国際獣疫事務局(OIE)連絡協議会(平成24年度第1回)を傍聴

12月4日に、農水省が主催した「平成24年度 第1回 国際獣疫事務局(OIE)連絡協議会」の傍聴に行ってきました。

OIEは、動物衛生に関する政府間組織(つまり国が加盟するもの)で、もともとは家畜・家禽の感染症の問題を扱っていましたが、近年は動物福祉に関する取組みも顕著です。農水省は「国際獣疫事務局」の正式名称和訳を採用していますが、最近は「世界動物保健機関」の呼称が使われています。

今回の連絡協議会では、議題の中に「アニマルウェルフェアと肉用鶏生産システム」が入っていたので、傍聴してきました。これまでは動物の疾病のことがメインに思え、実は傍聴をしたのは初めてです。この会議は農水省の正式な審議会ではなく、あくまで国がOIEに意見提出する際の参考として、有識者・関係者から自由に意見を出してもらう場として設定された会議とのことでした。とはいえ、発言は国として提出される意見に反映されるかもしれないのですから、大事な会議です。

動物福祉が専門のメンバーとしては、麻布大学の田中智夫教授、また臨時メンバーとして日本獣医生命科学大学の松木洋一名誉教授、消費者の立場として家庭栄養研究会常任顧問の蓮尾隆子さんがいらっしゃいました。

この日の流れとしては、まずOIEの概要についての説明があり、コード制定・改廃などの手続きがどのように行われているかや、WTO/STS協定との関係について説明がありました。

次に、今年5月に開かれたOIE総会の報告があり、農水省動物衛生課の川島課長が日本人として初めて理事になったこと、またコード委員会では、動衛研の筒井領域長補佐が日本人として初めて委員になったことなどが報告されました。

また、アニマルウェルフェアに関しては、陸生コードが改正された件として、
・肉用牛生産に関する新規章を承認
・序章(第7.1章)に、動物生産におけるアニマルウェルフェアの原則を追加
・実験動物の章(第7.8章)に輸送に関する条文を追加
の3点が報告されました。

英語のサイトですが、この第80回総会の最終報告書は、こちらに掲載されています。

総会の報告の後は、家畜・蜂の疾病についてが議題になり、次に「アニマルウェルフェアと肉用鶏生産システム」に関する新規章が議題にあがりました。この肉用鶏についての章は、昨年の総会に一度かけられたのですが、途上国からの声で継続審議となっていたものです。今年、肉用牛のほうが可決されたため、「では、鶏も」となり、再チャレンジとして修正案が上がってきたとのこと。

現在提案されている案は、陸生コードの第7章、つまりアニマルウェルフェアの章に組み込まれる予定のもので、日本語仮訳も資料として添付されました。対象は商業目的で生産される肉用鶏の雛の導入から出荷までで、庭先養鶏は含まれません。これは東南アジア諸国などの実情を反映したものです。

また、福祉の状態を測る指標としては、死亡率・罹患率や、さまざまな健康状態に関する所見、餌・水の消費量などが挙げられており、家畜福祉の話題でよく出てくる飼育面積や施設などの問題は取り上げていないそうです。なので先行する基準類とは少し違っているとのこと。

飼養の際の推奨事項としては、治療を含めた健康管理・疾病予防についてがまずあり、ほかには、温度・照明・空気などの環境要因や、外科的処置、職員の研修、動物の取扱い、見回りなどの飼育管理についてなどが定められています。

この日、具体的に議論になったのは、「肉用鶏の首や翼を持って取り上げてはならない」の文言の「翼」についてでした。業界関係者からは、「翼の先を持つのがいけないのであって、根元は持つとおとなしくなる」「昔は羽を羽交い締めにしたが今はやらない」などの意見があり、田中先生から出た「羽を持ってぼんぼんやっている(投げるように次から次へ移動させるしぐさ)、あれがいけないのではないか」との発言に対しては、「効率性の問題がある」との反論がありました。OIEのコード案が何をさしているのかは気になるところです。

また、以前の案に対して、日本からは、「温度環境の確認および検査の頻度を『最低1日に2回』から『適切な頻度』とするべき」という意見を送っていたそうですが、それに関しては反映されていないとのことでした。

松木先生からは、「昨年OIEがISOと話し合いを持っており、ISOの中にアニマルウェルフェアを取り入れることについてワーキングチームがつくられ、国の意見も求められているはずだが」という指摘がされましたが、そのことについての農水省の反応は、「ISOは政府間組織ではなく民間の団体なので、国として意見を出しても影響力としてどうか。むしろ民間なのでオープンなのではないか」といった感じでした。

そして最後に「その他のコード改正案の概要」が議題になり、陸生コード第7.9章となった「アニマルウェルフェアと肉用牛生産システム」の仮訳(改正案を反映させたもの)や、2012年9月のコード委員会レポートで提示された改正案の概要(日本語訳)などが資料として示されました。

改正案については、最後の最後に農水省の別の課(畜産振興課)から、肉用牛のウェルフェアコード改正案の中の「繋がれた牛は、最低限、仰臥、転回及び歩行が可能でなければならない」の文言について、「『転回』についてはどう考えるか」との聞き取りが行われ、業界関係者からは「横になって左右に動ければよい、幅は1.2メートルあればよい」などの意見が出ました。畜産振興課は、修正意見を出したいようです。(ちなみに、OIEのこの会議を行っているのは、消費・安全政策課。)

業界関係者は、「(事実を)オブラートに包むべきではない。虐待を行っているわけではなく、ちゃんと愛情をもって育てている」と言いますが、牛にとっての現実が厳しすぎます。蓮尾さんは、「消費者は牛は広いところで草をはんでいると思い込んでいる。生産地見学に連れて行くと、もうびっくりしている。そういう経験を何度もしてきた」とおっしゃっていて、そういった点からもオブラートに包むべきでないことには同意ができますが、何が動物にとって苦痛なのかの認識を、業界の人はもっと共有してほしいと思いました。

「アニマルウェルフェアも、やりすぎるとバイオセーフティーの面から問題がある」との意見が出たり、相も変わらず前途多難そうではありますが、OIEという「外圧」によって、日本の動物たちの扱いが変わっていくことを願ってやみません。

環境省もオブザーバー参加しており、会議でも動物愛護法のことがちらっと出ましたが、動物愛護法は、都合のいいときだけ他の省へ「たらい回し」にするための道具ではないので、きちんと内容の充実も含めて共同で改正に取り組んでほしいと心の底から思います。

長くなりましたが、OIEでは、今年11月6~8日に動物福祉に関する国際会議の第3回もクアラルンプールで開催されました。出された勧告のpdfがOIEのトップページからリンクされています。

参考リンク:
農林水産省:OIE連絡協議会の開催状況 ここに配布資料等がアップされます
農林水産省:国際獣疫事務局(OIE)
OIE:The World Organisation for Animal Health (英語)

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