第34回中央環境審議会動物愛護部会傍聴

昨日、環境省で開かれた第34回中央環境審議会動物愛護部会を傍聴してきました。政省令改正のための検討も、あっという間に前半戦が終わり、いよいよ来週から1回目のパブリックコメントが始まるとのことです。

昨日の議題は、下記についてでした。各議題に関連した地方自治体へのアンケート結果が「参考資料1」として添付されており、パブリックコメントを書くにあたり、参考になるのではないかと感じました。

  • 虐待のおそれのある場合及び引取りを拒否できる場合について
  • その他改正法に係る基準等の案について
  • 特定動物の許可基準について

■ 虐待のおそれのある場合について

動物愛護法第25条には、いわゆる劣悪多頭飼育者に対して自治体が勧告・命令を出すことができる規定がありますが、周辺の生活環境を損なっていることでしかそれができず、動物たちが悲惨な状況に置かれていること自体を根拠に勧告・命令することはできないというおかしな条文になっていました。

今回の改正によってそれが改められ、不適正な多頭飼育によって虐待のおそれが生じている場合についても命令もしくは勧告が出せることとなりましたが、その「虐待を受けるおそれがある事態」とは具体的に何を指すか?は、環境省令で定めるものとされました。

昨日、最初の議題にあがったのは、この部分の検討です。案として出てきたのは以下のとおりでした。(委員の意見などによって、パブコメまでにまだ変わる可能性があります)

①鳴き声がやまない、異常な鳴き声が続くなどの状態が継続し、不適正な飼養状況が想定される事態
②悪臭が継続する又はねずみ、はえ、その他の衛生動物が大量発生するなど、不適正な飼養環境が想定される事態
③給餌・給水が一定頻度で行われておらず、栄養不良等の個体が見られる事態
④爪が異常に伸びている、体表が著しく汚染されているなど適正な飼養が行われている状態が長期間続いている個体が見られる事態
⑤繁殖制限措置が講じられず、かつ、譲渡等の飼養頭数の削減努力が行われないまま、繁殖により飼養頭数が増加している事態

上記の事態が把握され、飼養者が担当職員による改善指導に従わない、あるいは担当職員による現状確認等の状況把握を拒否する等により、当該事態の改善が望めない場合。

パブリックコメントでは、この内容で問題がないか、これだけで十分なのか、皆で考えて意見を送る必要があります。

ちなみに、排泄物の堆積した施設や愛護動物の死体が放置された施設で飼育することは、今回の改正で明確に「虐待」と定められ、罰金の対象となりました。自ら飼育する動物が、病気になったり負傷したりした場合に適切な保護を行わないことも同様に虐待とされています。

■ 引取りを拒否できる場合について

これはかなり話題になりましたが、いわゆる犬猫の引取りの拒否についてです。

法律で定められた場合(販売業者からの引取り)のほかには、以下のような場合が案として挙げられていました。

①繰り返し引き取りを求められた場合
②子犬や子猫の引取りを求められた場合であって、繁殖制限措置を講じる旨の指導に応じない場合
③犬猫の高齢化・病気等の理由又は当該犬猫の飼養が困難であるとは認められない理由により引取りを求められた場合
 ※「飼養が困難であるとは認められない理由」としては、飼うことに飽きた、世話が面倒等の理由が想定される。
④引取りを求めるに当たって、あらかじめ新たな飼主を探す取組みをしてない場合
⑤その他法第7条第4項の規定の趣旨に照らして引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として都道府県等の条例、規則等に定める場合

上記場合であっても生活環境の保全上の支障を防止するため引取りが必要と判断される場合にあってはその限りではない。

最後の一文は、あくまで引取り義務を定めた第35条の目的は「生活環境の保全の支障の防止」であり、そのために必要と考えられるケースであれば、①~⑤の理由があっても行政は引取りができることを意味しています。引取りの拒否は、「できる」だけなので、本当はわざわざこのことは書かなくてもよいのですが、引取りの拒否を行わなかった場合に自治体が批判を受けるのではないかという懸念があって、念のため入れたとのことでした。

(個人的には、「生活環境の保全」だけではなく、引取りを拒否した場合にその犬猫がどのような運命をたどるのか、あくまで動物自身の福祉を考慮した判断も必要なのではないかと感じます)

■ その他改正法に係る基準等の案について

動物取扱業に関する基準などについて素案が示されました。犬猫等販売業の範囲は、残念ながら、やはり「犬又は猫の販売を業として行うこと」だけが対象とされています。これでは、法律に「犬猫等」と「等」が入ったことが全く生かされません。

犬と猫は確かに販売される数が違いますが、認知機能などの点からより高い福祉基準が求められる霊長類や、より飼育に関する情報に乏しく、配慮や技術を要するエキゾチックアニマルなどが常に無視されるのは、本当に疑問です。

犬猫等販売業者には法律で帳簿の義務付けがなされましたので、帳簿記載事項についても素案が示されましたが、犬猫以外の動物の販売業者に対しても同等レベルの内容の台帳記載を求める必要があります。

