動物愛護管理基本指針の改正へ向けて 第36回動物愛護部会傍聴

昨日(3月22日)、環境省で動物愛護部会の第36回が開催されたので、傍聴してきました。ちょっと長いですが、ご報告です。

まず、今回の部会から、部会長は福岡大学の浅野直人教授に変わり、委員にも若干変更がありました。

浅野教授は法学畑の方で、これまで環境政策関係でいろいろな経験をされてきたためか、視野も広く、他の環境政策との比較などの興味深いコメントをときどき入れていました。動物が専門の方ではありませんが、そのほうが思い入れや偏りなく、他の政策と同じように扱ってくれるかもしれません。この1カ月くらいでかなり勉強されたと言っていましたが、動物問題も理解した上で進行されていたので、今後に期待したいと思います。

他の委員については、動物愛護・福祉関係者の増強を期待したのですが、そうはなっていませんでした。

また、大幅に変更された今後のスケジュールが公表されたので、スケジュールのページを更新しました。当面検討するのは、動物愛護管理基本指針、家庭動物・展示動物の基準、引取り措置になります。パブリックコメントは6月とのことでした。施設基準等は、5月から検討開始となるようです。

参考:2013年改正動物愛護法施行までのスケジュール

基本指針の改正については、環境省からポイントが示されました。以下、項目だけ簡単にご紹介します。

「動物愛護管理基本指針の改正へ向けて」(環境省資料概略)

・計画期間:平成35年度までの10カ年計画(5カ年ごとにローリング)
 (都道府県の計画は、原則として平成26年度から平成35年度までの10か年)

・改正にあたって考慮すべき点
 (1)普及啓発
 (2)適正飼養の推進による動物の健康と安全の確保
 (3)動物による危害や迷惑問題の防止
 (4)所有明示(個体識別)措置の推進
 (5)動物取扱業の適正化
 (6)実験動物の適正な取扱いの推進
 (7)産業動物の適正な取扱いの推進
 (8)災害時対策
 (9)人材育成
 (10)調査研究の推進

また、今回の部会のメインは、動物愛護管理基本指針改正へ向けた関係団体からのヒアリングでした。以下5団体の説明&質疑応答の概略は以下の通りです。

◆全国動物管理関係事業所協議会

いわゆる自治体の動物愛護管理に関係する事業所(センターなど)が加盟する団体です。東京都の動物愛護相談センター所長が主に説明しました。

  • 現状、人員や財政は厳しく、日々業務に追われている。法改正によって事務量がふえるのはやむを得ないが、それ以上は避けたい。やるなら効果があがるものを。
  • 指針改正で「考慮すべき点」のうち、「(2)適正飼養の推進による動物の健康と安全の確保」については、「引取り規定の厳格化」ではなく、引き取らない要件を厳格化しただけではないか? 取り組んできた自治体では、引取りの減少は下げ止まりの時期に来ており、今から下げ幅を期待されても困る。先行して取り組んできたところほど厳しいので、下げ幅は考慮をしてほしい。
  • 殺処分に関しては、一定数は、なくならない。攻撃性が高く譲渡できない犬や、予後の悪い動物などがいる。
  • 多頭飼育や遺棄については、経験上、現場と司法判断には差がある。行政は動物を置き去りにしていれば遺棄だと考えるが、警察は、ただ置き去りにしても動物が元気だと無理。一体化していないので、現場の判断は難しい。国レベル等で一度すりあわせをしてからになるのではないか。
  • (3)に挙げられている地域猫対策については、力を入れている自治体と、いない自治体がある。成功例も失敗例もある。効果があるかどうか、まだ検討中であって、地域差もある。
  • (4)のマイクロチップについては、AIPOに登録していないためデータにたどり着けないことがある。データの一元化が必要。最新の情報を反映していないと、実効性はあがらない。
  • 実験動物・産業動物は埒外という認識でいる。農水・厚労・文科の指示系統の部署を提案したい。
  • 動物愛護推進員については、委嘱しているところと委嘱していないところがあり、自治体によってさまざまである。程度にも差がある。

Q.動物愛護行政は、義務的自治事務であり、国が予算措置をすることとなっていると思うが、どう考えているか。
A.地方交付税での配分となる。東京都は交付団体ではないので、把握していない。制度改正によって大幅に上がっている印象はない。

Q.監視指導の強化については、人員的対応は可能か。広域的協力体制はどうか。
A.(広域体制については)震災などの対応事例を教訓に考えていく。地域防災計画に入れているところもある。九州ブロックでは体制を詰めているところであり、やっているところはある。
 (監視指導の強化については)年ごとの波があって、登録の更新時期に多い時期がくる。5年ごとなので、昨年度・今年度である。法改正で事務量はふえるので、工夫しながら効率的にやっていく。

◆三重県健康福祉部食品安全課

「なぜヒアリングに呼ばれたのかわからない」とのことで、「自治体の代表ということではない」と言っていました。また、三重県では、食品と動物を一緒にやっており、そういう自治体は多いと最初に説明していました。

