外来生物法の新しい規制などについてパブリックコメント、本日締切

ご報告が大変遅くなってしまいましたが、ミシシッピアカミミガメなどを想定して、新たな外来生物法の規制が検討されるかもしれない件について、その後、10月5日に環境省で野生動物小委員会が開かれ、あり方検討会の報告書よりは踏み込まれた形で答申案が出されました。

環境省は、数回検討するようなことを言っていたのですが、実際には、この日の1回のだけで検討は終わってしまいました。既に議事録も公開されています。

この日、答申案が了承されたと報道していた新聞社もありましたが、実際には、パブリックコメントを経て、もう一度野生動物小委員会が開かれ、そこで正式に了承となると環境省は言っていました。

大変遅くなってしまったのですが、そのパブリックコメントの期限が、本日になります。

10月5日時点で、環境省は、まだ法改正することに決まったとは言えないと言っていましたが、法改正を見据えての動きであることは認めていました。順調に行けば、次の通常国会で成立ということだと思います。

環境省に要望書を提出

PEACEでは、須磨海浜水族園のアカミミガメのことなどをきっかけに連携して動いていたNPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)と連名で、野生動物小委員会の開催に間に合うよう、要望書を提出しました。このときの要望の内容は以下のとおりです。

【環境省への要望事項】

  1. 「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(以下「外来生物法」とします)を改正し、アカミミガメの輸入・繁殖・販売を禁止すること。
    ただし、既に飼育しているアカミミガメに限り、飼育許可なしで飼育を継続できるようにすること。また、アカミミガメを飼いきれなくなった飼育者が新たな飼い主に譲ることについては禁止しないこと。
  2. 獣医師以外の者によるアカミミガメの捕獲、殺処分を即刻、廃止すること。

【要望事項1】の理由

現在野外に生息するアカミミガメは、いわゆる「ペット」として海外から輸入・販売された個体とその子孫です。大量に安く輸入できることから、これまで亀すくいやプレゼント企画などでも安易に扱われてきました。そもそも、飼育下では約40年生きることもあるほど寿命も長く、背甲長も20センチを超えるほど成長する動物の販売を国が許してきたことが問題です。結果、多くのアカミミガメが野外に遺棄されてきました。野外に多くのアカミミガメが生息する現状は、人間が引き起こしたものです。その責任は、輸入業者、販売業者、購入者だけではなく、輸入・販売等の規制を行ってこなかった国にもあります。

しかし、アカミミガメは既に大量に飼育されており(環境省は「推定で百十万世帯数で飼育」としている)、現行の外来生物法によって飼養、保管、運搬、輸入等が規制される特定外来生物に指定することは現実的ではありません。もし現行法の特定外来生物に指定されたなら、飼育しているアカミミガメを飼い続けるには、主務大臣の飼育許可が必要になるのです。環境省の飼育許可業務の量が膨大となるだけではなく、遺棄や殺処分を推進することになってしまいます。

環境省では、外来種被害予防三原則として、「入れない」「捨てない」「拡げない」を提唱していますが、最も重要なのは、これ以上増やさないことです。それには、輸入・流通を止めなければなりません。捕獲、殺処分を繰り返しても、後から後から輸入して、売買していては何の解決にもなりません。まず、環境省が行うべきは、法的にアカミミガメの輸入と販売を止めることです。

ただし、飼えなくなった人から新たな所有者への譲渡まで禁止することには反対します。アカミミガメの新たな飼い主探しの活動をする人、里親になる人もいます。輸入と販売が禁止されれば、新たにアカミミガメを飼育したい者は、飼えなくなった人から譲り受けようとするはずです。遺棄防止の観点からは、このルートが残されているほうが好ましいと考えます。

しかし、一部マニアには繁殖を行う者もいて、飼育者間での譲渡が許されている場合、繁殖した個体を無償譲渡する形で新たな飼育が広がる可能性があります。新たな飼育個体を増やさないという観点から、繁殖についても禁止する必要があります。

【要望事項2】の理由

アカミミガメの捕獲・殺処分は、特定外来生物に指定されていない現在でも、既に官民挙げて各地で実施されています。環境省は、動物愛護法および動物の殺処分方法に関する指針において、苦痛を与えない方法によるよう努めることを求めているにもかかわらず、OIE(国際獣疫事務局)の規約やアメリカ獣医師会の安楽死ガイドラインで不適切とされている冷凍殺(低体温殺※)が採用されている現状を追認してしまっています。(※液体窒素を使った急速冷凍と区別する意味で、通常の冷凍庫を用いる方法には低体温法(hypothermia)の語が専門的には用いられています)

環境省は「アカミミガメ防除の手引き」では「殺処理を行う場合、可能であれば獣医師等の専門技術者の助言や協力も得て、適切な方法を選択ます」「爬虫類や両生類に冷凍処理を用いることについては、国内外の研究者の間でも様々な意見があります」としながらも、「アカミミガメ防除マニュアル」では冷凍殺のみの一択。獣医師ではない行政官や一般市民が動物の殺処分を大量に行っている現状を追認してしまっています。

しかし、例えばOIEが公表している「皮、肉、その他の製品のための爬虫類の殺害」についての動物福祉規約は、爬虫類を気絶させたり殺す際に不適切で許容されない方法として、次のような方法を例示しています。

  • 冷凍または冷却
  • 失血
  • 加熱または沸騰
  • 窒息または溺死
  • 圧縮ガスまたは液体を使用した膨張
  • 生きたままの内蔵摘出または皮剥
  • 窒息ガスの吸入:二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)、または窒素(N2)
  • 神経筋遮断薬の使用
  • 頸椎脱臼

