動物実験計画書の審査・承認なしに行われていた信州大学の動物実験基本指針等違反事例について、「過去の別の目的の動物実験計画書で実施できるから問題ない」との信州大学の見解はおかしいのではないか?ということに関連して、昨年12月29日付で質問書を送っていましたが、先日3月28日付で回答がありました。
動物実験及び計画書の承認そのものについて幾つか具体的に聞いた点については、「いずれも現在係争中の裁判事案に関連することを考慮し、回答を差し控えさせていただきます」とのことで、まったく回答は得られませんでした。裁判は関係する教授が個人的に起したものだと思っていたので、大学がはっきりとそれを理由にしてくるというのは少し意外でした。
動物実験に関する仕組みについて聞いた部分には、以下の回答がありました。制度の改善にはつながりました!
特に、違反者に懲戒処分を課する旨が規程に加えられたのは大きいです。文部科学省の動物実験基本指針で定められていない独自の内容です。
■ 信州大学からの回答
質問1)~5)については回答なし。
平成28年6月1日付けの改正は、別紙様式第3の改訂によるものです。
平成29年8月17日付けの改正は、関係法令及び当該規則に違反した場合、違反者に懲戒処分を課する旨を第30条として追加したものです。
新たに動物実験を実施する者への講習のみならず、既に動物実験に従事している者に対する定期的な再講習を実施することとしました。また、受講者に対して達成度確認試験を実施してその理解度の確認を行った上で発行する「受講証明書」の保有を義務付けました。
■ 国は目安を示しているか?
異なる目的の動物実験計画書で全く別の実験ができてしまうというのは、基本指針の意図するところから考えておかしいですし詭弁にすぎないと感じるのですが、考えてみると「動物実験計画書とは何で、委員会はどこを審査するべきなのか」ということを詳細に国が示しているわけではありません。
しいて言うならば、各機関の動物実験に関する規程のひな型として示された日本学術会議の「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」に比較的細かく書かれていますが、ここまで詳細な規程をつくっていない大学がほとんどだと思います。
そのような状況の中で、厚生労働省所管の研究所である「国立医薬品食品衛生研究所」が、「動物実験計画書作成時及び審査における基準」や「同一のあるいは同様の動物実験として運用する範囲」といった文書を作成し、公表しているのは明快でわかりやすいです。
(ほかにも事例はあるかもしれませんが、偶然目についたので!)
定型化された毒性試験も行う研究所ならではの工夫ともとれますが、本来であれば、国がこういった基準や範囲について目安を示すべきです。「機関管理」という名目のもと、なんでもかんでも放置しすぎです。