宇都宮動物園 宮子

日本の単独飼育ゾウのリスト掲載&世界の飼育ゾウをめぐる最近のニュース

日本の単独飼育のゾウたちの一覧のページをつくりました。近年、単独飼育解消を目的としたゾウの移動が行われたのは1例だけで、ほかは死亡することでリストから消えていっていました。一方で、2頭で飼育する動物園が多く、片一方が死亡することで単独飼育に転落し、リストに加わります。動物園が「自園さえよければいい」というエゴを捨てない限り、この現象は続いていきます。

そもそもゾウは飼育するべきではない動物ですが(このページの最下部にその根拠となる論文紹介も載せています)、そのことを考える一助になればと思います。

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日本の動物園・サファリパークで単独飼育されているゾウたちの一覧を下記にまとめました(2025年4月現在11頭)。単独飼育のうちに死亡したゾウの、近年の主な例も挙げています。ゾウは、母系を中心とした群れで子育てをし、長距離を移動しなが[…]

宇都宮動物園の宮子のためのPETAのアクション

老朽化して壁に穴の開いた寝室と12メートル×12メートル程度の広さしかない運動場(とは名ばかりのスペース)、足を傷めているのにコンクリートの床から変更しない宇都宮動物園で飼育されているアジアゾウの宮子をタイのサンクチュアリに移すためのアクションをPETAアジアが行っています。サンクチュアリ以外の国内施設になった場合でも、輸送の費用はPETAアジアが負担するとのことです。

宇都宮動物園に象の宮子を助けるよう伝えてください…

世界の飼育ゾウをめぐる最近の動向・ニュース

アメリカ:2年連続でワースト動物園に選ばれたロスアンゼルス動物園、ゾウを手放す

ゾウにとって最悪の動物園、全米ワースト1に2年連続で選ばれていたロスアンゼルス動物園が、2頭のゾウを他の動物園へ送ることになったそうだ。移送先もワースト10入りしたことのある動物園。ゾウを手放す判断ができるだけ、日本の動物園よりはよいが、アメリカには自然の環境で引退ゾウを飼育するサンクチュアリがあり、なぜそちらではないのか? 福祉団体は批判している。( 2025年4月25日IDA公表より)

オーストラリア:タロンガ動物園はゾウたちのためにゾウを手放す

シドニーのタロンガ動物園は、アジアゾウのペア、Tang Mo とPak Boonをサウスオーストラリア州の、より広いサファリパークへ送り出す。彼らは、タロンガ動物園にとって最後のゾウになる。

「私たちは、さまざまなグループのゾウを集めて新しいコミュニティを形成することのできる、別の広い場所を常に探していました。」「彼らがいなくなるのを見るのはとても悲しい。しかし、ここには2頭しかおらず、彼らにはもっと大きな社会集団が必要だと感じているのです。」(2025年4月23日報道)

Sydney's beloved Asian elephant pair is preparing for a new …

メキシコ:最高裁判所がゾウの飼育環境改善を命じる

メキシコの最高裁判所が、メキシコシティのサン・ファン・デ・アラゴン動物園(San Juan de Aragon Zoo)に対し、13年前にサーカスから救出されたアフリカゾウ「イーリー(エリー、Ely)」の福祉向上のための措置を講じるよう命じた。イーリーは複数の病気に苦しんでおり、一緒に暮らしていたマギーが死亡してから単独飼育に陥っていた。イーリーは、マギー死亡後、体重が減り始め、施設の壁に頭を打ち付けるようになったという。(2025年2月28日報道)

NDTV

Mexicos Supreme Court ruled that a zoo must enhance the well…

アメリカ:コロラド州最高裁判所は動物園のゾウを人身保護令状によって解放する求めを却下

アメリカでは、動物たちに人身保護令状を請求することによって、囚われの動物たちを動物園から解放しようとする動きがある。かつて人の所有物として扱われた奴隷たちの解放のために使われた手法だ。

ノンヒューマン・ライツ・プロジェクト(Nonhuman Rights Project、NhRP)が、コロラド州のシャイアン・マウンテン動物園で飼育されている5頭のアフリカゾウ(ミッシー、キンバ、ラッキー、ルル、ジャンボ)の保護区への移送をもとめた裁判は、残念ながら敗訴に終わったことが日本でも報じられた。(2025年2月3日報道)

産経新聞:産経ニュース

米コロラド州最高裁判所は先月、同州内の動物園で飼育されているゾウの「解放」を求める動物愛護団体の請求を棄却した。団体側の…

イギリス:低福祉な動物観光の宣伝やチケット販売を禁ずる法律、観光業界から強い圧力を受ける

低福祉な動物利用観光について、チケットを売ったり宣伝したりしてはいけない法律がイギリスで可決され、どの行為が規制対象に選ばれるか、これから決まるところだが、やはり旅行業界からイギリス政府への強い圧力があるそうだ。ゾウのライドや写真撮影サービス、ショーなどについて対象に含めるよう求めるメールアクションが行われている。

STAE

Use our example letter to write or send an email to Minister…

最新の研究によると、飼育下のゾウたちは依然として福祉上の問題に直面している

Peer J誌に新たに掲載された査読付きの総説論文によると、動物園で飼育されているゾウたちは、近年の飼育環境改善に向けた取り組みにもかかわらず、依然として福祉上の課題に直面している。この研究は、知的で社会的な動物であるゾウを飼育することの倫理性について、根本的な疑問を提起している。たとえ善意に満ちた動物園であっても、ゾウのニーズに応えられるかどうか、疑問を投げかけるものだ。

この論文が明らかにしたのは、ゾウの持つ自然なニーズと動物園が提供できるものの著しい相違である。「ゾウは特別なニーズを持っているが、そのニーズは広大な行動圏を持つ自然界で満たされており、複雑な社会ネットワーク、広範囲にわたる移動、そして行動と認知の複雑さを支えるものである」と筆頭著者は述べる。「飼育環境と自然環境のかけ離れた不一致が、飼育下のゾウの幸福に悪影響を及ぼし、ゾウにとって憂慮すべき結果をもたらしていることがわかった。」この不一致は、限られた空間から不適切な社会構造まで、さまざまな形であらわれ、ゾウの健康と福祉に広範囲にわたる影響を及ぼす。

また、近年、ゾウの福祉への関心が高まっているにもかかわらず、深刻な福祉問題が依然として残っていることが調査で明らかになった。具体的には以下の問題が挙げられる。

  1. 身体的な健康問題
  2. 精神的苦痛
  3. 異常な反復行動(常同症)
  4. 平均寿命の短縮

これらの問題は動物園側の努力不足ではなく、飼育環境そのものに限界があることに起因することが示唆されている。

アメリカではゾウを展示する認定動物園の数が減少している。過去10年間で、その数は67園から49園に減少しており、複雑な動物であるゾウに適切なケアを提供することの難しさについての認識が高まっていることを反映している。

「ゾウの飼育は、ゾウが飼育されるべきではないことを明確に示す、反駁の余地のない科学的証拠を無視することによって正当化されているに過ぎない」

(2024年10月3日)

ScienceBlog.com

A comprehensive peer-reviewed study has found that captive e…

論文はこちら:
Doyle C, Rally H, O’Brien L, Tennison M, Marino L, Jacobs B.
 2024Continuing challenges of elephant captivity: the captive environment, health issues, and welfare implicationsPeerJ 12:e18161 https://doi.org/10.7717/peerj.18161

2021年のツイートでも論文を紹介した


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