<EU動向>政策的に進められる動物実験の代替と削減      

EUでの動物実験の代替や削減について、最近の動向を幾つかお知らせします。

■ REACH:化学物質登録に際し、代替試験法の検討についての記載が必要に

REACHはEUの化学物質規制の名称で、「REACH規則」によって詳細が定められており、その実務行っているのが欧州化学物質庁(ECHA)になります。

昨年(2015年)9月11日の欧州オンブズマンの決定により、REACHにおける化学物質ごとの登録の際、脊椎動物を用いる新たな試験の実施が提案される場合には、まず代替試験法を検討するよう、欧州化学物質庁は注意喚起しています。このたび、それに加え、登録関係書類の作成にあたって、動物実験代替試験法を検討したことを記載して提出をしなければならないことになりました。

この6月21日からREACH-ITと呼ばれるITツールの新バージョンの運用が開始されており、それに伴う変更です。この記載については、欧州化学物質庁による技術完全性チェックの対象にもなります。

■ REACH規則の附属書を改正:皮膚感作性等の動物実験の代替法が採用

欧州化学物質庁は、皮膚腐食性・刺激性や、眼に対する重篤な損傷性・眼刺激性、急性毒性、皮膚感作性(アレルギー)の評価について、これまでの動物実験に代わり、in vitro試験法(培養細胞試験など、動物を用いない試験法)を通常の要件として定めると公表しました。

欧州委員会はすでにこれらの新規試験法について、REACH規則 附属書VII及びVIIIを修正する2016年5月31日付け委員会規則(EU) 2016/863を公布しています。

これに基づき、皮膚刺激性・眼刺激性については既に6月20日から実施されており、皮膚感作性については秋になる見込みです。

皮膚感作性(アレルギー)試験については、ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(HSI)の下記の記事もご参照ください。感作性試験は動物実験代替の大きな関所となっていたので、画期的な決定です。

また、欧州委員会のジョイントリサーチセンター(JRC)は、皮膚感作性の予測評価のために現在行われている動物実験であるLLNA(マウス局所リンパ節試験)の結果にばらつきがあることについて、動物を用いないアプローチによって解析した結果を公表しています。

■ 2017年の見直し期限へ向け、サル類の動物実験の必要性について再諮問

欧州委員会SCHEER(保健衛生、環境及び新興リスクに関する科学委員会)は、ヒト以外の霊長類を用いる医学生物学研究の必要性に関する改訂意見を提示するよう欧州委員会から諮問を受けました。

2010年の実験動物保護指令改正によって、EUでは既にヒト以外の霊長類の実験利用は原則禁止となっており、許可を受けることができる例外として認められた実験のみが行われている状況ですが、それらの実験についても2017年11月10日までに指令条文を見直し、必要に応じて改正を提案するよう第58条に定められています。

医学生物学研究におけるヒト以外の霊長類の使用継続については、2002年に科学運営委員会(SSC)が報告書を出し、2007年に欧州議会宣言が続き、さらに2009年にSCHEERの意見書の中でも採用されていますが、このたび諮問がなされたのは、この2009年の意見についての改訂であり、指令第58条に定められた見直しを検討するためのものです。

SCHEERは、現在認められている安全性試験や医学研究目的の霊長類の利用が他の方法に置き替えられるかどうかや、どのようなタイムテーブルでなくしていくことができるか等について、2016年12月末までに意見をとりまとめることになります。

EUの統計では、ヒト以外の霊長類の利用は2008年の約1万匹から2011年の約6000匹へ減少しているとのことですが、まだかなり利用されている状況であり、この検討結果がどうなるかは注目されるところです。

■ EURL ECVAMが魚類慢性毒性試験を回避するための科学的な選択肢について公表

EURL ECVAM(欧州動物実験代替法評価センター)が、魚類慢性毒性試験を回避するための科学的な選択肢に関する報告書を公表しました。現在、魚類の慢性毒性試験は、急性試験の結果によって、もしくは暴露期間が長い場合などに実施されていますが、それをミジンコを用いた試験や、先に得られているデータから予測することによって回避することが推奨されています。

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