本日、「令和6年度第2回国際獣疫事務局(WOAH)連絡協議会」が農林水産省で開催されたので、オンラインで傍聴しました。WOAH(World Organization for Animal Health)は、世界の動物衛生の向上を目的とする政府間機関で、以前はOIEと呼ばれていました。いわば、動物版WHO(世界保健機関)であり、世界動物保健機関と呼ぶべきものです。
WOAHは、動物衛生や人獣共通感染症、アニマルウェルフェア、畜産物の生産段階における安全確保に関する国際基準(WOAHコード)を作成しており、今日も、今年9月のWOAHコード委員会報告書で示された 陸生コード改正案等についての国内の有識者の意見交換ということで、開催されました。改正案に対する日本政府の意見や、WOAH側での修正の進捗等について報告があり、章ごとに意見交換をするという形で進みました。
動物の福祉に関しては、一番最後に「第7.1章 アニマルウェルフェアの勧告に関する序論」の改正が取り上げられました。今年9月に3次案が提示されており、2次案に対して日本政府が提出した意見が反映されていたかどうかなどが報告されました。
改正案には、アニマルウェルフェアを考える上で役立つ指標として、従来の「5つの自由」に加え、新たな概念である「5つの領域」を含む内容にすることが決まっています。
「5つの自由」が、動物にとって悪いことをしないという観点に立って作られているのに対し、より積極的に良い状態をつくる観点が必要ではないかということで出てきたのが「5つの領域」の考え方だと農水省も説明していましたが、本当のところを言えば、動物園や畜産業、動物実験の世界では動物を自由にすることはないため、「〇〇からの自由・解放(freedom)」というスローガンは受け入れがたいという背景があって、提唱され始めたものです。
「5つの領域」‘five domains’ とは
・ 栄養 ・ 環境 ・ 健康 ・ 行動 ・ 精神状態
これをWOAHのコードに含めることに対する日本政府のスタンスは、以下の通りだとか。気になったのは赤字にした部分です。
国がアニマルウェルフェアに取り組み始めたことは評価すべきことではありますが、「現場に過度な負担が生じないよう」とは、あまりにも意識が低くてクラクラします。
世界標準的なアニマルウェルフェアの最低ラインすら過度な負担になるのであれば、その事業者はもう畜産業等を営むべきではありませんが、日本では悪い事業者に退場させるという考え方はなく、すべての事業者に負担にならないよう基準を緩くしろと政府が考えているわけです。
最悪なことに、日本獣医師会の委員も、「現場に過度な負担が生じないよう」ということをぜひよろしくお願いいたしますとなどと意見していました。獣医師会も動物福祉に取り組む組織なのではないのですか。しかも、アニマルウェルフェアの国内規制については、現場の実態を把握していない、動物愛護を担う環境省や厚生労働省に主導させないように、農水省に取り組んでほしいなどと言っていました。
これも明らかに動物愛護法改正を睨んだ発言と感じましたが、さらに動物福祉の立場から動物愛護法の話題が出された際には、農水省まで「一足飛びに法律をつくってどうこうというよりは」などと言っていました。去年、WOAHに対応したアニマルウェルフェアの指針をつくったので、その普及からまずはやりたいのだそうです。
しかし、義務でもない、いつまでに遵守しなければいけないという期限もない、違反に対して指導する仕組みもない、そんな指針をどうやって普及するつもりなのでしょうか。どの業界も、事業者は法定事項だから守ろうとするんです。一切の法律を拒むのは、農水省が「国際的なアニマルウェルフェアの潮流には対応していかなければならない」と言っていることと、大きな矛盾があります。国際的な潮流は、畜産動物を保護する法律があることでは?
今ごろ科学的根拠を集めたいような話をしているのも、ガックリでした。もちろん予算をとってやるべきことですが、すでにある知見は無視するつもりなのでしょうか? 諸外国の規制やWOAHのコードも、多くの科学的知見に基づいて定められたものです。
私たちが動物愛護法改正で求めているのは、理念的なことや基本的なことばかりですが、農水省が現時点でこのように後ろ向きであることが明らかになり、非常にがっかりしました。世論を盛り上げていかなければなりませんので、農水省へ、動物愛護法に畜産動物の条項がないのはおかしい!とご意見をお送りください。私たちの署名へのご協力も、よろしくお願いいたします。
農林水産省 意見窓口
農林水産省では、国民の皆様から、食料、農林水産業、農山漁村に関する幅広いご意見、ご質問等をうけたまわっています。…
署名にご協力をお願いします