  • 今の指針の10年は長い。状況で変わるので計画の見直しを考えている。(県でも審議会を開いて)3回議論したが、今年度中の改正はできなかった。県議会でも質問されたが、指針が7月と聞いているので、それに合わせてやる。10年を目標にやっていることなので、自治体も検証は十分ではない。(その中で改正は厳しいのではないかというニュアンス?)
  • (2)の引取りについては、年間800頭を目標に頑張ってきた。本格的にやろうということになり、引取りの際にしっかりやってみたところ、500頭になっている。300頭までいくかもしれない。目標を400頭にしようとしたら、少ないと言われる。どこを起点にするかの問題もある。
  • 三重県も「センター」という名前だが機能は十分ではない。交付金がなくなる分の手当ては厳しい。
  • 県の譲渡基準が厳しいと言われる。しかしその前に引取りを減らすことが重要と考える。譲渡数が少ないと言われるが、一生けん命やっている。

Q.地域猫対策は、地方によってさまざまという話があったが、三重県はどうか。
A.正直言って進んでいない。地域の方々のご理解が必要なものであり、県としてやっていくということはしていない。
(ここで、長野県のセンター長である斉藤委員から、長野ではボランティア400人、100カ所で1000頭くらいの管理をしているというコメントあり。「結構効果あったと思う」とのこと。)

Q.センターは設置されていないところもあるし、内容も実情もさまざま。具体的課題があれば。
A.災害時の保護収容に関しては、関心はあるが、広さと機能は十分でない自治体が多い。やろうと思うと場所の問題はある。警察との連携の話があったが、裏付けを出してもらえればやりやすい。

Q.愛護推進員は、三重では? 
A.31名いるが、指名したものの当初は機能していなかった。得意とするところは違うので、今年度からそれぞれの役割を果たすよう、取り組みを始めた。(財政支援は)ボランティアでやってもらっている。

Q.(財源は)交付金となると不透明ということになるかと思うが?
A.まったくわからない。

◆全国ペット協会(ZPK)

ZPKからは部会の委員も出ていますが、ヒアリングにも呼ばれていました。業界として取り組んできたことなどが中心のお話でした。

  • 日本動物保護管理協会(現・日本獣医師会)、日本鳥獣商組合連合会、全日本動物輸入業者協議会とZPKとで生体販売時の事前説明における説明書・確認書を作成。犬猫用には「わんわんにゃんにゃん母子手帳」が入っており、70万冊以上(つまり70万匹以上)の実績がある。
  • 家庭動物販売士認定制度では、6,700名以上が資格を取得。1日4時間の講習と試験。ただ「生き物を売ればよい」というのでは向上しない。
  • 名古屋のブルセラ症感染事例を機に、全国ペットパーク流通協議会(オークションの団体)と一緒に講習会を開催。行政とも初めて連携。
  • 「ストップ! ペットのネット販売・移動販売」のキャンペーンをやってきた。夜間販売も動物に負担をかけるので、(法令に)盛り込んでもらった。
  • 生後40日齢に満たない犬猫は売らないという自主規制を2006年以降、オークション協議会とも連携してやってきた。
  • 「売ってしまえばいい」という考えなきにしもあらずの中で、トラブルもあった。会員には徹底し、全国一律の認識で売ってもらっている。
  • ZPKと、中央ケネル事業協同組合連合会(繁殖業者の団体)、全国ペットパーク流通協議会の3組織で協議会を立ち上げた。この組織で45日齢をどうやってみていくかを協議中。門歯(前歯)の生え具合を成長の一指標とすることを検討中。
  • 指針見直しについては、社会的責任を認識し、今まで以上に自助努力をしたい。移動販売はもう少し厳しく。マイクロチップは、登録の一元化が大前提。狂犬病の登録と重なるのは負担となる。

Q.改正されると、法律に合致する会員はどれくらいいるか? (答えづらいかもしれないので)協会のカバー率は?
A.ZPK・中央ケネル・ペットパークの3団体で、生体販売の7割はカバーしており、そこには周知徹底できるが、3割はどこにも入っていない。

Q.移動販売は本当にひどい。感染症などもあり、こんなことがあっていいのかと思う。廃止に持っていきたいのか、存続させて規制させたいのか?
A.廃止してほしい。県外から来て、売っていき、苦情だけ(自分たちのところに)くる。

Q.45日に満たないものを置いて、「販売の対象ではない」と言うという話も聞く。「出荷」の意味は、どう考えればいいか。親元か。60日くらいまでは、正常な親であればおいてほしい。
A.法律的には9月1日以降だが、それまでは41日以降親元から離すということでやっている。「出荷」とは、親元を離れる日と考える。売る側としては、早く人に慣れさせたい。触っていない犬は触れない。恐怖心がある。繁殖者には触ってくれと言っているのだが、親に60日つけたらどうかな?とはやはり思う。

委員意見:マイクロチップは、登録されていないと形骸化する。自分で登録してくださいという場合にしていないのと、業者が登録していないのとあるが、これが多い。これをどこがチェックするか。数万件は登録されていないとみている。

◆動物との共生を考える連絡会

「動物福祉」を指針の基礎にすえてほしいという観点からお話しされていました。実験動物・産業動物などのところが時間切れになっていたので、詳細は、公開される資料をぜひ!ごらんください。

