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麻痺性貝毒の動物実験代替について、まだ時間がかかる? 厚生労働省からの回答

ホタテなどの二枚貝が毒を持つことがあることをご存じでしょうか。その毒は「貝毒」と呼ばれ、発生状況はモニタリングされており、貝が市場に出る前に検査が行われています。

貝毒にはいくつかの種類がありますが、日本で食品安全の面から規制の対象となっている貝毒には、下痢性貝毒麻痺性貝毒の2種類があります。そのうち下痢性貝毒については、マウスを使う動物実験をしなくてよくなっています

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日本でもすでに2015年に、厚生労働省が求める貝毒(下痢性貝毒)の検査のための動物実験は機械検査に変更になっているのですが、機械検査の際に必要な標準物質(いわゆる毒そのもの)の調達の問題があり、当面は動物実験で行ってもよいという経過[…]

EU輸出では動物実験しなくてよいのに、国内対応が遅れている!

残る麻痺性貝毒について、以前は動物実験の代替が難しいと言われていましたが、EU諸国で徐々に代替の動きが出始め、2019年には、EU規則によって機械検出による方法を主たる方法とすることが定められました。また、2020 年 10 月に EU は麻痺性貝毒の検査として機器分析法のみを認めることとするとのSPS通報(世界貿易機関(WTO)のSPS協定に基づき、加盟国が他の加盟国に提案する措置について通報すること)を行ったとのこと。この EU 規則改正は 2021 年 10 月に施行され、麻痺性貝毒の検査には機器分析以外は認められなくなりました。

こうした動きに合わせ、既に日本の農林水産省がEU輸出については機械検出法を採用しているのでですが、やはり問題は国内流通です。厚生労働省が動物実験ではない方法を公定法として採用することが、動物保護の観点から早急に必要です。
2022年に厚労省に問い合わせた際は、機械検出法への変更に向けて科学研究費の助成を行っており、その結果が出たら、変更の検討に入ると聞きました。すでにその当時の研究班の3年間の助成期間も過ぎ、結果も出ているので、動きが見えないのは変だと思い改めて問い合わせたところ、なんと状況は変わっていませんでした。
厚生労働省「国民の皆様の声」からの回答(2025年3月12日) ※太字はPEACEによる
「国民の皆様の声」にお寄せいただいたご質問につきまして、以下のとおり回答いたします。
麻痺性貝毒にはサキシトキシンを代表として数十種類の類縁体が存在しており、貝中の類縁体の相対存在量は地域によって異なることが知られています。
そのため、現在、これら類縁体の単離または合成や毒性評価を行うとともに、機器分析法を確立するための研究を厚生労働科学研究において実施しているところです。
これら科学的知見を集積した後、食品安全委員会への意見聴取等も行いながら麻痺性貝毒の機器分析法について検討していきたいと考えております。
厚生労働省健康・生活衛生局食品監視安全課
ここで言われている厚生労働科学研究とは、以下の研究のことです。令和6年(2024年)から8年(2026年)までの3年間の助成期間のため、これが終わってから公定法変更の検討に入るとして、最短でも令和9年(2027年)以降の改訂となってしまいます。下痢性貝毒の際は食品安全委員会での検討でも時間がかかっていましたが、麻痺性貝毒についてどうなるかは、下記の研究結果にもよるそうです。
事業名研究者所属機関名職名研究課題名交付決定額
(円)
食品の安全確保推進研究事業鈴木 敏之国立研究開発法人水産研究・教育機構
水産技術研究所
部門長食品中の自然毒等のリスク管理のための研究34,192,000

マウスたちは酷い苦しみのなか、死んでいく

麻痺性貝毒が検出されているときのマウスたちの激しい苦しみについては、以前、こちらの記事に掲載をしました。このような動物実験は早く、なくさなければいけません。

マウスの苦しみの描写

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2015年、麻痺性貝毒については動物実験の代替がされなかったホタテなどの二枚貝は毒を持つことがあり、この「貝毒」が検出されると、その海域では貝の出荷は停止されます。日本で問題になる貝毒には、「下痢性貝毒」と「麻痺性貝毒」の2種類[…]

麻痺性貝毒の動物実験代替に関するこれまでの動き

農林水産省パブリックコメント回答

2022年3月に行われた「安全な農畜水産物の安定供給のためのレギュラトリーサイエンス研究推進計画」別紙の更新(案)についてパブリックコメントに当会から意見を送りました。結果では、以下の回答が公表されました。

当会意見
麻痺性貝毒が出た際にマウス試験法で犠牲になるマウスの苦しみは尋常なものではありません。苦しみに悶え息絶える動物をこれ以上出さないようにするため、公定法をマウス試験法から機器検出の方法へ変更する必要があります。
「安全な農畜水産物の安定供給のためのレギュラトリーサイエンス研究推進計画」別紙においても、最終的な目標を、公定法となっている動物実験の置き換え(replacement)と明示していただきたいです。
修正例:
「本研究で得られた成果は、国内の麻痺性貝毒検査体制の運用に活用する。」
→「本研究で得られた成果は、国内の麻痺性貝毒検査体制の運用に活用し、公定法の動物実験代替を実現する。」など
そのうえで、その目標へ向けた研究に予算を出し、公定法の置き換えに農水省として尽力していただきたいです。よろしくお願いいたします。


農林水産省回答
御意見を頂きありがとうございます。
レギュラトリーサイエンス研究推進計画は、安全な農林畜水産物を安定的に供給していくために必要な研究を推進することを主たる目的としております。
研究事業の実行に際しては、動物愛護等の社会的要請にも配慮したいと考えております。
なお、頂いたご意見につきましては、麻痺性貝毒検査の公定法を定めている厚生労働省にもお伝えします。

「安全な農畜水産物の安定供給のためのレギュラトリーサイエンス研究推進計画」別紙の記載

農林水産省がEUの規制の動向を受けて取扱要綱を改訂

農林水産省は、既に「英国、欧州連合、スイスおよびノルウェー向け輸出水産食品の取扱要綱」を改訂しており、別添8-2「EU向け輸出ホタテガイ等二枚貝におけるマリンバイオトキシン(海洋性生物毒素)の検査法等」において、麻痺性貝毒(PSP)の検査方法は「EN 14526規格 (※) 又はその他国際的に認知された生きた動物を使用しない検査法で行うこと。」と冒頭に明記されています。

意見先

厚生労働省では、国民からの声を受け付けています。麻痺性貝毒の公定法を、早く動物実験から機械検出の方法に代替するよう要望してください。

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