産業省のバイオ小委員会(正式には、産業構造審議会 商務流通情報分科会 バイオ小委員会)が、日本のバイオ産業の競争力向上に向け、今後、経済産業省として取り組むべき施策を整理してまとめた報告書「バイオテクノロジーが拓く『第五次産業[…]

この文書の中で言及されている「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業」について、昨年6月、中間評価報告書が取りまとめられていたので、抜粋しながらご紹介したいと思います。

近い将来動物実験を実施できなくなる可能性が高い」

動物実験代替になる技術の開発について該当するのは下記の分野です。

動物と人で作用が違うことが創薬でネックになっていることが書かれており、さらに、動向として「近い将来動物実験を実施できなくなる可能性が高いとまで書かれていました。世界的な状況の認識として、間違っていないと思います!(※以下、赤字はPEACEによる)

<B.再生医療技術を応用した創薬支援基盤技術開発>

医薬品開発では、ヒト臨床試験(治験)で中止となる事例が多く、新薬上市の大きな障害となっている。この原因の1つとして、ヒト細胞や動物を用いた既存の前臨床試験がヒト体内を十分に反映していないことが指摘されている。ヒト細胞を用いた評価法(cell-based assay:細胞アッセイ)ではヒト体内の高次機能を評価できず、また、動物実験では種差による評価結果の違いが問題となる。

さらに、化粧品については、2013年にEUにおいて動物実験を用いて開発された製品の取引が完全禁止された。農薬や食品添加物等、その他の化学物質の安全性は、これまでもヒトによる治験を行うことができず、また、現在の世界の潮流を鑑みると、近い将来動物実験を実施できなくなる可能性が高い。本事業では、iPS細胞等の幹細胞由来の各種臓器細胞や株化細胞について、製造手法の異なる細胞の実用性を多段階に比較検証しつつ、臨床試験の前にヒトの生体内(臓器内)における安全性等を予測できる革新的な基盤システムを開発する。

プロジェクトの概要を書いた部分では、なんと動物愛護法のことにも言及されていました。(改正で入ったわけではなくて前からではありますが…)嬉しいです。できれば改正で義務にしたかったです。

これまでの再生医療分野における研究開発により、iPS細胞等の幹細胞から各種臓器の細胞に分化誘導するための技術や、これらの分化誘導した高品質な細胞を大量に調製する技術が確立されつつある。こうした分化誘導した各種細胞の利用方法として、ヒトへの移植だけではなく、創薬への応用への期待が高まっており、世界中で急速に研究が進んでいる。

例えば、アメリカではNIHの1機関であるNCATSにおいて、各種臓器の細胞をチップ上に配置し、各臓器細胞をマイクロ流路でつなぐことで、医薬候補品の安全性等の評価に使用するシステムの開発に着手している。さらに、世界経済フォーラムがEmerging Technologiesについてまとめた「The Top 10 Emerging Technologies」(2016年公表)では、Organs-on-chipsがトップ10にランクインするほど世界で注目が集まっている。欧州では2009年に化粧品用の動物実験が禁止され、2018年には世界規模の禁止を実現するための決議を採択している。我が国では、令和元年6月19日公布の動物愛護法の改正では、動物代替の推奨が明記されている。

一方、製薬企業における新薬開発においては、研究開発費の大半が臨床試験・治験のコストであるにもかかわらず、臨床試験・治験の段階で安全性や有効性を原因として、開発中止になる確率が80%近くにまでのぼっており、前臨床までの段階でヒト生体内での安全性等を正確に予測できるシステムが求められている。これまでヒト生体内での安全性等を予測するための手法として、培養細胞や動物を用いた評価手法があるが、例えば、複数種の細胞間・臓器間の相互作用を評価することが困難であるといった課題や、ヒトと動物では種差が大きいという課題があり、いずれの手法においてもヒト生体内における安全性等を正確に予測することは困難であった。

こうした背景から、本事業では、iPS細胞等の幹細胞由来の各種臓器細胞や株化細胞について、製造手法の異なる細胞の実用性を多段階に比較検証しつつ、臨床試験の前にヒトの生体内(臓器内)における安全性等を予測できる革新的な基盤システムを開発し、iPS細胞等の幹細胞の産業応用を促進し、ひいては、我が国の新薬開発を促進する。

現在の事業は、5年間の計画で動いています。

開始年度:平成29年度
終了年度:令和3年度
中間評価時期:令和元年度
終了時評価時期:令和4年度

全期間の総予算 31億3千3百万円

素晴らしい\(^o^)/

評価部分も、とても興味深く読みました。こういった技術がどのように期待されているか、生の声を感じます。例えばこんな感じです。

再生医療と遺伝子治療は、難病の根本的治療法として期待されており、安全性の高い安価な革新的新薬の創出に必須の基盤技術の開発を目指す本課題の成果は大変貴重なものである。本事業の戦略は研究開発から産業化までの課題が分析され、総合的かつ戦略的に進めている。特に、PMDAとの連携は必要不可欠であり、今後の連携に期待する。

一方、動物代替の新技術で得られた安全性・薬物動態の結果をもって、臨床試験を開始できるように規制当局と密に連携していただきたい。また、要素技術の開発だけでなく、関係省庁やその関連組織との連携を事業計画に組み込む必要がある。さらに、競争と協奏の視点で課題や目標設定を適切なタイミングで見直すことが重要である。

これに対し、A委員が絶賛しています。

動物実験を代替できる試験管内試験法を確立するために、cell on chipの作製に取り組んでおり、素晴らしい成果であると評価する。本事業の後半では、ヒト細胞(組織)チップが霊長類を用いるよりも、より高く臨床を反映するというエビデンス創りに取り組むのだと思いますが、もしそうなれば新薬開発の成功確率を上げ、研究開発費を大幅に削減できる日が到来するであろう。産官学を一つに統合した一大事業であり、経産省が主導して実施する必要があるのは自明のことであり、実際、多くの成果が挙がっていることは高評価に値すると思う。」
「厚労省も関与した事業であるとのことですが、このような動物を代替できるような新技術を用いて得られた安全性・薬物動態の結果で、臨床試験(ファースト・イン・ペイシャント)を開始できるように規制当局と密に連携しながら、事業を進めて下さい。」
日本でも希望が持てる動きがあり、とても期待します。
実用化により、動物の犠牲が減ることを心から願っています。
関連記事

2月2日、経済産業省のバイオ小委員会(正式には、産業構造審議会 商務流通情報分科会 バイオ小委員会)が、日本のバイオ産業の競争力向上に向け、今後、経済産業省として取り組むべき施策を整理してまとめた報告書「バイオテクノロジーが拓く『第五次産業[…]

アクションをお願いします

署名にご協力ください日本が最大の消費国 ジャコウネココーヒー「コピ・ルアク」の取り扱い中止を求めるアクション[sitecard subtitle=関連記事 url=https://animals-peace.net/action[…]

活動分野別コンテンツ

活動報告ブログ

最新情報をチェックしよう!
NO IMAGE

動物の搾取のない世界を目指して

PEACEの活動は、皆さまからのご寄付・年会費に支えられています。
安定した活動を継続するために、活動の趣旨にご賛同くださる皆さまからのご支援をお待ちしております。

CTR IMG