既に日本でも朝日新聞が報じていますが、今年9月、アメリカの連邦動物福祉法を所管する農務省が、サルを用いた試験受託等を行う日本企業「新日本科学(SNBL)」の米国法人に対し動物福祉法違反の疑いで罰金などの処分を科すための行政審判手続きに入り、告発状が提出されていたことが判明しました。
- 朝日新聞:実験用サルを虐待した疑い 米農務省、日系企業を処分へ(2016年11月4日)
9月26日付けで行政法審判官あての告発状が受理されていたわけですが、この手続きは、法令への重大な違反があった場合や反復して違反が認められた場合に行われ、刑事事件を除けば、動物福祉法に基づく規制に違反した場合の行政の対応としては最も重いものです。
SNBL USA社は、これまで動物福祉法違反による民事制裁金を2回払ってきていますが、今回の告発状の提出は、それよりさらに段階が進められたということになります。
告発状には動物の取扱いについて何が公式に争点となってきたかがつまびらかに書かれていますので、今回、3名のボランティアの方にお願いし、全文を翻訳しました。
38頭のサルの死、そして動物への十分な獣医学的ケアが与えられていなかったことが告発の理由です。
長文ですが、日本企業「新日本科学」のアメリカ施設の管理がどのようなものか、告発の詳細がわかりますので、ぜひお読みください。動物の扱い方はもちろん、施設・設備についても問題が詳細に指摘されており、実験計画についても一部問題とされています。
追記:新日本科学の米国法人であるSNBL USA Ltd.は、この問題が起きた2年後の2018年、動物実験に関する部門を独立させる形で分社化し、その子会社(Altasciences Preclinical Seattle Inc.)をAlt[…]
ここに至るまでは、動物権利団体による内部告発映像の公開や、農務省への働きかけがありました。
PETAが公開している内部告発者によるSNBL内部の写真はこちらです。
■無法地帯、日本
アメリカの動物実験施設と動物福祉法についてはこちらに概略を載せていますが、日本には不適切な扱いが認められた場合に行政がどう対応するかといった詳細なフローチャートもありません。そもそも施設の登録制や査察、報告といった制度すらないのですから、あたりまえ。
いわば、日本は無法地帯です。
アメリカのしくみですら十分ではないのですが、そもそも問題が明らかになってこない無法状態であることをいいことに、「何も問題がないから法規制は必要ない」などと言っているのが日本の動物実験業界なのです。
この国では、動物たちは一体どういう扱いをされているのでしょうか?
■日本の新日本科学でも内部告発が……
2012年、日本でも新日本科学で虐待が行われていたとの内部告発が報じられています。ニュースサイトハンターの記事から、該当部分を引用してみると……
この殺処分にあたり、会社幹部が生きたビーグル犬の皮を剥いだり、いきなり首を切断するなどの行為が行われていたと告白。いまだに悲しそうな犬の目が浮かんでくると語り、取材を受けるかどうか直前まで迷ったと苦しい胸のうちを明かした。
事実なら明らかな動物虐待である。(太字は当会)
動物愛護法の動物虐待罪は実験動物を除外していませんから、事実であれば、本来、罰せられるべき内容でしょう。
もちろん時効の問題はありますが、密室の動物実験施設で行われていることがなかなか表沙汰にならない現実について、私たちの社会はもっと真剣に対策を考えなければなりません。
※追記:その後の確認で、告発のあった当時、鹿児島市の動物愛護行政が新日本科学に聞き取り調査を行っていたことがわかりました。虐待の事実は確認できず、終わってしまいました。(参照)
■問い合わせ先
アメリカでの告発内容を事実と認めるのか、新日本科学に見解を求めましょう。
新日本科学東京本社
〒104-0044 東京都中央区明石町8-1 聖路加タワー12階
電話: 03-5565-5001
ファックス: 03-5565-6160
メール:info@snbl.co.jp フォームはこちら
▼アメリカのSNBL告発映像
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