OIEコードに関する公開質問状(2015年)

OIE(世界動物保健機関/国際獣疫事務局)は日本国政府も加盟する国際組織ですが、現在、畜種ごとに動物福祉に関するコードを順次定めていっています。「アニマルウェルフェアと肉用鶏生産方式」「アニマルウェルフェアと肉用牛生産システム」に加え、2015年5月には「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」のOIEコードが採択されました。

このことを受け、7月21日付けで、NPO法人アニマルライツセンターヘルプアニマルズと連名で、公開質問状を農林水産省へ送付しました。質問の内容は以下の通りです。


追記:
2015年8月13日、回答がありました。こちらをご覧ください。

2016年6月~9月に指針の改訂版の公表がありました。私たちが指摘した点との比較を下記に掲載しました。


2015年7月21日

OIEコードに関する公開質問状

【質問1】
ブロイラーの暗期の設定について。

OIEコード「アニマルウェルフェアと肉用鶏生産方式」には、
『各24時間の間に、当該肉用鶏の休息を可能にする適切な継続した暗期が設けられるものとする。』と記載されています。
また、日本の「アニマルウェルフェアの考え方に対応したブロイラーの飼養管理指針」には、
『一定時間の暗期を設けることは、突然の停電時のパニックの防止に有益であるとともに、飼料効率や育成率の改善にも効果があることが知られている。』と記載されており、暗期の設定がアニマルウェルフェアだけでなく、生産性の向上にも有効だということが示されています。
しかしながら、2014年度国産畜産物安心確保等支援事業における「飼養実態アンケート調査報告書」によると、ブロイラー農家の68.1%が、暗期の設定をしていないことが分かっています。
ブロイラーの暗期の設定を普及させるために、国としてどういった取り組みをしているか、ご回答下さい。

【質問2】
肉用牛の去勢について。

OIEコード「アニマルウェルフェアと肉用牛生産システム 」には
『生産者は、とりわけ高齢動物における肉用牛の去勢を目的とする無痛法又は麻酔薬の使用の有無及び妥当性に関し、獣医師の指導を求めるものとする。 』と記載されております。
いっぽう、日本の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した肉用牛の飼養管理指針」には、去勢時の麻酔や獣医師の指導についての記述はありません。
しかしながら、肉用牛に麻酔なしでの去勢も行われていることを私たちは把握しています。
高齢牛に対して、OIEコードにあるような配慮がされるよう、国としてどのような取り組みが行われるか、ご回答ください。

【質問3】
肉用牛の除角について。

OIEコード「アニマルウェルフェアと肉用牛生産システム 」には
『除角(摘芽を含む)
牛は、実用的な場合には、角の発育が依然角芽の段階にある間に又はこの月齢を超えて得られた最初の取り扱いの機会に、除角されるものとする。これは、角の発育が依然角芽の段階にある場合には、当該手法による組織の損傷が少なく、角と当該動物の頭蓋骨が付着していないからである。』と記載されています。
また日本の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した肉用牛の飼養管理指針」には
『実施に際しては、角根部を触ると角がわかるようになる時期以降に、また、除角によるストレスが少ないと言われている焼きごてでの実施が可能な生後2ヶ月以内に実施することが推奨される。また、子牛市場からの導入後に除角を行う場合は、可能な限り苦痛を生じさせない方法により行うこととする。』と記載されています。
このように若齢での除角が推奨されているにもかかわらず、2014年度国産畜産物安心確保等支援事業における飼養実態アンケート調査報告書によると、除角する農家の85.2%が3ケ月齢以上で除角していることが分かります。
子牛市場への導入前のもっと早い段階での除角を普及させるために、国としてどのような取り組みが行われるか、ご回答ください。

【質問4】
肉用牛の除角について。

OIEコード「アニマルウェルフェアと肉用牛生産システム 」には、
『生産者は、角の発育がさらに進行した場合には、とりわけ高齢動物における肉用牛の除角を目的とする無痛法又は麻酔薬の使用の有無及び妥当性に関し、獣医師の指導を求めるものとする。』と記載されています。
いっぽう、日本の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した肉用牛の飼養管理指針」には、除角時の麻酔や獣医師の指導についての記述はありません。
しかしながら、2014年度国産畜産物安心確保等支援事業における飼養実態アンケート調査報告書によると、除角する農家の79.4%で麻酔を使用していないことがわかっています。
高齢牛に対して、OIEコードにあるような配慮がされるよう、国としてどのような取り組みが行われるか、ご回答ください。

【質問5】
乳用牛の繋ぎ飼育について。

OIEコード「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム 」には
『家畜管理飼養者は、牛が繋がれている場合には、ウェルフェア上の問題のリスクが高まることを認識しておくものとする』と記載されています。
日本における搾乳牛の多くが「繋ぎ飼い」であることから(2014年度国産畜産物安心確保等支援事業における飼養実態アンケート調査報告書によると、搾乳牛の主な飼育方法は「つなぎ飼い」が72.9%)、上記のOIEコードのような記述を、日本の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した乳用牛の飼養管理指針」に追加することは可能かどうか、ご回答下さい。

【質問6】
乳牛の除角について。

OIEコード「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」には
『麻酔及び無痛法の使用は、摘芽を実施する場合には、強く推奨されており、除角する場合には、常に使用されるものとする。』と記載されています。
いっぽう、日本の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した肉用牛の飼養管理指針」には、摘芽・除角時の麻酔及び無痛法の使用についての記述はありません。
しかしながら、2014年度国産畜産物安心確保等支援事業における飼養実態アンケート調査報告書では、乳用牛の除角をする農家の45.3%が3ヶ月齢以上で除角しており、そのうち85.1%で麻酔が使用されていないことが分かっています。
乳用牛の摘芽・除角時の麻酔及び無痛法の使用を普及させるために、国としてどのような取り組みが行われるか、ご回答ください。

以上。


参考:

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