麻痺性貝毒の動物実験も、機械で検出する方法への代替が見えてきた!

2015年、麻痺性貝毒については動物実験の代替がされなかった

ホタテなどの二枚貝は毒を持つことがあり、この「貝毒」が検出されると、その海域では貝の出荷は停止されます。

日本で問題になる貝毒には、「下痢性貝毒」と「麻痺性貝毒」の2種類があり、国が定める公式の検出方法として、長年マウスを使う動物実験が行われてきました。

しかし、2015年、下痢性貝毒については、この動物実験が機械分析法に代替されました。PEACEでも、この代替の検討の過程を逐次ブログでご報告していたので、ご存じの方もいらっしゃると思います。

残るは麻痺性貝毒ですが、現在、農林水産省がレギュラトリーサイエンスの研究推進計画についてパブリックコメントを行っている素案の中に、機械検出への代替を目指した研究について書かれていました。

また、最近の農林水産省の研究事業の中にも麻痺性貝毒の動物実験代替に関する研究課題があったので、事後評価の内容を確認したところ、「世界的に採用されつつあるLC-MS/MS法の大規模な国際妥当性試験に参加し、技術的に問題が無いことを示した」「永年課題となってきた公定法のマウス生物試験からの脱却の可能性も見えてくる」等、とても前向きな内容が示されており、事後評価もAと高いものでした。(全体は下記参照

また、「簡易分析キット等の成果情報を『二枚貝等の貝毒のリスク管理に関するガイドライン』の見直しに係る基礎データとして活用する」との記載もあったため、現在の状況を農林水産省の担当部局に電話で聞いてみました。

そうしたところ、ガイドラインの改訂も行う予定だが、なんと麻痺性貝毒について、海外でも機械分析法の導入が行われている状況などを受け、代替へむけて動いているとのこと! 公定法が変わるには数年はかかるかもしれないが、動きはありますという心強いお言葉でした。朗報です!

悶絶して苦しみ死んでいくマウスたちを救いたい

麻痺性貝毒が出たときのマウスの苦しみは恐ろしいほどです。毒によって死んだ数が重要な試験ですから、マウスが苦悶で体を震わせていても、途中で安楽殺はしません。

以前、当会代表は、実際に仕事でこの試験に関わった方から個人的に、その様子を教えてもらったことがあります。

麻痺性貝毒で死亡したマウスの状態ですが、かなり惨いです……。

はじめは他の注射されたマウスと同様じっとしていますが、次第に口をパクパクさせはじめ、目を見開いてもがきジャンプしだします。

その状態がしばらく続き、床に倒れてから三回ほど大きく体をひくつかせて死んでいきます。

その間、1分程ですがかなりの苦しみようでした。

口を開けてケースに手をつけて立ち上がり、苦しんでいる顔が忘れられません……。

今回、注射してから苦しみだすまで6~7分程だったので、毒性が強ければ、その時間が短縮になり、同じように苦しむかまたはそれ以上に苦しんで死んでいくのではないでしょうか……。

機械で毒を検出する方法への代替が難しいと言われてきたのは、機器を使った試験のときに必要になる純度の高い毒が生物兵器禁止条約の対象となっているため、所持が難しいという事情があったためでした。(下痢性貝毒には、この問題はありませんでした)

この標準品の毒の問題についても、所持することは不可能ではなく、制度的に整備できないか国は検討する方向だと農林水産省の方は言っていました。

マウス試験から機器分析法への代替の可能性が本格的に見えてきました。2015年時点ではなかったことです。

ただし、実際の公定法を定めるのは、厚生労働省になります。苦しみにあえぐ動物たちを少しでも早くなくせるよう、PEACEは働きかけを行っていきます。

参考:農林水産省の研究事業の評価

「安全な農林水産物安定供給のためのレギュラトリーサイエンス研究委託事業
令和元年度に終了した試験研究課題の事後評価結果及び行政における研究成果の行政施策・措置への反映方針」より

(赤字はPEACEによる)

課題番号:
2902

試験研究課題名及び実施研究機関:
麻痺性貝毒の機器分析法の高度化及びスクリーニング法の開発
【実施研究機関】
麻痺性貝毒スクリーニング法研究グループ
・(国研) 水産研究・教育機構  ・(地独)北海道立総合研究機構
・北海道立衛生研究所      ・岩手県水産技術センター
・(地独)大阪府立環境農林水産総合研究所  ・大分県農林水産研究指導センター
・熊本県水産研究センター    ・日水製薬(株)

