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文部科学省が令和6年度の動物実験基本指針等の遵守状況に関する調査結果を公表

文部科学省が令和6年度の「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」等の遵守状況に関する調査結果を公表しました。

これは、毎年、文科省の所管する施設を対象に行っているもので、動物実験を実施している⼤学等の数は前年の387機関から383機関に減りました

10年前は426機関ありましたので、着実に減っています。

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文部科学省が毎年公表している動物実験の実施等に関するアンケートの最新版が公表されました。文部科学省の動物実験基本指針の対象となっている大学等の研究機関に聞いているもので、回答しているのは、ほとんどが大学です。(その他は、大学共同利用機関法人[…]

ただし、内容はほぼ無意味

ただ、この調査自体は、動物実験等を実施している当の機関が回答を書くアンケート調査であり、
 適切な審査を⾏っていますか➡「はい」が100%
 科学的観点及び動物の愛護の 観点から動物実験等を適切に実施していますか➡「はい」が100%
 情報を適切な⽅法により公表していますか➡
「公表している」が100%
という、ほぼやる意味のないアンケート調査です。誰かが適切かどうかを審査しているわけでも何でもありません。自己申告なので、当然、どこの機関も「はい」と答えます。各機関の動物実験委員会の審査能力は、実際のところ力量に差があると思われますが、承認のハンコを押してさえいれば、適切にやっていると自称できるのです。
情報の公開も、実際に使った動物数をきちんと報告していると感じることはあまりなく、1日当たり飼育数や、ある日時点での飼育数など、実際の使用数を隠蔽するような数字が公開されていることが多いですが、自分たちはそれが適切だと思っているのでしょう。
自己点検も、ネガティブな事象について公表していることはまれで、起きた問題などは書かず、すべて適正だとするような、形式的で意味のないものが公開されているのが普通です。

改善措置を行った機関が49機関

不思議なのですが、「動物実験計画の実施の結果について報告を受け、必要に応じ適正な動物実験等の実施のための改善措置を⾏っていますか」という質問に対し、報告は全機関が行ったと答えていますが、改善措置をとったのは49機関ありました。
改善が必要だったのに、適切な審査や実験が行われたとは、これいかに? 
不思議な判断がされていますが、このことからも、回答がいい加減であることが伺い知れます。
ちなみに、この改善措置ですが、令和2年までは全施設が実施していると回答しているのですが、なぜか令和3年度から、改善措置を行ったのは72機関と数がガクンと減りました。つまり、この年から、実際に改善措置を行った機関の数がカウントされるようになったということでしょう。
令和5年度は49機関、令和4年度は74機関、令和3年度は72機関が改善措置をとりました。

外部検証を受けた数も、ご都合主義

動物実験を実施している機関のうち、245 機関(64.0%)で外部検証の受検実績があったとも書かれていますが、これもおかしな話です。ずっと前に一度受けたことがある機関もカウントされていることは明らかです。

例えば、日本実験動物学会が実施する「動物実験に関する外部検証事業」では、検証結果の有効期限を明確に定めていないものの、「5~7年を想定しています」としています。 同学会のサイトを見ると、7年前である2017年以降に受検した機関の数(下記表参照)は199しかありません。つまり、およそ50の機関は、単に昔受検しただけで、更新はしていません

一度受けただけのものを現時点の実績に含めるのは、いかがなものでしょうか。 第一種動物取扱業であれば登録の更新は5年ごとで、ほかの業種は少なくとも5年に1回は立入検査を受けています。なぜ実験施設や畜産施設は動物福祉の観点の立ち入りを受けないのか、甚だ疑問です。

受検機関数
202338
202236
202136
202017
201921
201824
201727
199

参考

歴代の文科省アンケート調査結果は下記のページに掲載されています。

畜産動物、実験動物も守れる法律にしよう - 公正な動物愛護法改正を求めます
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