次々キリンを死なせてきた静岡市立日本平動物園が英断
現在の飼育舎でのキリンの飼育は止める
2022年10月にオスの「ダイヤ」が死亡してからキリンを飼育していなかった静岡市立日本平動物園ですが、今年12月5日、重大な発表をしました。現在のキリン舎でのキリンの飼育を中止するとのことです。
同園では、ダイヤの死後、園内でキリン飼育検討チームを発足し、今後のキリンの飼育について話し合っていたとのことです。3つの理由から決断をくだしたと公表がありました。
「【動物】キリンの飼育について」より
① 運動場の面積
キリンはよく歩く動物です。野生下でよく歩くキリンにとって、狭い運動場は運動不足やストレスの原因になります。当園では長年キリンを飼育してきましたが、今回の話し合いで「運動場の面積はもっと広くあるべきではないか」との意見が多く挙がりました。キリンを心身ともに 健康な状態で飼育するだけでなく、キリンの魅力を最大限引き出すためにも今よりも広い運動場が必要です 。
② 群れ飼育
野生では群れで生活するキリンにとって、1頭での飼育は大きなストレスがかかる可能性があります。そのため動物園でのキリンの飼育は群れで行うことが多いで すが、群れでの飼育は1頭当たりの運動場の利用面積を狭めることになります。そのため「広い運動場面積」と「群れ飼育」というのはキリンにとって絶対条件にも関わらず、現在の施設ではその両方をクリアするのは難しい状況にあります。
③ 必要な設備
キリンを飼育するには寒い時期に暖かい環境で飼育できる寝室や蹄のケアを行うトレーニングスペース、治療用のサブパドックなどが必要となります。当園でもパネルヒーターの設置や健康管理のためのトレーニングなどを行ってきましたが、それでもサブパドックやトレーニングスペースがない現在の施設では十分な健康管理が難しいとの結論に至りました。
3点とも動物の福祉を考えてのことですので、この決定をとてもうれしく思います。ただ、エリア改修の見通しが立てられた暁にはキリンの飼育を再検討する予定とも書かれているので、それはもう諦めてほしいと思いました。
そもそもキリンも、ゾウやイルカ、ホッキョクグマなどと同様に、優先的に飼育を止めていくべき種です。下記に海外の団体のレポートを紹介します。
また来園者からキリンが見たいという声があるとのことですが、もともと日本平動物園はキリンがいない期間があった印象ですし、連れてきては次々と短命で死なせています。
2014年にマサイキリンの「リン」が死んだ後、1年以上キリンは飼育されておらず、2015年12月にアメリカからオス・メス2頭輸入するも、オスは急死。生き残ったメスの「サクラ」のために、2016年にオスの「リオ」を連れてくるも、リオは2018年6月に死亡。今度は2018年12月にオスの「ダイヤ」を浜松市動物園から連れてきて、サクラが妊娠するも、2021年8月に難産の末、母子ともに死亡。サクラは7歳でした。そして2022年10月、ダイヤ死亡。享年5歳。
このように長く飼うことができない状態が続いていたのですから、今回の決定は当然のことのようにも思います。
現在のキリン舎は他の動物の福祉向上に役立てたいとのことで、狭いところから移れる動物がいることにも期待をしたいです。
「ダイヤ」死亡直後のキリン舎
ダイヤが死亡した2022年10月の翌月のキリン舎です。キリンがいないのでわかりづらいですが、細長い敷地を運動場にするタイプのキリン舎で、運動場のスペースはかなり狭いです。
「リン」死亡後のキリン舎
2015年10月は、前年にメスのマサイキリンの「リン」が死亡した後1年以上経つ時期でしたが、やはりキリンはいませんでした。この後、次々とキリンたちがここで死んでいくことになるとは……。
キリンも飼育を止めていくべき種 ボーンフリー財団の提言
ゾウやイルカ、ホッキョクグマなどが飼育に向かないと指摘されていることは比較的知られていると思いますが、海外の団体は、すでにキリンについても動物園での飼育を終わらせようと動き出しています。
飼育下で起きる様々な身体的な問題が大きいことが第一にはありますが、亜種間交雑が広範囲に広まっていて、もはや「種の保存」の大義名分が立たないことも背景にあります。この問題は、以前下記の記事にまとめまたことがあります。
去年、キリンが堀井動物園に搬入されてからちょうど1年が経ちました。もう亡くなっていますが。この死亡したキリンについて、血統登録はされていなかったことを先日確認しました。もちろん堀井動物園が繁殖に参加できるわけでもないでしょうし、日本[…]
2022年にボーンフリー財団は、レポート『閉じ込められた巨人: 動物園のキリンの窮状』を公表しており、このなかで動物園にキリンの飼育を段階的に廃止するよう呼びかけています。
キリンは世界で最も背の高い陸生哺乳類であり、魅力的で、よく知られ、多くの人に愛されている種ですが、動物園のキリンが経験している苦しみは、ほとんど認識されていません。
2020年現在、北米の103の動物園で少なくとも579頭のキリンが飼育されており、ヨーロッパの動物園では800頭以上、なかでもイギリスでは少なくとも150頭が飼育されています。北米の合計は、おそらくもっと多いでしょう。なぜなら、この数字には、サーカス、動物ショー、AZA(アメリカ動物園水族館協会)非認定の動物園などのUSDA(アメリカ農務省)認定施設で飼育されているキリンは含まれていないからです。
複雑な社会的関係を形成し自由に暮らすキリンとは異なり、動物園のキリンの多くは、そうした機会を奪われており、多くの場合、単独で、もしくは他のもう1頭だけと一緒に暮らしています。飼育されているキリンは、野生の平均的な行動域のごく一部(通常は 1% 未満)の広さの囲いの中に閉じ込められており、その囲いは殺風景で単純な環境になっていることが多すぎます。
跛行、身体的外傷、栄養疾患は、行動障害と並んで、飼育されているキリンによく起きる問題です。動物園のキリンの多くは短命です。 複雑で社会性があり、広範囲に行動し、草を食むこの動物は、動物園での生活には適しておらず、この種の全体的な保護における動物園の役割は依然として非常に疑問視されています。
『閉じ込められた巨人: 動物園のキリンの窮状』でボーンフリーは、動物園でのキリンの飼育がどのようなものかを探り、動物園にキリンの飼育を段階的に廃止するよう呼びかけ、動物園と一般の人々に、野生でのキリンの保護を支援するよう促しています。
ボーンフリー財団が市場調査会社に委託して実施した意識調査によると、イギリスの回答者の4 分の 3 が、ゾウ、ライオン、トラ、キリン、サイなどの大型動物の飼育を政府が段階的に廃止し始めることは、とても、またはそれなりに重要であると考えていた。https://t.co/xNyau8VGPT
— PEACE 命の搾取ではなく尊厳を (@animalsPEACEnet) February 28, 2023
去年、キリンが堀井動物園に搬入されてからちょうど1年が経ちました。もう亡くなっていますが。この死亡したキリンについて、血統登録はされていなかったことを先日確認しました。もちろん堀井動物園が繁殖に参加できるわけでもないでしょうし、日本[…]