医薬品のように治療効果をうたうことはできませんが、特定の保健の用途を表示して販売することができる食品に、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品があります※。
トクホは国の許可を受けて、また機能性表示食品は販売する事業者の責任において機能性をうたっており、本来動物実験を必ず必要とするわけではないのですが、多くの事例で動物実験のデータが用いられています。それぞれについて、商品ごとに情報を知ることができるサイトや、どういう場合にどういう動物実験が求められているかの情報をまとめました。
一部を除き、食品の動物実験は、国の動物実験基本指針の対象外!
また、川田龍平参議院議員提出の質問主意書に対する政府の答弁書により、消費者庁が事業を所管するこれら食品の動物実験を行う機関が守るべき国の動物実験指針は特に定められていないということがはっきりしました。「厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する基本指針」に定められた内容を踏まえることが望ましいとの見解は示されましたが、動物実験基本指針そのものが法的拘束力のあるものではない上に「望ましい」では、かなり弱いものであると感じざるを得ません。
実際、これらの動物実験実施機関が実際に同指針を守っているかどうかを調査するべきは消費者庁とのことですが、そのような調査はこれまで一切行われていません。
また、食品や食品成分については、トクホや機能性表示食品以外にも、効果効能の宣伝などのため、特に法律に求められているわけではない動物実験が各企業で行われていますが、これらの動物実験を行う事業者が守るべき国の動物実験基本指針も存在しないことがこの質問主意書によってはっきりしました。
別途当会で確認したところによると、貝毒検査など食品衛生の目的で厚生労働省が動物実験を求めている場合については厚生労働省の動物実験基本指針の対象となるそうですが、企業が自主的に行っているような食品の動物実験については、厚生労働省の事業の対象外であり、指針の対象からも外れます。
そもそも食品自体の所管は農林水産省ですが(注:食品衛生等の部分のみ厚生労働省が所管している)、上記質問主意書でもはっきりした通り、農林水産省の動物実験基本指針は民間企業を対象としてないため、それらの食品の動物実験については、守るべき国の動物実験基本指針は存在しないということになります。
そもそも人類が長年食べてきた食品について動物実験は必要なく、食品企業は動物実験をする必要はないのですが、体に良さそうな情報を消費者に与えたり、トクホマークを付けたりするために動物実験が行われています。その上に、動物実験の自主規制を担保するためのものであるはずの国の動物実験基本指針からも外れているのでは、動物福祉についてはまったく野放し状態と言えます。
これも、いわゆる「2006年体制」の中で、10年間放置されてきた問題です。
健康食品の安全性や機能性に関する意見交換会
動物でのデータしかないのに人での機能性をうたった場合、不当表示に該当することも先日もご紹介しましたが、この意見交換会でも動物実験について「ヒトで本当に効果があるかどうかわからない」との説明がなされていたようです。参加することはできなかったのですが、すでに議事録がアップされていましたのでご紹介します。
東京会場議事録より
「例えば動物実験だけだと、ヒトで本当に効果があるかどうかわからない。試験管の中の実験だけだと消化吸収のことは一切わかりませんから、ヒトが口から摂取して効果があるかはわからない。ヒトの試験で無作為化比較試験(RCT)というのがあります。これはかなり信頼できる試験方法です。」
▼意見交換会資料より
今月の「sippo」掲載
朝日新聞「sippo」に当会ブログから以下の記事が転載されています。ぜひこちらもご覧ください。