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農薬の販売前に求められる動物実験について~シンポジウム報告2つ

農薬の動物実験に関連するシンポジウムに2つ連続で参加しました。

農薬は、近年、アメリカ・欧州等で動物実験の要件が緩和されつつありますが、ブラジルでもイヌの長期試験が削除されることになると国際団体が報じています。

では、日本では現状どれほど動物実験がされているのでしょうか? 日本における農薬の販売前の登録に際して求められる動物実験について概略をまとめたページを作成しましたので、こちらもご参照ください。非常に多くの動物が犠牲になっていることがわかります。

以下、イベント参加報告です。

食品安全委員会 国際専門家招へいプログラム
「農薬の急性参照用量(ARfD)の設定に関する国際シンポジウム 」

10月7日、食品安全委員会主催のシンポジウムが開催されました。海外から講師を呼ぶ内容だったので、これは動物実験の代替・削減についても話が出るのではないか?と思い、参加してきました。

内容としては、昨年6月から食品安全委員会の農薬のリスク評価(食品健康影響評価)において、急性参照用量(ARfD:Acute Reference Dose)の設定が行われることになったことを受けて、その技術的な問題に関する議論を行うものでした。

ARfDとは、ヒトの24時間、またはそれより短期間の経口摂取で健康に悪影響を及ぼさないと推定される摂取量のことです。食品安全委員会では、農薬の登録申請に伴って提出されるデータを基に、これまでは一日摂取許容量(ADI;生涯にわたり毎日摂取し続けても影響が出ないと考えられる一日あたりの量)を検討していましたが、現在はARfDも検討されています。

演者の話は、基本的にARfDの求め方等についてのものでしたが、動物実験の代替・削減に関係するところでは以下のような話がありました。

・ドイツBfR農薬安全部長 Dr. Roland Soleckiの話
EUでイヌの長期試験が要件から外れたことに触れていました。ARfD設定に関するOECDガイダンスの策定の経緯についても説明がありましたが、「政治的圧力」によりプラスアルファの試験をしないことになったという説明がありました。(圧力の内容には触れていなかったと思いますが、通訳が若干途切れがちだったので、全てが通訳されていたかどうかはわかりません。)

・前アメリカEPA上席科学アドバイザーDr. Vicki Dellarcoの話
スライドの一番最後に21世紀のパラダイムに関するものがありました(下図)。「人が監視の対象であり、動物実験より良い方法へ移行する取組みとして、OECDのAOPについて紹介したい」と説明がありました。「コンピューターの支援によって理解は進んでいる、重要なのは毒性学が進歩したということだ」とも言っていましたが、「すぐに起こるものではなく、ゆっくりだが起こっているものであり、今から準備をしておく必要がある。反応関係の理解がもっと必要だ」とのことでした。

arfdsymposium-21thcentury

平成27年度食品健康影響評価技術研究成果発表会
〜化学物質の肝毒性の評価のあり方について考える〜

もう一つも食品安全委員会の主催によるものです。食品健康影響評価において、肝臓の「絶対・相対肝臓重量の増加」を直ちに悪影響とする現在の判断を科学的見地から見直したいということが背景にあり、悪影響と肝肥大作用を区別するための評価の基盤をつくりたいという主旨でした。

肝肥大は、農薬の毒性試験で最も多く観察される所見だそうですが、生体の適応的な反応と考えられるようになってきているようです。肥大しても、多くは可逆的であり(つまり元に戻る)、害をなすものというより一時的な反応と思われているということになると思います。一方で肝がんとの関連も指摘されているそうですが…

in vitro試験の開発につながる話題ではないか?と感じたので聞いてきたのですが、あくまでin vivoとin vitro・in sillicoと両方で進むのだと思います。これまでなされてきた動物実験のデータから統計的検討が行われていたのは興味深かったですが、あくまで動物が根拠で進んでいることを感じました。

農薬や一般化学物質は、医薬品と違って最終的にヒトで試す段階がないので、どうしても動物のみで話が進んでしまうのだと思いますが、動物実験代替・削減の流れに日本も貢献してほしいと思います。

発表演題

  • 核内受容体作用と酵素誘導解析を基盤とした、化学物質による肝肥大の毒性学的評価に関する研究(静岡県立大学 吉成浩一) 
  • 化学物質により誘発される肝肥大の毒性学的評価手法の確立と今後の問題点(国立医薬品食品衛生研究所 梅村隆志)
  • 肝マクロファージの機能特性に基づいた肝毒性の新規評価手法の構築と緻密化(大阪府立大学 山手丈至)

▼資料には何やら可愛いネズミの絵が
h27肝毒性資料

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