食品の新たな機能性表示制度~ヒトでのエビデンス重視に!

報道もされているところですが、政府が新たに導入しようとしている食品の機能性表示制度に関する検討会を傍聴してきました。さすが2兆円規模に達したとも言われる健康食品市場に関するものだけあって、傍聴者も半端ない人数でした。

食品の新たな機能性表示制度に関する検討会

ではなぜ動物保護団体が参加したか?と言えば、もちろん動物実験を求める制度が新設される可能性があったためです。この市場規模で皆が一斉に動物実験を始めるなどということがあったら、恐ろしい事態になります。

しかし、この日配布された資料を見てとても驚いたのですが、アメリカの制度と同じように、科学的根拠はヒトのものとすることしか書かれていませんでした。

これまでの資料には、安全性について「動物実験」の文字がありましたし、消費者庁の担当者と話した時も、「まず動物」というこれまでの日本の行政の考え方通りだったので、このペーパーが出てきたことには大変驚きました。

「ヒトのエビデンスはヒトで」ということが、やっと日本でも理解され始めてきたのでしょうか。しばらくウォッチングは必要に思いますが、今回の新制度が「規制緩和」であることを考えると、このあたりの形で落ち着くようにも思います。

ちなみに、アメリカの考え方は、公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)のサプリメント部会が作成した「サプリメント登録制 調査資料」の説明がわかりやすいので引用させていただきますと、以下の通りです。

FDAのエビデンスに関する考え方
表示を裏付けるのに適した科学的根拠として最も法的根拠があるのは、ヒト試験です。ヒト試験は、大きく2つに分けられ、介入研究と観察研究があります。(中略)
動物実験、インビトロ、ユーザー証言やその他事例、論文の総説、投書、モノグラフなどは参考資料としては使用できますが、単独では表示の根拠を示す文献としては適していません。

ヒトでの根拠を最重要視するのは科学的かつ合理的な考え方で、国際的にはこれが一般的ですが、新たにヒト研究をしようと思えばお金はかかるので、企業側が「どこが規制緩和だ」と考えそうなところが若干心配です。動物実験偏重という問題を抱える日本では、ありえそうな話です。

しかし、そもそもヒトでのエビデンスのない健康食品がまかり通っていること自体がおかしく、「エピソードや動物実験データしかないような宣伝は、根拠が怪しい」と消費者が思うようにならなければいけないと思います。

動物のデータは動物での結果であって、ヒトにそのままあてはめられるデータではありません。種が違えば、化学物質に対する感受性も違ってきます。動物実験のデータを効能の根拠に使っている商品は、ヒトでのデータを持っていない、効果が不確かな商品と考えたほうが無難です。

もし「動物実験でOKにしろ」などという企業があったら、その会社は科学的な根拠は示さず低コストで商品を売りたいのであって、本当のところは人の健康など願っていない企業と言えるでしょう。

しかし、今回の新制度は、「これまでトクホなどに限られてきた機能性の表示では大企業しか利益を甘受できないので、中小企業にも使える緩い新制度を作りたい」という規制緩和が目的なだけに、消費者団体や日弁連などは懸念を表明しています。

確かに、そもそも栄養素は食品から摂取するべきであり、安易にサプリメントや健康食品に頼る風潮には問題があります。そこに警鐘を鳴らすには、アメリカと同じような発想で、機能性の表示ができる代わりに「この食品は、安全性に関して国の審査を経ていません」とパッケージに表示することを義務づけるなどの対策もありえるのかもしれません。リスクゼロはあり得ないことを消費者も認識したうえでサプリメントを利用すべきでしょう。

ちなみに、この手の表示でサプリメントが売れなくなるかといえばそんなことはなく、アメリカはサプリメント大国です。それは、自由診療が基本で医療保険も高額なため、医療が受けられない人が多いことを反映しているとも言われています。

今回、日本がサプリメントの規制緩和へ動く背景にも、医療費負担の増加と健康保険制度が破綻しつつあることがあるように思います。医療に頼らず、手近な健康食品で健康になってもらおうという政策の転換です。

その発想自体は悪いことではないですが、「余分な栄養素を摂る」ことばかりではなく、動物性食品など「不健康になる食品を避ける」ことにも国は熱心になってほしいものだと思います。

消費者庁:
食品の新たな機能性表示制度に関する検討会

【資料3】食品の新たな機能性表示制度における機能性の表示の在り方について(対応方針(案))より:
食品の新たな機能性表示制度に関する検討会 資料 ヒト試験

食品の新たな機能性表示制度に関する検討会 資料 ヒト試験

食品の新たな機能性表示制度に関する検討会 資料 ヒト試験

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