日本酸化ストレス学会の機関誌である”Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition”に掲載された香川大の研究者の以下の論文の撤回について、倫理指針に反したことが理由として挙げられていましたが、詳細が書かれていませんでした。
学会は回答不可とのことでしたが、動物を用いた研究論文が倫理的理由で撤回されていることは看過できません。
香川大学の動物実験委員会の責任もあるのではないかと思い、具体的にどういったところが問題で撤回となったのか、詳細を大学に対して問い合わせました。
動物実験については、実施機関が市民への説明責任を負っていると考えられますから、大学は回答する責任があると思います。
撤回論文:
Retraction: D-Psicose Inhibits Intestinal α-Glucosidase and Suppresses the Glycemic Response after Ingestion of Carbohydrates in Rats
Tatsuhiro Matsuo1), Ken Izumori1)
1) Faculty of Agriculture, Kagawa University
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcbn/45/2/45_09-36/_article
http://doi.org/10.3164/jcbn.09-36
Vol. 45 (2009) No. 2 P 202-206 (撤回は2014年)
その結果、「筆頭著者に確認した」として香川大学学術・地域連携推進室研究協力グループより回答があり、二重投稿が理由であることが判明しました。
返信
しかし、この回答では当会からの質問で初めて大学側が知ったかのように受け止められるのにもかかわらず、撤回根拠は大学のコンプライアンス・ガイドラインとあり、大学の関与があったかのように感じられ、矛盾があります。撤回理由は動物倫理的な理由とは異なりましたが、事実関係の確認と大学の調査・処分があったものか確認したところ、下記の回答がありました。
返信2
なお、香川大学コンプライアンス・ガイドラインは、教職員の行動規範を示したものであり、今回の二重投稿に関しては故意によるものではなく、著者自身が撤回したものであり、大学として今後も調査等を実施する予定はない。
しつこいですが、論文の執筆や投稿というものは筆者が自ら行うものです。故意によらずに二重投稿を行うという状況がよくわからなかったので、さらに詳細を聞きました。
返信3
なお、弊学のコンプライアンス・ガイドラインは、平成26年8月の文部科学省ガイドラインの改正を受け、平成27年3月に、二重投稿等についても研究者倫理に反する行為であることを追記している。
これでやっと状況が理解できました。
ジャーナルも、撤回理由についてある程度詳細を公表してほしいものです。動物の犠牲を伴っているのですから、掲載するにしても撤回するにしても、本来は説明責任を果たすべきだと思います。
ちなみに、二重投稿は内容を捏造したりする不正とは性質が異なるようには感じますが、業績の水増しにあたる上に、全員がやり始めたら論文の粗製乱造が起こり、知見はふえずに論文数だけが二倍三倍になると考えられますから、混乱を避けるためにも一定のルールを設けることはやはり重要です。
今回の二重投稿は心情的には理解できますが、そもそも学外者が見ないようなところへの公表のために動物が犠牲になっている現状もどうなのか?と根本的な疑問も感じます。科学に貢献するために動物実験が行われているのではなかったのでしょうか。