電子的方式の記録を可とすることについては、書き替えができるのではないか、書き替えの痕跡が残らないのではないかといった議論がありました。

販売時の情報提供項目については、現行の「生産地」の表現がいよいよ改められることになるようです。前回の動物愛護法改正に時の環境省の見解としては、「生産地とは繁殖業者を指す」とのことだったのですが、このことが守られてきた気配はなく、書き改めなければいけないのは当然だと思います。

当時、部会では繁殖業者の情報を提供するという話が決まっていたのに、ふたを開けたら「生産地」の表記になっていたので、本当に驚きました。明らかに業者へ抜け道を用意したと思われたので、環境省が開いた説明会でも、「繁殖業者の情報を提供するという話ではなかったのか。『生産地』の表記では地名でよいと解釈されるのではないか」と質問したのを覚えています。そのときの回答でも、「生産地とは繁殖業者のこと」とのことだったのですが、現状は今日に至るとおりです。

昨日の議論では、繁殖業者の「連絡先」に電話番号は含めないでほしいという要望が業界側から出ていました。また、「最低限、業の登録番号が必要かと考える」という環境省の見解に対しては、登録していないブリーダーから買っている場合があると業界側が反論していました。(登録していないのは、1年1腹未満のため。そういうケースは、正確な数字はわからないが、2~3%くらいか?とのこと)

また、動物愛護活動にも関係する第二種取扱業の範囲については、対象は「非営利で譲渡、保管、貸出し、訓練、展示を業として行う者」との案が示されました。飼養頭数の下限については、

大型動物 おおむね体長1m以上の動物と特定動物 ⇒合計3頭
中型動物 おおむね体長50cm~1mの動物(犬猫などはここ)⇒合計10頭
小型動物 それ以外(ウサギ、ハムスターなどはここ)⇒合計50頭

との案が示されたのですが、大きさで分けるのならウサギは猫と同じカテゴリになるはずで、またいくら齧歯類等が含まれるとはいえ、50頭は緩すぎるのではないかと思います。

第二種取扱業者の遵守基準についても案が示されたので、動物愛護に関係する人たちがもう少し関心を持ってベストのものを提案する必要があるのではないか、と感じました。

■ 特定動物の飼養保管基準について

先日、特定動物に関する作業部会も終わったとのことで、飼養保管基準の改正等についても案が示されました。八幡平クマ牧場の死亡事故、アミメニシキヘビの逸走・死亡事故、毒ヘビ類の無許可飼養、チンパンジー・パンくんの咬傷事故などの問題発生要因から対策案が示された形ですが、特定動物の流通や営業のための移動そのものをより制限するような、もっと根本的な対策が必要なのではないかと思います。

パンくんの事例では、許可飼育施設外に出す場合の届出が出されていなかったとのことですが、そもそもここが届出でしかないのも緩く、行政側に許可・不許可の権限が与えられていないのはおかしいのではないかとも思います。

チンパンジーではありませんが、業の登録を受けていない一個人が、許可を得ていない檻を利用して非営利の活動を行っている事例もあり、この部分は、何らかの改善を強く求めたいところです。

特定動物は「適切な飼養環境の確保が一般個人では困難な場合が多い」ので、飼養者に関する資格要件を定めることなどを長期的検討課題とすべきとの意見があったと資料に書かれており、この部分は今後へ向けて少し希望が持てました。

特定動物については、飼養又は保管が困難になった場合における措置についても素案が示されました。

長くなってしまいましたが、昨日検討された議題は以上です。ちなみに、政省令改正の検討スケジュールは以下のとおりとなっています。

※政省令改正の検討スケジュール
【平成 24 年】

10 月 動物愛護部会(第 32 回)
     ・ヒアリング (自治体・事業者・獣医師会等)

    動物愛護部会(第 33 回)
     ・特定動物リスト
     ・第二種動物取扱業について
     ・犬猫等販売業者について 等

11 月 動物愛護部会(第 34 回)
     ・特定動物許可基準
     ・対面説明・現物確認について
     ・虐待のおそれのある場合について
     ・引取りを拒否できる場合について 等

パブリックコメント(1 ヶ月)

12 月 動物愛護部会(第 35 回)
     ・パブリックコメントの結果について
     ・基本指針の改正方針について
     ・答申(第1次)

※12/23追記:大幅にスケジュールが変わりましたので、以下を訂正しました。新スケジュールはこちらをご覧ください。

【平成 25 年】

1月 動物愛護部会(第 36 回)
     ・基本指針について
     ・飼養施設基準について 等

2月 動物愛護部会(第 37 回)
     ・繁殖制限について
     ・その他の事項について 等

パブリックコメント(1 ヶ月)

3月 動物愛護部会(第 38 回)
     ・パブリックコメントの結果について
     ・答申(第2次)

<改正省令等②、基本指針公布>

9月(予定) 改正法及び各政省令等 施行

<改正政省令等公布①>

参考リンク:
動物愛護部会(第31回)議事要旨
https://www.env.go.jp/council/14animal/y140-31.html

(S.A.)

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