人への有効性を実証するデータがないのに広告することは不当表示に該当
住宅のポストに動物実験の写真を堂々と使ったチラシが投函されていました。驚きます。
マウスとカイコの動物実験を大々的に根拠としていますが、人でどうだったかの科学的根拠が一切、書かれていません。(下記に述べるように素性の知れない実験ですが、それでも信じてしまう人がいるかもしれないので、成分名は塗りつぶしました)
裏面に発見や実験などの歴史について書かれた年表もありますが臨床試験や治験については載っておらず、人でのデータは存在しないのだろうと推測せざるを得ません。
人と動物の間には、薬剤等への反応に「種差」があり、「動物でこうだったから人間でもそうだ」となるわけではありません。動物実験を経てヒトの治験に至った候補物質の9割以上が、人では効果がなかったり、毒性があったり、思うように体内を動いたりせず、失敗します。
消費者庁の「いわゆる健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(平成28年6月30日)では、不実証広告(景品表示法第7条第2項)に該当する「表示された効果と提出資料によって実証された内容が適切に対応していないもの」の例に「商品の成分に関する試験データが提出されたが、マウスやラットによる動物実験データであって、ヒトへの有効性を実証するものではなかった。」が例示されています。
いわゆる、不当表示です。
当該チラシはこの例に合致するのではないか?と思いますので、景品表示法違反の疑いがある広告として現物を添付のうえ、消費者庁に通報しました。
消費者庁に受け付けてもらっていることは電話で確認していますが、結果については、個別には教えてもらえないので、通報したことのみご報告せざるを得ません。(結果がわかるものについては、結果を待ってから公表するようにしていますが、教えてもらえないので仕方ありません。)
ちなみに、このチラシに入っている会社名ではウェブサイトは見つけられません。購入用QRコードを読み取ると、社名も「特定商取引法に基づく表記」もないサイトに繋がります。
さすが動物実験だけが根拠で売る会社だなというのが率直な印象です。
(チラシには「東京大学特許」という文言などもでかでかと踊っており、効能表示についても疑義はあるかと思いますので、その他についても順次問い合わせます。)
マウスの実験は公表された研究成果なのだろうか?
チラシでは、マウスについて、どちらも「年齢80才」などと書いていますが、何をもって80才なのかと思います。実験用マウスの寿命はだいたい2年くらいですがヌードマウスは免疫不全であり、寿命は短いです。さらに老化を促進したマウスだそうですが、そこまでヨボヨボにも見えません。実験終了で殺した時点を80才として換算したグラフが載っていますが、こういうグラフの作り方も疑問です。数値もなんのことかさっぱりわかりませんが、効果がありすぎでビックリ。
マウスの「外観年齢」などという概念も、聞いたことがないですが、科学的に使われているものなのでしょうか。写真はぱっと見、右のマウスのほうがほっそりしていて、単に若いときの写真ではないかとも感じます。また、右は体を伸ばしているのでシワの状態が違うのかも?とも思ってしまいます。健康食品の宣伝では、人間の使用前・使用後写真も怪しいものがよくありますから、こういうよからぬ想像もしてしまいます。
論文として公表されているものにこの写真が使われているなら、(研究不正でない限り)本当なのでしょうが、検索してもわからず、きちんと公表されたものではないようです。同じチラシにカイコの実験が載っており、そちらは論文掲載誌まで書いてあるのに、マウスのほうは書いていないです。
ちなみにカイコの論文については、掲載された”Frontiers in Microbiology”誌を検索すると、捕食ジャーナル(ハゲタカジャーナル。論文の掲載料さえ払えば載る粗悪雑誌のこと)の疑いがあることが出てきます。チラシでは「権威ある雑誌」と書いてあるのですが。
マウスの実験は九州大学農学部と書いてあり、九州大学にも問い合わせ中です。年表によると研究は2018年だそうです。
追記
その後、九州大学から回答をいただきましたので、こちらに掲載しました。驚くべき展開です。
先日、動物実験しか根拠がなく、意味不明のグラフや、疑わしい比較写真などが使われている健康食品のチラシについてブログでご紹介しました。こんな怪しい内容でも見たら信じてしまう人がいるかもしれないので商品名は伏せましたが、乳酸菌の一種です。[…]
人への有効性を実証するデータがない広告は不当表示!食品やサプリメントなどの宣伝では、よく「動物で効果があった」というエピソードが使われることがあります。しかし、種差が存在するため、効能などの反応は動物と人間で同じではありません。[…]