<バイオ小委員会報告書>経済産業省が取り組むべき施策として動物実験代替法を挙げる。代替肉も登場!

2月2日、経済産業省のバイオ小委員会(正式には、産業構造審議会 商務流通情報分科会 バイオ小委員会)が、日本のバイオ産業の競争力向上に向け、今後、経済産業省として取り組むべき施策を整理してまとめた報告書「バイオテクノロジーが拓く『第五次産業革命』」を公表しました。

動向の説明には、植物由来人工肉も登場!

まず驚いたのは、「背景」として現在のバイオテクノロジーの動向を説明した部分で、食糧分野での合成生物技術の活用事例として、植物由来タンパク質を使った人工肉の例が挙げられていることです。

元々、家畜を肥育するために大量の飼料や水が使われ、さらに、畜産に伴う温室効果ガス排出の懸念から植物由来タンパク質を使った人工肉の開発を着想し、 ビヨンド・ミート社やインポッシブル・フーズ社といったベンチャー企業が急成長した。例えば、インポッシブル・フーズ社は、植物由来タンパク質を使いながら肉の風味に限りなく近いことで人気であるが、この肉の風味を出すことができたのはまさに合成生物技術の成果である。インポッシブル・フーズ社は、遺伝子改変した酵母で生産した大豆由来のヘモグロビン類似物質(soy leghemoglobin)を混ぜることで肉の風味に限り無く近づけた人工肉の開発に成功した。バーガーキングが“Impossible Whopper”(図1-1-4)として発売したところ大好評を得て、一気に浸透が図られた。現在、米国では人工肉関連のバイオベンチャー企業が多数活動しており、植物由来の人工肉は米国人にとってありふれた食材の一つになりつつある。(同報告書7ページより)
最近の代替肉への関心の高まりも目を見張るものがありますが、経産省のバイオ戦略にも登場。驚きました。
人工肉への代替は、残念ながら「今後の具体的な取組」に具体的に明記されているわけではありませんが、ホワイトバイオ分野ではフードテックも今後クローズアップされる可能性はあるのではないかと思います。
もちろん、京都大学・近畿大学が開発中のゲノム編集したマダイの例なども挙げられており、この文書は全面的に賛同できる内容ではありません。しかし、これまで動物を苦しめ犠牲にする方向性ばかり華々しく取り上げられてきた国のバイオテクノロジー政策に転換が起きつつあることを感じました。

「健康・医療分野」の今後の具体的な取組として、動物実験代替法を挙げている!

また、重点的に対応すべき研究課題として挙げられている「健康・医療分野」では、動物実験を用いずに新薬の毒性等を明らかにすることを目指したMPS(Micro-Physiological System)事業について述べています。MPSは、「生体模倣システム」と訳されており、微小な環境で人体の機能を再現して薬物の動きを予測する方法として期待されている手法です。
しかも、位置づけとして、昨年、内閣官房 健康・医療戦略室が定めた「健康・医療戦略(令和2年3月27日閣議決定)」も挙げられています。
この戦略のもと、厚生労働省、文部科学省、経済産業省等によって定められた6つの統合プロジェクトのうち、経済産業省はバイオテクノロジーを活用した事業として、①次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業(医薬品プロジェクト)と③再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業(再生・細胞医療・遺伝子治療プロジェクト)を挙げており、この③について、真っ先に動物実験代替技術を挙げています。

上記③においては、再生医療技術を応用した革新的創薬支援基盤技術として、非臨床試験(動物実験)を用いずに新薬の毒性等を明らかにすることを目指したMPS(Micro-Physiological System)事業を実施している。令和元年度までに腸管循環型、腎細胞搭載型、血液脳関門型デバイスモデルを計5件確立した(図2-4-3)。(同報告書43ページより)

「今後の具体的な取組」でも、令和3年度の取組みとして「健康・医療分野」で6つ挙げられている事業のうち1つがMPS事業です。MPS事業は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)を通じて実施されています。
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そのほかにも、細胞を使わずに新たな生体反応系を実現する「セルフリー技術」など、in vitro関連技術への関心が高いように感じました。

バイオ実験の再現性の悪さにも言及

また、バイオ分野でのロボットによる自動化の必要性を挙げている部分では、バイオ分野で実験の再現性が悪いことについても言及されています。
バイオ分野の研究開発・製品開発においては、個体差の大きい“生物”を扱うことから、他の工学分野に比して、再現性の低さ、これに伴う研究の効率の低さ、感染等の危険性による弊害等の課題を抱えている。
科学者に対する実験の再現性に関する調査では、「深刻な問題がある」、「実験の再現に失敗したことがある」、「論文の実験記載が不十分」の回答がそれぞれ90%、70%、99%という結果がある(図2-1-1)。その一方で、バイオ分野の研究では、いくつか限られた実験手法の繰り返しが多く、限られた数種類の実験手法のみで9割以上の論文が執筆されているという指摘もある(図2-1-2)。(同報告書28ページより)
ここまでの再現性の悪さがあるにもかかわらず、多くの動物が犠牲になっていることに、憤りを感じざるを得ません。
失敗したデータの共有を積極的に行うなど、動物の犠牲を減らす方向性にも関心をもってほしいですが、そこまでの動機づけはこの報告書では感じられませんでした。
経済産業省は、より早く、より効率的に、よりコスト安で、研究開発が行われることに対しインセンティブがあると思われ、動物実験の代替も、その観点から予算が割かれているかと思います。倫理的な理由での取組みも、ぜひ期待したいところです。
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