  • 5つの自由にもとづく、動物のニーズの確保が重要。
  • 「とにかく動物を触らせれば教育だ」ということが起こってきたりするが、次の日は、ぐったり、下痢・嘔吐ということもある。奈良のいのちの教育では、張子を使ったりして、動物にストレスをかけずにいのちへの共感をはぐくむことができている。動物への適切な接し方とうまく組み合わせて展開する必要がある。
  • 講習会なども、来る人はわかっている人。来ない人、トラブルを起こしそうな人にどう届けるかを民間団体も一緒に模索していきたい。
  • 引取りの拒否については、拒否に至る前に相談・解決できるシステム構築が必要。センターに動物が入ってこないシステムである。断って飼い殺しになってはいけない。
  • 譲渡には、スペースも必要。予算措置なしには難しい。自治体は適正飼養の見本となるべきであり、ホーダー化しては何にもならない。民間との連携や、フォスターファミリーと連携する制度をつくっていければ。
  • 多頭飼育問題は、人の精神衛生等の専門家とも連携して、共同で対応するべき。
  • 特定動物は、実際には飼えないくらい許可基準を厳しくするべき。
  • 地域猫は、解決が難しい現状の中での対策。不妊去勢を徹底し、猫の室内飼いを推進する必要がある。
  • 幼齢犬猫については、販売されるまでの間の飼育管理基準を。ブリーダーが手をかけない限り、56日おいてもだめ。
  • 調査研究は、法律関係者の中でもしてもらえれば。獣医学のほうでも、動物福祉を研究課題にしてほしい。

Q.いのちの教育のところで、動物を使うのと併用するというときに、何が適正か、基準になるものがない。ガイドラインはあるか。
A.バラバラなので、委員会なりを立ち上げて作り上げてもいいのでは。IAHAIOから介在教育のガイドラインは出ている。

Q.長野だと持ち込まれる2割くらいは行動が原因。問題行動の相談はどうしたらよいか。
A.専門家はけっこういるのに、自治体とうまく連携してできていない。自治体にそういう人を利用してほしい。

◆新宿区人とねことの調和のとれたまちづくり連絡協議会

実際にボランティアをされているお二人からのお話でした。うまくいったケースと、これからうまくいかせたいケースの2つから、どうするとうまくいくかなどをお話しされました。資料はかなり細かく、とても参考になりそうです。

  • 一つは、町内会ぐるみで取り組み、ほぼ2年間で145匹を手術。現在は両方の人たちが納得するケース。もうひとつは、進行形の事例。急なふえ方をした現場で、一人の女性が「費用は出すから手術してほしい」というケース。(不妊去勢の)効果は実感できる。
  • 何が大事かと考えると2つあると思う。一つは、地域猫対策への理解。一般にはまだまだであり、環境を守る活動であることを知ってもらう必要がある。もう一つは手術費用の減額。被害を受けている人にとっては、なぜその費用まで出さないといけないのだという思いがある。
  • 「公園で猫にエサをあげてはいけない」=「猫はかわいがってはいけない」と受け止める子どもがいる。命は大事だと子どもにわかってほしい。

Q.猫の区別は?
A.耳カットが一番現実的と考える。捕獲時に飼い猫と区別するには、広報を徹底的にやる。中には、手術してほしい人が飼い猫をわざと放すケースもあるが、区別せずに費用は町会もちで手術した。

Q.自治体の協力は?
A.(保健所だけでなく、みどり土木部公園課の公園サポーター制度のことなどを説明) 警察との連携は、現場では感じない。不妊去勢は、獣医師資格は持っていたが会社員をされていた方で、これ専門でやってくれている人がいる。そういった埋もれている獣医師を発掘してほしい。

ここで、委員から、猫も登録にして室内飼育とするべきだとの意見が出ました。
また座長から、狂犬病予防法という、省庁がまたがっている登録制を変えるのは至難の業だが、必要性があることがわかったのではないかとのコメントがありました。

最後に、環境省からは、動物愛護ポスターの件と、映画『ひまわりと子犬の7日間』の件の報告などがありました。

次回は、もう1回、ヒアリングです。動物実験関係、畜産関係も関係団体からヒアリングがあるとのこと。実験動物は、動物福祉の観点から、飼養保管状況の把握が必要ですし、産業動物は、指針の中に基準の改正が盛り込まれているにもかかわらず、手つかずです。また傍聴してきましたら、ご報告します。

ちなみに……:
こちらの映画、先日PEACEの代表二人で試写会に行ってきました。(注:代表二人制でした)

実際にこの問題に関わりを持っていると、結構突っ込みどころ満載には思えてしまうかとは思うのですが(あと、ひまわりの実話があったときとちょっと違う描かれ方がしているような気はしました)、殺処分される犬の一生を理解するには、よい構成になっていたのではないかと思います。不思議なのは不妊去勢の話が一切出てこないことですが、殺処分が安楽死ではないことを示唆するシーンは印象に残るので、広く見てもらう意味はあるかと思います。

(S.A.)

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