PEACE活動報告ブログ

STAP研究への疑問1・マウスの逆流性食道炎モデル

2014年6月10日にアップした記事です。その後、判明したことがあり、こちらに追記をしています。


ネイチャーのSTAP細胞論文に関して、小保方さんも撤回の意向を示し、さらにSTAP細胞の存在自体を否定する科学的な分析についても立て続けに報道が続いているところですが、マウスの利用時の不適切さについても幾つか疑問がでてきましたので、きょうは第一弾で、論文(Article)の最後のほうに出てくるマウスの逆流性食道炎モデルについて、理研に質問していることの補足を投稿します。

 
●苦痛度がCはおかしい! きちんとした審査を経たのだろうか?

論文でも今後の課題的に触れられている通り、小保方さんが昨年11月に提出したSTAP細胞の実験計画書では、マウスの逆流性食道炎モデルについて以下のように書かれています。

(外科的処置)
麻酔下で開腹し、幽門近傍の十二指腸にネラトンカテーテルを被覆逢着する。術後は麻酔から覚醒させ、後述絶食を経て2日後に組織採取するまで飼育を続ける。
マウスは72時間以上の絶食が可能であることが明らかになっている。
術後は12時間ごとに観察を行い、体温低下が見られる個体に対してはホットパッドで保温処置をとるなどのケアを行う。著しい体温低下や人の指による触刺激に対する反応の低下がみられた場合には速やかに安楽死措置を執り、サンプリングを行う。年間20匹程度の実験を予定している。

(環境ストレス)
前述十二指腸への術後、48時間程度の絶食を行う。〔摂水制限をしない〕
人道的エンドポイントおよび年間使用予定数は外科的処置の項目に記載した。

先日の実験動物学会では、海外では「苦痛のカテゴリー」の利用は古くなってきていて既に次の段階に行っているようなお話もお聞きしましたが、現在日本では動物実験計画書の事前審査で「苦痛のカテゴリー」を用いた評価が使われています。AからEの5段階ですが、脊椎動物の利用の場合はBから始まり、Eが最も耐え難い苦痛となっています。

STAP論文に出てくる逆流性食道炎の実験は、24時間以上の絶食だけでもカテゴリーDなので、確実にDのはずなのですが、理研CDBではCのまま承認されています。

ちなみに、この計画書は承認欄の部分が白地となっているので、正確には承認されているのかどうかが不明なのですが、未承認段階の計画書は開示されないはずなので、承認されたものとして受けとめて話を進めます。(なぜ白紙なのかも含め、事実関係は理研に確認中です。)

実は、2日間の絶食を含めばDであることは、理研CDBの動物実験委員会の委員をされている方にも直接尋ねましたが、間違いありませんでした。また「自分のところへ来たものは、ちゃんと審査している」というお話でした。もちろん小保方さんの計画書を審査したかどうかについては発言できない立場であろうと思いますので、一般論をお聞きしただけですが、承認欄が白く消されていると思われることと考えあわせ、小保方さんの計画書は秘密裏に受理されており、それを理研が隠しているという疑いもあるというのが今のところの正直な印象です。

さらに言ってしまえば、この計画書は去年12月から開始の計画書ですが、現・山梨大学の若山教授が理研にいたころ出した最初の計画書では苦痛度はDとされているのです。

小保方さんが責任者になったら、急にCになるというのは、どういうことなのでしょうか? 本人の意識の低さも感じますが、委員会の審査が急に甘くなるのも変です。笹井副センター長の秘密主義の問題も報道されているところですし、計画書の審査が本当に行われたのか、ますます疑問に感じます。

 
●絶水は?

さらにこのモデルでは、もし摂水制限を伴っていれば、半日以上でDは確実とのことで、もっと厳しければEの可能性もあるでしょう。

水については、「摂水制限をしない」と計画書には書かれていますが、このモデル自体、水を摂らせてしまうと胃から逆流してしまうため、もともと摂水制限を伴うモデルなのだそうです。マウスは吐かない動物ですので、それだけで異常事態で苦しそうに思ってしまいますが、実際には誤嚥による死亡事故を避けるために絶水させていた疑いがあります。

また、このモデルで水を与える場合は、胃が上を向くように体を固定する、もしくは水を含んだゼリー状のものを口からチューブで胃まで経口投与するなどの対策がとられるそうなのですが、そういったことについて計画書では言及がありませんでした。

ここまで手のかかるモデルなのに、それをあっさり「摂水制限をしない」と書いてあることも疑問です。

絶水をしたのか、しなかったのか、理研に確認をしたいと考えています。

 
●モデル自体が不適切

さらに疑問なのは、論文では、十二指腸を狭めるだけではなく胃の切除を行った記載があることです。これは計画書には書かれていません。

また、論文では解析までの時間は24時間から48時間となっていますので、計画の48時間経過以前に死亡したか、具合がわるくなって殺処分した個体がいたのかもしれません。

というのも、このモデルのマウスでの死亡率は高く、以下の科研費の報告書では、小保方さんの実験方法と同じネラトンカテーテルを十二指腸の外側に巻きつけるモデルで、1週間後の生存率が2~3割程度と書かれています。この報告書では「手術操作を伴う食道炎モデルは脆弱なマウスには不向きであると判断した。次に、手術操作を必要としない食餌モデルを検討する予定である。」とまで書かれています。

そもそもこのモデルは、ラットで行われることが多く、小保方さんが参考にしたと計画書に書いている慈恵大の論文もラットです。2日間に短くしたのは、マウスの場合の問題がわかっていたためかもしれませんが、上記の報告書では7日間で食道粘膜に異常が認められないともありますので、マウスで行った場合の実験の妥当性について真剣に審査されたのか、疑問に思います。

※追記:開示された計画書の苦痛度については修正されているという理研の言い分について証拠を見せるよう求めましたが、「情報公開請求するように」というのが理研の回答でした。その後の情報開示請求で、逆流性食道炎実験についても、実験計画書の修正の指摘を受けていたことがわかりました。衝撃の指摘の内容はこちら。ラットではないかと指摘されていたのに、マウスで行われいたことがわかりました。

 
●捏造が生む命の犠牲について

STAP論文でこのような実験が行われているのは、「生体内でも酸による初期化が起きているのではないか」という疑問を今後の課題としているためですが、STAP自体が科学の通念を塗り替えるようなものであり、存在の有無自体に議論が起きることは当然想定されたと思うので、この論文の時点でこのような課題設定をすること自体が飛躍しすぎではないかと感じました。

そこへきてさらに、STAPの存在自体が否定される状態ですから、本人がわかっていてこのような次の段階の実験に進んでいたのか、事実関係が明らかになることを願っています。STAPは捏造疑惑としても歴史に残る規模ですが、動物の無駄な犠牲という意味でも、とても大きな事件です。

といっても、もしかしたら全ての実験が行われていなかったという可能性すらあるのかもしれませんが、本人は相当数の実験をこなしたと言っており、命の犠牲がどこまであったのか、事実を明らかにしてほしいと心から願っています。

 
●逆流性食道炎モデルの今後

逆流性食道炎の体験談を読むととてもくるしそうですが、現在、「タバコ病」と言われる慢性閉塞性肺疾患(COPD)との関係が示唆されているのだそうで、今後この疾病の研究において、逆流性食道炎モデルの利用が増える可能性があるそうです。

しかし、今回このように無理矢理つくったモデルに意味があるのか非常に疑問を感じました。こういった外科処置を伴う苦痛度の高いモデルは利用を止めるべきではないでしょうか。中止・代替を求めていきたいと考えています。

このエントリーをはてなブックマークに追加