新・動物の解放
動物の権利(アニマルライツ)運動を勢いづけ、活動に理論を与える端緒ともなった歴史的著作のひとつ、ピーター・シンガーの『動物の解放』。昨年12月に、日本語版が戻ってきました。
これまで改訂版を含め2回、日本で翻訳が出版されていますが、3度目の翻訳は2023年に刊行された最新改訂版の翻訳です。1975年の初版発行から、現在既に半世紀が経ち、動物たちをめぐる状況は、大きく変わったこともあれば、変わらないこともあります。
そうした現状を反映させた最新版は、序論を『サピエンス全史』のユヴァル・ノア・ハラリが書き、動物を搾取し利用し続ける人類の病について、改めて考えさせる内容になっています。
今回はアニマルライツ翻訳家の井上太一さんが翻訳されており、シンガーの思想を現代のアニマルライツの立場から、どう批判的に読むかについても巻末に解説があります。
この本は、社会運動の対象を動物にまで拡張させ、歴史を変えたとも言える意味で必読書ですが、ビーガニズムを主流とする現代の活動理論には合わないところもあります。
しかし、動物の置かれた苦境について知り、動物の地位をどう捉えなおし、自分たちの生活を変えるのか、示唆を与える1冊であることは間違いないでしょう。
活動のなかの人も、そうでない人も、ぜひ手にとって読んでみてください。人生を変える一冊となるはずです。
目次
序論 ユヴァル・ノア・ハラリ
二〇二三年版緒言
第一章 全ての動物は平等である
あるいは、人間の平等を基礎づける倫理原則が平等な配慮を動物たちにも広げるべきだと求める理由
第二章 研究のための道具
違う、これは人命を救うこととは何の関係もない
第三章 工場式畜産に抗して
あるいは、あなたの晩餐が動物だった時に起きたこと
第四章 種差別なき生活
気候変動と闘い、健康な生活を楽しみながら
第五章 人の支配
種差別小史
第六章 今日の種差別
動物解放への反論と、その克服による前進
謝辞
レシピ集
訳者解題
原注
索引