実施期間:
H29~R1

研究概要:

(背景・目的)
有毒プランクトンが発生すると、それを摂食したホタテガイなどの二枚貝類が毒化し、食中毒の原因となることがある。このため、我が国では、食品衛生法に基づき、麻痺性貝毒及び下痢性貝毒の規制値を定めるとともに、生産段階については、農林水産省が貝毒モニタリングや出荷自主規制に関する通知を発出し、各都道府県が生産監視体制を構築し、食品安全を確保してきたところである。従来、貝毒の検査については、マウス試験法で実施されてきたが、国際的にはより高感度・高精度な機器分析法の導入が進められており、我が国においても、平成27年に下痢性貝毒の公定法が機器分析法となった。麻痺性貝毒についても、機器分析法を用いた検査法を検討する必要がある。
また、麻痺性貝毒をより迅速・簡便に検出するためには、簡易分析法等による実用的なスクリーニング法の導入が求められている。このため、国内の二枚貝類特有の毒成分を検出するための機器分析による検査法を開発するとともに、低コストで迅速に結果が得られる麻痺性貝毒簡易分析キットを開発する。
(研究項目)
①麻痺性貝毒の機器分析法の高度化
②麻痺性貝毒簡易分析キットを用いたスクリーニング手法の開発

評価所見:

・ 機器分析法の高度化においては、世界的に採用されつつあるLC-MS/MS法の大規模な国際妥当性試験に参加し、技術的に問題が無いことを示しただけでなく、分析機器による検出感度不足の改善方法等の貴重な情報を得ている。また、UPLC 法の採用により従来の蛍光HPLC 法の時間短縮が可能なことを示したことは、LC-MS/MS 法と併せて麻痺性貝毒に係る公定法の化学的試験法への移行の可能性を示す結果となっている。

・ スクリーニング手法の開発においては、毒組成の違いによる反応性の違いというイムノクロマト法の最大の欠点を、地域の特性に合わせて適正な希釈法と十分な安全係数を採用することによりスクリーニング法として採用可能なことを示している。何よりも、スクリーニング法を採用するに当たり必要となる、基礎データの選択とその取得、提示の実例を明確に示せたことに意義がある。

本研究で開発された簡易分析キットによる広範囲な海域等におけるスクリーニングと、迅速に対応できる機器分析による確定試験を組み合わせることにより、永年課題となってきた公定法のマウス生物試験からの脱却の可能性も見えてくる。二枚貝養殖等の水産業にとっても調査対象の海域、検体採取の細分化が可能となり、生産性、安全性の向上につながる可能性がある。

・ 開発した簡易分析キットは、海水試料中の毒成分の検出も可能としており、このことは、養殖海域の原因藻発生量のモニタリングの省力化を可能とし、今まで以上にきめ細かい監視体制の確立につながるが、現場、例えば漁協レベルへの応用においては、海域・貝の種ごとに希釈率を決めて測定するのは無理があると考えられ、このままでは不可能と思料される。

機器分析法の高度化については、国際的に妥当性の認められた分析法(LC-MS/MS)を確立し、さらに既存の分析法(蛍光HPLC)の2倍程度の感度の分析(UPLC)を開発した。これらについて普及のためのマニュアルを作成している。また、スクリーニング手法の開発については、規制値より低いレベルを確実に判別する、マウス法の1/2 以下の価格の簡易分析キットを開発し、市中供給を開始した。さらに普及のためのマニュアルを作成している。これらから、研究目標は達成されたといえる。

総括評価:
A

研究成果の行政施策・措置への反映方針:
生産現場における貝毒リスク管理を推進するため、機器分析法及び簡易分析キットに係るマニュアルを農林水産省ウェブサイトで紹介。
また、簡易分析キット等の成果情報を「二枚貝等の貝毒のリスク管理に関するガイドライン」の見直しに係る基礎データとして活用する。

関連リンク

農林水産省のガイドラインなどの情報が載っているページです。

パブリックコメントは、3月29日締め切りです。他の分野についても、動物実験の代替が必要です。

 

 

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