爬虫類のように、死亡の確認が困難とされる種では、確実とするために、通常、2つ以上の安楽死法を併用しますが、そういうことも推奨されていません。

アカミミガメをできる限り苦痛のない方法で殺処分する方法は、獣医師によれば「水生動物用麻酔薬MS-222;Tricaine methanesulfonateを体腔内に注射して全身麻酔後、頸動脈切断によって失血させる。その前段階で吸入麻酔をかけ、体腔内に注射する痛みを防ぐことが望ましい」とのこと。

大学の動物実験委員会でも、国際的には、冷凍殺のみという処置は認められません。日本では動物実験は機関の自主管理に委ねられているので、静岡大学のように冷凍殺も認める不適切な大学があるのが悩ましいですが、福井県立大学のように、アカミミガメの冷凍殺を伴う実験計画書を不可とし、致死処分を伴わない研究のみ承認した大学もあります。

パブリックコメント案について

パブリックコメントの意見募集対象になっている文書「外来生物法の施行状況等を踏まえた今後講ずべき必要な措置について(答申素案)」には、下記のような記述があります。上記の要望書には入れていなかった点についても、意見をくわえ、JAVAと共通の意見をPEACEでも提出しました。

本日、深夜0時までメールフォームで送信できますので、皆さまも是非ご意見をご提出ください。

新たな規制について

アカミミガメやアメリカザリガニのように、特定外来生物と同様に生態系等への被害が明らかになっているにも関わらず、大量に飼育されていること等から、現行法では、飼養等(飼養、栽培、保管又は運搬をいう。同法第1条。以下同じ。)の禁止の対象となる特定外来生物への指定が難しい種が存在するという課題がある。
○アカミミガメやアメリカザリガニのように、我が国の生態系等に大きな影響を及ぼしているにもかかわらず、飼養等を規制することによって、大量に遺棄される等の深刻な弊害が想定される侵略的外来種については、一律に飼養等や譲渡し等を規制するのではなく、輸入、放出並びに販売又は頒布を目的とした飼養等及び譲渡し等を主に規制する等の新たな規制の仕組みの構築や、各種対策を進める必要がある。

記載内容に賛成です。

外来生物法を改正し、アカミミガメの輸入・繁殖・販売の禁止を求めます。ただし、既に飼育している個体は飼育許可なしで飼育継続を可とし、飼いきれなくなった者からの譲渡については禁止しないことを求めます。(上記要望書の説明も参照のこと)

殺処分方法について

できる限り苦痛を与えない殺処分方法の採用や従事者の心理的負担軽減に配慮しつつ、効率的な防除に取り組んでいく必要がある。

「できる限り苦痛を与えない殺処分方法」の基準が曖昧です。「OIE(国際獣疫事務局)等の国際的動向に十分配慮する」と「殺処分は獣医師のみが行う」を書き加えるべきです。(上記要望書の説明も参照のこと)

捕獲・殺処分に対する考え方について

かわいそう」等の心情的側面から外来種の防除理解が得られない、あるいは外来種がの観点で捉えられるなど地域固有の生物多様性を保全また、人の生命・身体や農林水産業への被害を防止するために外来種対策が重要であることが十分に理解されていないことが課題となっている。
外来種問題については国民の理解が十分に進んでいない側面もあることから、地域固有の生態系の状況や生物多様性を保全する地域の計画等も踏まえ、生物多様性の意義やその保全の重要性、生物多様性等に悪影響を及ぼす要因の一つとしての外来種防除の必要性防除に伴う捕獲個体の殺処分についての考え方特定外来生物指定の趣旨、外来生物法の遵守について普及啓発を推進する必要がある。さらに、外来種対策について、最新の取組や知見の積極的な公開を行うとともに、定着した侵略的外来種の防除等の対策にかかるコストの大きさについてわかりやすく説明を行い、侵略的外来種の定着防止の重要性について理解を促進する必要がある。
外来生物法では、捕獲・殺処分、つまり駆除のことを「防除」と呼び、殺していることについてオブラートに包んだ表現を用います。そのこと自体、殺処分に対し忌避的な感情があり、事実を隠そうとする感情が作用していると考えられますが、一方で環境省は、かわいそう」という心情を持つ市民を否定的に捉えています。にもかかわらず、殺処分従事者に関しては心理的負担があることを認めており、軽減すべきだと言ってみたりもします。感情に関し、環境省は、二枚舌を用いているのです。

動物の殺処分に対して、「かわいそう」という反応を示すことは全うな感覚であり、否定すべきことではありません。「かわいそう」という感情を持つべきでないと言うのなら、殺処分従事者の持つ感情も無視してよいはずです。しかし環境省は、殺処分従事者の感情だけについて、配慮がいると書いています。

そもそも、外来生物を「被害を与えている」という加害者のような扱いをしていますが、元は人間が引き起こした問題であり、外来生物は悪者ではなく、むしろ人間のせいで殺処分される被害者です。

この説明が抜けていると、国民、特に子どもは誤解をし、「外来生物は殺したほうがよい悪者」という認識を持ってしまい、命の軽視にもつながりかねません。

外来種の問題においては、殺処分が行われているのが現状ではありますが、本来は殺処分はなくすべきものです。国は、輸入や販売禁止といった規制等の対策を講じ、外来種の問題を解決し、殺処分をなくすことを目指していると明記すべきです。

締切:2021年11月15日(月)

e-govのメール送信フォームは、11月16日0時0分に受付終了されます。

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